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うつ病の妻・夫と離婚できる?条件や離婚率、慰謝料などを解説

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

うつ病を理由に離婚はできる?│離婚する条件 別居

配偶者がうつ病になると、支える側にも精神的・経済的な負担がかかり、将来を見据えて離婚を考える方は少なくありません。一方、「うつ病の妻・夫と離婚できるのか」「どのように進めればよいのか」と迷う場面も多いのではないでしょうか。

この記事では、うつ病を理由に離婚ができるのか、離婚が認められやすいケース、慰謝料や親権などへの影響について、わかりやすく解説します。

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この記事の目次

うつ病の妻・夫と離婚できる?

うつ病を理由とする離婚は、夫婦の合意があれば成立します(協議離婚や離婚調停)。
一方、相手が離婚に応じない場合は離婚裁判となり、民法770条が定める「法定離婚事由」のいずれかに該当する必要があります。

【法定離婚事由(民法770条)】

  • ①配偶者に不貞行為があったとき
  • ②配偶者から悪意で遺棄されたとき
  • ③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  • ④その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

うつ病そのものは①~③に当たらないため、④の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題となります。
ただし、夫婦には相互扶助義務があるため、「うつ病である」という事情だけで直ちに離婚が認められるとは限りません。これまでどのように配偶者を支えてきたかや、夫婦関係の実態などが総合的に考慮されます。

【2026年改正】精神病だけでは離婚が認められない

2026年4月施行の民法改正により、法定離婚事由の一つであった「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という規定は削除されました。これは、精神疾患のみを理由に離婚を認めることは、障害者の権利保護の観点から問題があると指摘されたためです。

改正後は「うつ病である」という事情だけで離婚の可否が判断されるのではなく、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかどうかが重視されます。

うつ病による離婚が認められるケース

相手が離婚に応じない場合、最終的には裁判所の判断に委ねる必要がありますが、うつ病であるというだけでは離婚が認められにくいのが実情です。
ここからは、裁判で離婚が認められやすいケースをわかりやすく解説します。

  • ①配偶者の回復のために協力してきた
  • ②「婚姻を継続し難い重大な事由」がある
  • ③うつ病の配偶者が離婚後も生活に困らない

配偶者の回復のために協力してきた

うつ病を理由に離婚を求める場合、これまで配偶者の回復に向けて献身的に支えてきたことが重要です。
夫婦には「協力扶助義務(民法752条:お互いに助け合いながら生活する義務)」があるため、十分にサポートしないまま離婚を求めても、認められにくい傾向があります。

具体的には、病院に付き添うなど、治療を継続的に支えてきたか、日常生活の中でも長期間にわたり見守りやケアを行ってきたかといった点が重視されます。
こうした努力を積み重ねても、夫婦関係の維持が難しいといえる場合、離婚が認められる可能性が出てくるでしょう。

「婚姻を継続し難い重大な事由」がある

うつ病の配偶者との離婚では、法定離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが大きなポイントです。具体的には、うつ病が原因で、夫婦に深刻な問題が生じているかが重視されます。

【例】

  • うつ病により、長期間にわたり別居が続いている
  • うつ病の影響で暴力やモラハラが発生している
  • 意思疎通が著しく困難で、日常生活が成り立たない状態にある

単に病気の有無だけで判断されるわけではなく、夫婦関係がどの程度破綻しているか、今後回復の見込みがあるかといった事情を総合的に考慮し、離婚の可否が判断されます。

婚姻関係の破綻について詳しくは、以下のページをご参考ください。

うつ病の配偶者が離婚後も生活に困らない

「離婚すると、うつ病の配偶者の生活に支障が出る」と考えられる場合、裁判で離婚が認められにくい傾向があります。簡単に言うと、うつ病を抱える配偶者を見捨てる形になりかねないためです。

そのため、離婚を認めてもらうには、「離婚しても、うつ病の配偶者が生活に困らないこと」をしっかり主張することが重要です。
たとえば、次のような事情があれば、離婚しても大きな影響はないと判断される可能性があります。

【例】

  • 配偶者の親族に生活を支えてもらえる
  • 障害年金を受け取ることで、生活費を確保できる

うつ病の離婚率はどのくらい?

うつ病そのものに限った離婚率について、公式な統計データは公表されていません。
なお、裁判所が公表している「司法統計年報」でも、離婚の動機として「病気」を挙げている割合は全体の約1%とされ、比較的少ない件数にとどまっています。
また、実際には「性格が合わない」「暴力を振るう」といった離婚理由の背景に、うつ病などの精神疾患が間接的に影響している可能性も考えられます。

配偶者の精神病を理由に離婚が認められた判例

【昭和45年(オ)第426号 最高裁 昭和45年11月24日第3小法廷判決】
本件は、精神病を患っている妻に対して、夫が離婚を求めた事案です。第一審では夫の請求が認められ、離婚が成立しました。妻は不服として控訴しましたが棄却され、さらに上告したものの、最終的に退けられています。

裁判所は、当時の法定離婚事由であった「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないもの」にあたると判断しました。そのうえで、以下のような事情も考慮し、精神病を理由とする離婚請求を認めています。

  • 妻の実家には一定の資産があり、夫の支援がなくても療養費に困る状況ではない
  • 夫は生活に余裕がない中でも、妻の過去の療養費を約束どおり支払い、今後も可能な範囲で負担する意思を示している
  • 子供の養育は出生時から主に夫が担ってきた

うつ病の配偶者と離婚する方法と流れ

うつ病の配偶者と離婚する場合でも、基本的な手続きの流れは通常の離婚と大きく変わりません。
まずは話し合いから始め、状況に応じて裁判所の手続きへ進むことになります。

ここでは、離婚の進め方を段階ごとに分けて、わかりやすく解説します。

  1. ①協議離婚|夫婦で話し合う
  2. ②離婚調停|家庭裁判所で話し合う
  3. ③離婚裁判|裁判で決めてもらう

①協議離婚|夫婦で話し合う

協議離婚とは、夫婦で話し合い、双方が合意したうえで離婚を成立させる方法です。役所に離婚届を提出して受理されれば、離婚理由は問われません。
そのため、配偶者がうつ病であっても、相手の同意が得られれば離婚は可能です。

もっとも、うつ病の配偶者との話し合いは慎重に進める必要があります。
体調や精神状態によっては感情が不安定になりやすく、合意が難しいケースもあります。相手の負担にならないタイミングや伝え方を心がけ、無理に話を進めない姿勢が大切です。

離婚条件について合意できた場合、後のトラブルを防ぐためにも「離婚協議書」を作成しておくと安心です。

協議離婚について詳しくは、以下のページをご参考ください。

②離婚調停|家庭裁判所で話し合う

夫婦間の話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てます。

【離婚調停とは】
家庭裁判所の調停委員が間に入り、話し合いによって解決を目指す手続きです。当事者同士が顔を合わせることなく、調停委員が双方の意見を聞きながら進めるため、冷静な話し合いが期待できます。

うつ病による離婚では、医師の診断書などを提出し、配偶者の病状やこれまでの経緯、夫婦関係の状況を具体的に説明することが大切です。
そのうえで、どのような理由で離婚を求めているのかを整理して伝えることで、調停委員の理解を得やすくなります。

配偶者のうつ病で離婚調停をするケースについて詳しくは、以下のページをご参考ください。

③離婚裁判|裁判で決めてもらう

調停でも合意に至らない場合は、「離婚裁判」へ進みます。裁判では、相手が離婚に応じなくても、裁判所が離婚を認めれば離婚が成立します。

もっとも、裁判で離婚が認められるためには、民法770条の「法定離婚事由」に該当することが必要です。2026年の法改正により、「強度の精神病」は法定離婚事由から削除されており、現在は「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかがポイントになります。

うつ病を理由に離婚したい場合は、これまで配偶者の回復に向けて献身的に支えてきた経緯や、それでも関係の維持が難しい実情を具体的に示すことが重要です。
たとえば、医師の診断書や治療経過の資料、日常的な支援の記録などが証拠として役立つ可能性があります。
裁判では専門的な主張・立証が求められるため、弁護士のサポートを受けることで適切に対応しやすくなるでしょう。

離婚裁判について詳しくは、以下のページをご参考ください。

配偶者のうつ病による離婚で慰謝料は請求できる?

配偶者のうつ病のみを理由に離婚する場合、基本的に慰謝料を請求することは難しいといえます。
うつ病は本人の意思で発症するものではなく、病気である以上、「離婚の責任がある」とは評価されにくいためです。ご自身が大きな負担を感じていても、それだけで慰謝料が認められる可能性は高くありません。

ただし、うつ病とは別に、不貞行為(肉体関係を伴う浮気・不倫)やDV・モラハラ、悪意の遺棄(正当な理由なく勝手に家を出て行く等)があった場合、これらを理由に慰謝料を請求できる可能性があります。
それぞれの慰謝料相場は、下表のとおりです。

不貞行為(肉体関係のある浮気・不倫) 200万~300万円程度
DV・モラハラ 50万~300万円程度
悪意の遺棄 50万~300万円程度

離婚慰謝料を請求できるケースについて詳しくは、以下のページをご参考ください。

うつ病の配偶者との離婚で後悔しないためのポイント

うつ病の配偶者との離婚は、相手にとっても精神的・経済的な影響が大きいため、慎重に進めることが大切です。後悔しないためには、事前に押さえておきたいポイントがあります。

ここからは、離婚を検討する際に意識しておきたい具体的な注意点を解説します。

  • うつ病の治療をサポートする
  • 離婚の決断を迷う場合は別居を検討する
  • うつ病が重度の場合は成年後見制度を利用する
  • 慰謝料請求や裁判に備えて証拠を残しておく

うつ病の治療をサポートする

うつ病の配偶者との離婚を検討する場合、重要なのは「これまで治療や生活の面で、どれだけ相手を支えてきたか」という点です。夫婦には協力扶助義務があり、十分なサポートを行わずに離婚を求めても、認められにくい傾向があります。
また、うつ病は適切な治療によって症状が軽くなる可能性もあるため、無理のない範囲で通院の付き添いや治療のサポートを行うのが望ましいといえます。

こうした過程は、離婚を求めるうえで重要なポイントになるため、できるだけ記録に残すとよいでしょう。たとえば、治療を勧めた経緯や日常的なサポートの記録などを残しておくことで、客観的な証拠になり得ます。

離婚の決断を迷う場合は別居を検討する

離婚を迷っている場合は、すぐに結論を出すのではなく、別居を検討する方法もあります。

別居は、ご自身の心身の負担を軽減し、夫婦関係について冷静に考える時間を確保するために有効な手段です。一定期間距離を置くことで、今後の方向性を落ち着いて判断しやすくなるでしょう。

もっとも、相手の同意なく一方的に家を出ると、「悪意の遺棄」として不利な状況につながるおそれがあります。そのため、可能であれば事前に相手と話し合い、同意を得ることが重要です。

また、別居中の生活費については、婚姻費用として支払いを検討するなど、法的トラブルを避けるための準備も意識しておくと安心です。

うつ病が重度の場合は成年後見制度を利用する

配偶者のうつ病が重く、判断能力が低下している場合は、「成年後見制度」の利用を検討する必要があります。

【成年後見制度とは】
認知症や精神疾患などにより判断能力が十分でない人について、家庭裁判所が成年後見人を選任し、本人に代わって契約や手続きなどの法律行為を行う仕組みです。

成年後見制度を利用するには、家庭裁判所へ申立てを行い、「成年後見人」を選任してもらったうえで、後見人を通じて離婚手続きを進めることになります。
なお、このような場合は、夫婦間の話し合いや調停での対応が難しいため、裁判で判断を求める必要がある点にも注意が必要です。

慰謝料請求や裁判に備えて証拠を残しておく

うつ病を理由に、裁判で離婚や慰謝料を求める場合は、主張を裏付ける証拠の提出が必要です。あらかじめ資料を整理しておくことで、これまでの経緯や状況をわかりやすく示せるでしょう。

【証拠の具体例】

  • 医師の診断書(病状や診断内容を示す書面)
  • 通院履歴(継続的に治療を受けていることを示す記録)
  • 回復見込みに関する医師の意見書
  • 看病の状況や生活の様子を記録した日記やメモ
  • 公的支援制度(障害年金など)の利用状況を示す資料

こうした証拠をそろえておくことで説得力が高まり、適切な判断につながりやすくなります。

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配偶者がうつ病だと離婚条件に影響はある?

配偶者がうつ病の場合、離婚条件にどのような影響があるのかを確認していきます。
ここでは、「親権」「養育費」「財産分与」を例に、それぞれ解説します。

親権

配偶者がうつ病であるからといって、ご自身に親権が認められるとは限りません。
裁判所は、これまでどちらが主に子供の世話をしてきたか、生活の安定性、今後の養育環境など、さまざまな事情を考慮して親権者を判断します。
健康状態も判断要素の一つですが、うつ病の程度が軽いと、親権の判断に大きく影響しないケースもあります。

もっとも、親がうつ病を抱えている場合、子供が不安やストレスを感じることも少なくありません。
親権を決める際に最も大切なのは、「子供の利益(しあわせ)」です。夫婦で話し合うときは、どちらのもとで育てた方が、子供の成長にとって望ましいかを第一に考えることが重要です。

「親権」についての詳しい内容は、以下のページをご覧ください。

養育費

ご自身が親権を獲得して子供と生活する場合、うつ病の(元)配偶者に対して養育費を請求できます。
親である以上、離婚後も子供を扶養する義務を負うため、うつ病であって養育費は発生するのが基本です。

ただし、養育費の金額は双方の収入などに基づいて決まるため、具体的な金額は個々の事情によって異なります。無職で収入がなくても、“働こうと思えば働ける能力がある”と判断されれば、平均的な賃金を前提に養育費が算定されることもあります。

一方、うつ病の影響で退職し、働くことが難しい状況にある場合は、働ける能力が十分にあるとは判断されにくいでしょう。その結果、「相手に収入がない」と判断され、養育費を受け取れない、あるいは低額にとどまる可能性があります。

以下のページでは、「養育費」の支払い義務について詳しく解説しています。ぜひ参考になさってください。

財産分与

「財産分与」とは、結婚後に夫婦が力を合わせて築き上げた共有財産を、離婚時に分け合う制度です。分与の割合は2分の1とするのが基本です。
この考えは、配偶者がうつ病であっても大きく変わりません。

ただし、うつ病を抱えていると、離婚後の生活に不安を感じる方も多いでしょう。その場合は、相手の生活を支える観点から、財産分与の割合を一定程度調節し、配偶者に多く配分することもあります。

「財産分与」については、以下のページで詳しく解説しています。

うつ病と離婚に関するQ&A

Q:

うつ病の配偶者に離婚を切り出すタイミングはいつがいいですか?

Q:

産後うつの妻と離婚できますか?

Q:

不妊が原因でうつ病になった妻と離婚できますか?

うつ病の配偶者との離婚をお考えの方は弁護士法人ALGにご相談ください

うつ病の配偶者を支える中で、心身の負担が積み重なり、離婚を考える方は少なくありません。
もっとも、うつ病を理由とする離婚は、裁判でも慎重に判断される傾向があり、状況に応じた対応や準備が重要です。これまでの支援状況や夫婦関係の実態をどのように整理し、主張していくかによって、結論が変わる可能性もあります。

配偶者のうつ病による離婚をお考えの方は、弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは、ご相談者様の状況を丁寧に伺い、それぞれの事情に合わせたサポートを行っています。お悩みの際は、一人で抱え込まず、お気軽にお問い合わせください。

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弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

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