中絶で離婚した場合の慰謝料 | 相場と請求方法
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
中絶(人工妊娠中絶)は、女性の身体だけでなく心にも大きな負担をもたらします。中絶に至る経緯によっては、「夫にも責任があるのではないか」と感じる方もいるでしょう。実際に、中絶をきっかけに夫婦関係が悪化し、離婚を考えるケースもあります。
ただし、中絶したというだけで夫に慰謝料を請求できるわけではありません。慰謝料が認められるためには、夫に不法行為が認められる事情が必要です。
この記事では、中絶による離婚で慰謝料を請求できるケースや慰謝料の相場、請求方法などについてわかりやすく解説します。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います
離婚問題ご相談予約受付来所・オンライン法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
お電話でのご相談受付
0120-979-164
24時間予約受付・年中無休・通話無料
メールでのご相談受付
メール相談予約受付中絶による離婚で慰謝料請求できる?
中絶が原因で夫婦関係が悪化し、離婚に至ったとしても、それだけで慰謝料を請求できるわけではありません。中絶による精神的苦痛について慰謝料が発生するのは、相手の行為が不法行為に当たると認められたときです。
例えば、夫婦が合意のうえで性交渉を行い、話し合って中絶を選択したケースでは、双方に責任があると考えられるため、慰謝料請求は難しいでしょう。
一方で、夫による中絶の強要や、避妊していると嘘をつくといった不誠実な行為など、何らかの不法行為が認められる場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。
中絶による離婚で慰謝料請求できるケース
中絶による離婚で慰謝料が認められるかどうかは、中絶に至った経緯や夫の対応によって異なります。ここからは、中絶による離婚で慰謝料を請求できる具体的なケースを解説します。
- 同意せず性交渉をされた場合
- 夫に中絶を強要された場合
- 避妊していると嘘をつかれた場合
- 妊娠後の夫の対応が不誠実だった場合
同意せず性交渉をされた場合
夫が妻の同意を得ないまま行った性交渉によって妊娠し、その結果として中絶を選ばざるを得なくなった場合には、夫に対して慰謝料を請求できる可能性があります。夫婦であっても、相手の意思を無視して性交渉を行うことは、不法行為にあたる場合があるためです。
暴力や脅迫によって性交渉を強いた場合には、不同意性交等罪の成立が問題となることもあります。
このようなケースでは、望まない性交渉による精神的苦痛だけでなく、妊娠や中絶によって生じた身体的・精神的負担も考慮されるため、慰謝料が比較的高額になる傾向があります。
夫に中絶を強要された場合
出産を望んでいたにもかかわらず、夫から暴力や脅迫によって中絶を強いられた場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。例えば、「中絶しなければ暴力を振るう」「中絶しないなら離婚する」などと強く迫られたケースや、実際に暴力を受けたために中絶を選ばざるを得なかったケースです。
このような場合、夫による強要行為が不法行為と認められることがあります。
ただし、すべての説得や話し合いが不法行為となるわけではなく、慰謝料請求の可否は、暴力や脅迫の有無、発言の内容、当時の状況などを踏まえて個別に判断されます。
避妊していると嘘をつかれた場合
夫が「避妊している」と嘘をついて性交渉を行い、妊娠して中絶に至った場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。妊娠や出産に関する選択は、女性の人生や身体に大きく関わる重要な問題です。
そのため、夫が避妊していると信じ込ませて性交渉を行い、望まない妊娠や中絶を招いたのであれば、女性の自己決定権を侵害したといえるでしょう。
このような行為は不法行為にあたる可能性があり、夫に対する慰謝料請求が認められる場合があります。
妊娠後の夫の対応が不誠実だった場合
妊娠後に夫が不誠実な対応を続けた場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。例えば、妊娠や中絶に関する話し合いを一方的に拒否するなど、精神的な支えとなるべき場面で向き合わなかったケースです。
裁判例では、妊娠や中絶による身体的・精神的負担や経済的負担は、男女が共同して行った性交渉によって生じたものであり、男性にもその負担を軽減・分担する責任があると考えられています。
そのため、夫がこうした責任を果たさず、中絶に関する負担を妻に一方的に負わせた場合には、不法行為が成立することがあります。
中絶した場合の慰謝料の相場|100万~200万円程度
中絶に関する慰謝料請求が認められた場合、その相場は100万~200万円程度が一般的です。ただし、実際の金額は一律ではなく、妊娠や中絶に至った経緯、相手の対応、受けた身体的・精神的苦痛の大きさなどを踏まえて決まります。
特に、相手から一方的に性行為や中絶を求められたり、強い精神的圧力を受けたケースでは、女性の自己決定権が侵害されたとして、慰謝料が高額になる可能性が高いです。
また、中絶に関する問題だけでなく、相手による不貞行為(浮気・不倫)やDVなどが認められる場合には、慰謝料が増額される傾向があります。
もっとも、慰謝料額は個別の事情によって大きく変わるため、具体的な見通しについては弁護士へ相談するとよいでしょう。
離婚慰謝料の増額事由や浮気・不倫の慰謝料相場について、詳しくは以下の各ページをご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
中絶による離婚で慰謝料を請求する方法
中絶を理由に離婚する場合、慰謝料請求は話し合いで解決できるケースもあれば、調停や裁判へ発展するケースもあります。状況に応じた適切な方法を選ぶため、まずは請求の流れを確認しておきましょう。
- ①夫婦間で話し合う
- ②調停を申し立てる
- ③裁判を起こす
離婚で慰謝料を請求する方法について、詳しくは以下のページをご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
①夫婦間で話し合う
中絶による離婚で慰謝料を請求する場合、まずは夫婦間で慰謝料の金額や支払方法について話し合うのが一般的です。当事者同士で合意できれば、裁判所を利用する必要がないため、時間や費用の負担を抑えながら早期解決を目指せます。
話し合いによる解決は柔軟な条件を設定しやすい点もメリットです。例えば、夫が責任を認めている場合には、慰謝料に加え、中絶手術費用や通院費の負担についても取り決めることができます。
ただし、口約束だけでは後に「そのような合意はしていない」と争いになるおそれがあります。そのため、合意に至った際は、慰謝料額や支払期限、支払方法などを記載した合意書や示談書を作成しておくことが重要です。
②調停を申し立てる
夫婦間での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停とは、家庭裁判所の調停委員が間に入り、当事者双方の意見を調整しながら解決を目指す手続きです。
当事者同士が直接顔を合わせる必要がないため、感情的な対立が激しい場合でも、冷静に話し合いを進めやすいというメリットがあります。
また、中絶を理由に離婚するケースでは、調停の中で慰謝料の有無や金額についても話し合うのが一般的です。当事者間では解決が難しい場合でも、調停によって合意に至ることがあります。
離婚調停の基本や有利に進めるポイントについて、詳しくは以下のページをご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
③裁判を起こす
話し合いや調停でも解決しない場合は、裁判によって決着を図ることになります。裁判では、裁判官が当事者双方の主張や証拠を踏まえ、不法行為の有無や慰謝料額を判断します。
そのため、慰謝料請求を認めてもらうには、相手から中絶を強要されたことや、不誠実な対応を受けたことを裏付ける証拠が重要です。
裁判では、証拠の収集や主張の整理など専門的な対応が求められるため、証拠の準備や手続きを弁護士に依頼するのが一般的です。弁護士であれば、事案に応じた主張や立証方法についてアドバイスを受けられます。
離婚裁判の流れや費用について、詳しくは以下のページをご覧ください。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います
離婚問題ご相談予約受付来所・オンライン法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
お電話でのご相談受付
0120-979-164
24時間予約受付・年中無休・通話無料
メールでのご相談受付
メール相談予約受付中絶による離婚で慰謝料以外に請求できる費用は?
中絶が原因で離婚に至った場合、相手に不法行為が認められれば、慰謝料だけでなく中絶に伴って生じた費用も損害賠償が認められるケースがあります。
慰謝料以外に請求できる主な費用は、次のとおりです。
- 中絶手術費用
- 妊娠中の診療費・通院交通費
- 中絶に伴う診療費・入院費・交通費
- 仕事を休んだ場合の休業損害
- 後遺症が残った場合の治療費や慰謝料
もっとも、どの費用まで認められるかは、妊娠や中絶に至った経緯などによって異なります。そのため、領収書や診断書、休業証明書などの資料は大切に保管しておきましょう。これらの資料があれば、実際に生じた損害を証明しやすくなります。
中絶手術の費用
中絶手術の費用は妊娠週数によって異なりますが、一般的に10万~50万円程度が目安とされています。中絶は病気やけがの治療ではないため、基本的に健康保険は適用されず、費用は自己負担です。
もっとも、自治体によっては「妊婦のための支援給付金」などの制度を利用できる場合があります。ただし、この給付金ですべての中絶費用が補填されるわけではなく、実際の自己負担額は手術費用や給付の状況によって異なります。
また、無理やり性交渉をされて妊娠し、中絶を余儀なくされた場合には、相手に中絶手術費用の全額を請求できる可能性があります。
一方、夫婦が合意のうえで性交渉を行い妊娠した場合には、妊娠について双方に責任があると考えられるため、中絶費用は折半となるのが一般的です。
その他の中絶にかかる費用
中絶に伴う費用としては、手術費用だけでなく、入院費や通院のための交通費、仕事を休んだ場合の休業損害などがあります。
また、中絶によって後遺症が残った場合には、治療費や後遺症による精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる可能性もあります。ただし、これらの請求が認められるためには、夫の不法行為と後遺症との間に因果関係があることが必要です。
もっとも、請求できる金額や負担割合は、妊娠や中絶に至った経緯によって異なります。例えば、夫婦が合意のうえで妊娠したケースでは、費用の一部のみが認められることがあります。一方、相手の不法行為によって妊娠や中絶をせざるを得なかったケースでは、より広い範囲で損害賠償が認められるでしょう。
実際に請求する際は、領収書や診断書、休業証明書などを保管しておくことが大切です。これらの資料は、発生した損害を裏付ける重要な証拠となります。
中絶を理由とする慰謝料請求に時効はある?
中絶を理由とする慰謝料請求の時効は、基本的に「中絶から3年」です。夫による中絶の強要や同意のない性交渉などは、不法行為に基づく損害賠償請求として扱われるため、不法行為に関する時効のルールが適用されます。
不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知ったときから3年で消滅します。そのため、中絶による慰謝料請求を考えている場合は、時効が完成する前に対応することが大切です。
離婚慰謝料の時効について、詳しくは以下のページをご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
中絶を理由とした慰謝料請求に関する裁判例
【令和4年(ワ)第11218号、令和4年(ワ)第19412号 東京地方裁判所 令和5年11月6日 判決】
事案の概要
原告女性は被告男性との性交渉により妊娠しました。しかし、男性は「堕ろすしか選択肢はない」「責任は取れない」「結婚もしない」などと繰り返し伝え、出産後の養育や生活への協力についても消極的な姿勢を示していました。
女性は出産を望んでいたものの、男性のこうした対応を受けて中絶を選択しました。そして、男性の言動により精神的苦痛を受け、中絶を余儀なくされたとして、中絶の強要に基づく不法行為があったと主張し、慰謝料を求めて提訴しました。
裁判所の判断
裁判所は、男性による暴力や脅迫は認められないとしながらも、「堕ろすしか選択肢はない」「責任は取れない」などと繰り返し伝え、出産後の養育や生活面での支援も拒否する姿勢を示し続けた点を重視しました。
そして、このような対応によって女性が出産という選択を断念し、中絶を選ばざるを得なくなったとして、男性が実質的に中絶を強いたと判断しました。女性が最終的に中絶を決断したのは自身の意思によるものではあるものの、その判断は男性の不誠実な対応による影響を受けた結果であるとして、両者間の因果関係も認めています。
そのうえで裁判所は、男性の行為は不法行為にあたるとして、慰謝料150万円の支払いを命じました。慰謝料額の判断にあたっては、女性が中絶による身体的・精神的負担を受けたことに加え、男性が中絶費用を負担していなかったことなども考慮されています。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います
中絶による離婚や慰謝料に関するQ&A
- Q:
夫に無断で中絶した場合も慰謝料や中絶費用を請求できますか?
- A:
夫に無断で中絶した場合でも、中絶費用の分担を求めることは可能です。妊娠は夫婦双方に関わる問題であるため、中絶に要した費用についても、事情に応じて夫の負担が認められます。
一方、慰謝料は精神的苦痛に対する賠償であり、請求が認められるためには相手による不法行為が必要です。そのため、夫による暴力や脅迫、中絶の強要、不誠実な対応などがなければ、妻から夫への慰謝料請求は難しいでしょう。
- Q:
中絶による離婚で相手に非がある場合、中絶費用を折半するのはおかしいですか?
- A:
中絶費用の負担割合は個別の事情によって判断されるため、一律に「中絶費用を折半するのはおかしい」とはいえません。
例えば、相手に一定の非が認められる場合でも、妊娠に至った経緯や双方の責任の程度などを踏まえ、話し合いや裁判の結果、費用が折半となるケースがあります。そのため、相手に落ち度があるからといって、必ずしも全額負担を請求できるわけではありません。
もっとも、相手による中絶の強要や不誠実な対応などの不法行為が認められれば、中絶費用とは別に、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる可能性があります。
- Q:
中絶を理由に離婚する場合、未婚の場合よりも慰謝料は高額になりますか?
- A:
中絶を理由に離婚する場合、未婚の場合よりも慰謝料が高額になることがあります。婚姻中の夫婦であれば、妊娠や中絶による精神的負担に加え、それが夫婦関係の悪化や離婚につながったことも考慮されるためです。
もっとも、慰謝料額は、相手の不法行為の内容や婚姻期間、夫婦関係への影響、離婚に至った経緯、精神的苦痛の大きさなどを踏まえて判断されます。そのため、最終的には個別の事情によって金額が決まります。
中絶による離婚慰謝料の請求は一人で悩まず弁護士に相談しましょう
中絶による離婚の慰謝料は、一律に認められるものではありません。中絶に至った経緯や夫の言動、夫婦関係の状況などによって、慰謝料請求の可否や金額は大きく異なります。
そのため、ご自身のケースで慰謝料を請求できるのか、どの程度の金額が見込めるのか判断に迷ったときは、早めに弁護士へ相談することが望ましいです。
弁護士法人ALGでは、これまで数多くの離婚問題を取り扱ってきた経験を活かし、ご相談者様の状況に応じた解決方法をご提案しています。証拠収集のアドバイスから相手方との交渉、調停・裁判対応まで一貫したサポートが可能です。
中絶をめぐる慰謝料請求でお悩みの方は、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
- 福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士131名、スタッフ240名を擁し(※2026年4月1日時点)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの国内外13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。











