婚約破棄で慰謝料は請求できる?流れや相場、高額になるケースを解説
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
突然の婚約破棄に直面すると、強い不安や怒りを感じるのは自然なことです。
正当な理由なく婚約を破棄された場合は慰謝料を請求できる可能性があり、一般的な相場は30万~200万円程度とされています。
ただし、すべてのケースで慰謝料が認められるわけではなく、事情によって異なる点に注意が必要です。
この記事では、婚約破棄で慰謝料請求が可能となる条件や相場、慰謝料請求の流れなどについて、わかりやすく解説します。
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婚約破棄で慰謝料は請求できる?
婚約破棄で慰謝料を請求できるかは、「正当な理由の有無」と「婚約の成立」によって左右されます。
婚約は「将来結婚する合意」を指し、口約束でも有効とされています。ただし、争いになった場合は、結納や指輪の購入、親族への紹介など、婚約の存在を裏付ける客観的事情が重要です。
そのうえで、性格の不一致や一方的な心変わりなど、不当な理由によって婚約を解消された場合は、精神的苦痛への賠償として慰謝料請求が認められる可能性があります。
一方、こちらの浮気やDVなど、婚約破棄に正当な理由がある場合、相手に対する慰謝料請求は認められにくいでしょう。
婚約破棄について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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婚約破棄に正当な理由があれば請求できない
相手から正当な理由で婚約破棄された場合は、慰謝料の請求が認められない傾向があります。
正当な理由とは、「婚姻関係の継続が困難と判断される事情」を指し、基本的には法定離婚事由(民法770条)に該当するものと考えられています。
【正当な理由の具体例】
- 自分が不貞行為(浮気)をした
- 自分が既婚者である事実を隠していた
- 相手に対してDV・モラハラを行った
- 多額の借金や犯罪歴などの重要事項を隠していた
- 自分が突然連絡を絶ち、行方をくらました
- 事故や病気(精神疾患を含む)により、婚姻生活が困難となった
- 自分の失業や収入減などで、生活基盤が不安定になった
このような場合、婚約破棄の慰謝料請求が難しいだけでなく、状況によっては相手から慰謝料を請求される可能性もあります。そのため、自身の行為や状況が婚約関係に与えた影響を冷静に確認することが重要です。
婚約破棄が不当な理由であれば請求できる
婚約破棄の理由が正当ではない(不当である)場合、慰謝料を請求できる可能性があります。
不当な理由とは、合理的な事情がないまま、一方的に婚約を解消するようなケースです。
【不当な理由の具体例】
- 単なる性格の不一致を理由に、一方的に別れを告げた
- 他の異性と不貞行為(浮気)をし、その相手と交際したいから婚約を解消した
- 親の反対を形式的な理由とし、十分な努力もなく結婚を取りやめた
- 人種や宗教、国籍などを理由に婚約を解消した
このように、合理性が乏しく、相手に大きな精神的苦痛を与えるようなケースは、不当な婚約破棄と判断される場合があります。
婚約破棄の慰謝料相場はいくら?
婚約破棄の慰謝料相場は、一般的に30万~200万円程度とされています。
ただし、精神的苦痛の大きさは一定ではないため、あくまで目安に留まります。「この場合はいくら」と具体的に算定できるものではなく、個別事情が大きく影響するのが通常です。
一般的には、交際期間の長さや結婚式場の予約、新居契約といった結婚準備の進み具合や、婚約破棄に至る経緯、相手の対応の悪質性などが考慮されます。
妊娠中に一方的に破棄されたケースでは、精神的・身体的負担の大きさから200万円以上の高額な慰謝料が認められる可能性もあります。このように、具体的な個別事情によっては、相場を上回ることも少なくありません。
婚約破棄の慰謝料が高額になるケース
婚約破棄による精神的苦痛が大きいほど、慰謝料は高額になりやすい傾向があります。
【慰謝料が高額になる可能性の高いケース】
- 交際期間が長い
長期間にわたり信頼関係を築いてきたことが重視され、精神的苦痛も大きいと判断されやすくなります。 - すでに同居している
夫婦に近い生活実態があり、婚姻に対する期待の大きさが考慮されます。 - 妊娠・出産・中絶をした
身体的・精神的負担が極めて大きく、特に重く評価される傾向があります。 - 結婚式(入籍)直前の破棄
社会的影響や精神的苦痛が大きく、高額化しやすくなります。 - 結婚のために退職した
生活基盤を失うため、不利益が大きいとされます。 - 心身の健康が損なわれた
うつ病などを発症した場合、医師の診断があれば被害の深刻さを裏付ける事情となります。 - 婚約が周知されていた
婚約の事実が親族や職場などに広く知られていた場合、社会的信用や名誉への影響も考慮される可能性があります。
婚約破棄で慰謝料以外に請求できるものとは?
正当な理由なく婚約破棄された場合、精神的苦痛に対する「慰謝料」だけではなく、次のような実費も請求できる可能性があります。
- 結婚式場の内金・キャンセル代
- 新婚旅行の費用・キャンセル代
- 新居に住むための準備費用
- 結納金
- 仲人への謝礼金
- 婚約指輪、結婚指輪の代金
- 寿退社をしなかったら得られたであろう給料相当額
実費を請求する場合は、領収証やキャンセル料が記載された明細書など、具体的な金額がわかる資料を準備しておきましょう。
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メール相談予約受付婚約破棄で慰謝料を請求する流れ
婚約破棄で慰謝料を請求する場合、感情的な対立に発展しやすいため、適切な手順に沿って冷静に進めることが重要です。ここでは、慰謝料請求を進める際の基本的な流れについて順に解説します。
- ① 当事者間で話し合う
- ② 慰謝料請求の調停を申し立てる
- ③ 最終的には裁判を起こす
①当事者間で話し合う
まずは、婚約相手と慰謝料について話し合い(協議)を行います。直接会うのが難しい場合は、電話やメールで意思を伝えても問題ありません。
話し合いで合意できたら、合意内容を「示談書」として書面に残しておきましょう。
協議が進まない場合や連絡が取れない場合は、内容証明郵便を送付するのも有効です。法的な強制力はありませんが、相手に対応を促す効果が期待でき、調停や裁判で証拠として役立つ可能性もあります。
直接のやり取りに精神的な負担を感じる場合は、弁護士に依頼し、代理で交渉してもらう方法もあります。
②慰謝料請求の調停を申し立てる
婚約破棄の慰謝料請求では必ずしも調停を経る必要はありませんが、話し合いによる解決を目指す場合、調停は有効な手続きです。
調停は、調停委員を介して話し合いを進める手続きです。不安がある場合は、弁護士に依頼して同席してもらうこともできます。
調停で合意に至ると「調停調書」が作成され、確定判決と同様の効力を持ちます。そのため、相手が約束どおり慰謝料を支払わない場合は、強制執行により財産の差押えが可能です。
もっとも、意見の食い違いが大きい場合は、合意に至らず「調停不成立」となることもあります。
③最終的には裁判を起こす
当事者の話し合いで解決できない場合や調停が不成立になった場合、最終手段として裁判を起こすことも検討します。
裁判では、「婚約が成立していた事実」や「不当な婚約破棄であること」を主張・立証し、最終的に裁判所の判断(判決)に委ねることになります。
裁判では専門的知識や法的知識が求められるため、一般的には弁護士に相談しながら対応するのが安心です。
婚約破棄で慰謝料を請求するために必要な証拠
婚約破棄で慰謝料を請求するためには、「婚約の事実」と「婚約破棄に至った経緯」を裏付ける証拠が重要です。証拠を十分に示せなければ、不当な婚約破棄であったと認められない可能性があります。
ここからは、それぞれの証拠について詳しく解説します。
婚約の事実がわかる証拠
婚約破棄の慰謝料を認めてもらうには、婚約が成立していることが前提です。
婚約は口約束でも成立しますが、後に「婚約していない」と争われるケースも少なくありません。そのため、婚約を客観的に裏付ける事情が重要となります。
たとえば、次のような事実があれば、婚約の成立が認められやすいでしょう。
- お互いの両親に結婚の挨拶を済ませている
- 結納を取り交わしている
- 婚約指輪や結婚指輪を購入している、渡している
- 結婚式場や新婚旅行の予約をしている
- 新居の賃貸契約や家具・家電の購入を進めている
- 職場の同僚や友人・知人に結婚することを報告している
上記の事実がわかる申込書や領収書、予約票などの証拠もあわせて準備しておくと、婚約の事実をより明確に示すことができます。
婚約破棄に至った経緯がわかる証拠
| 不法行為の内容 | 証拠の具体例 |
|---|---|
| 不貞行為(浮気) |
・浮気相手とラブホテルに出入りした写真や動画 ・性的関係を持ったことが分かるメールやLINEの内容 など |
| DVやモラハラ |
・医療機関の診断書 ・通院していた履歴が分かるレシート・明細書・領収書・メモ ・暴力やモラハラを録音した音声、撮影した写真や動画 ・暴力やモラハラがあった日時や内容を記した日記やメモ など |
婚約破棄による慰謝料請求では、単に婚約の事実を示すだけでなく、「どのような理由で破棄に至ったのか」を具体的に示すことが重要です。
特に、一方的で不合理な破棄であったと立証できるかどうかが、慰謝料の可否や金額に大きく影響します。
たとえば、次のような証拠が有用とされています。
- 婚約破棄に至った経緯がわかるLINEやメールのやり取り
- 言動や状況を示す写真・録音・録画データ
- 状況を知る友人や家族など第三者の証言
- 婚約破棄によって心身に不調が生じた場合の医師の診断書
証拠は時系列ごとに保管しておくと、より説得力が高まるでしょう。
また、相手の不貞行為やDV・モラハラが原因で婚約破棄に至った場合、これらの不法行為についても、別途慰謝料請求が認められる可能性があります。
モラハラの証拠やDVの証拠について詳しくは、以下の各ページをご参考ください。
婚約破棄で慰謝料を請求する際のポイント
婚約破棄の慰謝料請求は、進め方や主張の仕方によって結果が大きく左右される可能性があります。
ここでは、慰謝料請求を有利に進めるために押さえておきたいポイントを解説します。
- 相場よりも高すぎる慰謝料は認められにくい
- 相手が支払える金額を提示する
- 慰謝料請求の時効に注意する
- 弁護士に相談する
相場よりも高すぎる慰謝料は認められにくい
婚約破棄の慰謝料請求の相場は、30万~200万円程度が一般的です。ただし、あくまで目安であり、実際の金額は個別事情によって異なります。
精神的苦痛の大きさから、「できるだけ高額な慰謝料を支払ってほしい」と感じるのは自然なことです。
しかし、相場を大きく上回る慰謝料を請求すると、相手が反発し、支払いを拒否される可能性があります。話し合いが難航して調停や裁判に発展し、時間や費用の負担が増えるケースも少なくありません。
早期の解決を望むのであれば、相場の範囲内で適正な金額を請求するのがポイントです。
相手が支払える金額を提示する
確実に慰謝料を支払ってもらうためには、相手が現実的に支払える金額を提示することが重要です。
相手に慰謝料を支払う意思があっても、収入や資産の状況によっては一括払いが難しい場合もあります。そのため、相手の経済状況も考慮したうえで慰謝料額を決めることが大切です。
一括払いが困難な場合は、分割払いを提案する方法も考えられます。その場合、分割払いが滞るのを防ぐため、合意書を作成しておくと安心です。
「強制執行認諾文言付の公正証書」を作成しておくと、未払い時に強制執行の手続きを行い、相手の給与や預貯金を差し押さえることができます。
慰謝料請求の時効に注意する
婚約破棄の慰謝料請求には時効があり、期限を過ぎると、時効を理由に相手が慰謝料を支払わないおそれがあります。そのため、早めに対応することが重要です。
時効は、「どのような理由で慰謝料を請求するか」によって異なります。
- 婚約の約束を守らないことに対する損害賠償請求:5年
- 不法行為に基づく損害賠償請求:3年
いずれも時効が完成すると請求が難しくなるため、証拠の収集と並行して早めに手続きを進めるようにしましょう。
弁護士に相談する
婚約破棄のような男女間のトラブルは感情的な対立が生じやすく、当事者だけで冷静に解決するのが難しいケースも少なくありません。
弁護士に相談すれば、相手とのやり取りを任せることができるため、精神的負担の軽減や早期解決が期待できます。
また、「そもそも慰謝料が認められるのか」「どの程度の金額が妥当か」といった判断は、ご自身では難しいケースも多いです。
弁護士であれば、法的根拠を踏まえて適切に見通しを示し、現実的な請求額を検討できます。
婚約破棄の慰謝料請求が認められた裁判例
【令和元年(ワ)第13379号 東京地方裁判所 令和2年2月17日判決】
〈事案の概要〉
婚約破棄により精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求し、結果的に100万円の慰謝料が認められた事案です。主に「婚約が成立していたかどうか」などが争われました。
〈裁判所の判断〉
裁判所は、原告の妊娠が判明した後も交際が続いていたことに加え、クリスマスデートの際に被告が指輪を渡し、出産後の生活について具体的に話し合っていたことなどを重視しました。
これらの事情から、被告による結婚の申込みと、それに対する原告の承諾があったと認められ、両者の間に婚約が成立していたと判断されました。
しかし、被告はその数ヶ月後には連絡を避けるようになり、「今後一緒にいられない」と伝えて原告との関係を絶ちました。裁判所は、こうした経緯に照らし、被告による婚約破棄には正当な理由がないと認めました。
さらに、婚約破棄後に原告が出産している点や、破棄に至る状況を総合的に考慮し、慰謝料は100万円が相当であると判決を下しました。
婚約破棄の慰謝料に関するQ&A
- Q:
性格の不一致による婚約破棄の慰謝料相場はいくらですか?
- A:
性格の不一致を理由とする婚約破棄は、一般的な相場である30万~200万円程度の範囲で検討されることが多いです。
婚約は将来結婚する約束なので、単に「価値観が合わない」「一緒にいて疲れる」といった理由で一方的に解消すると、不当な婚約破棄と判断される可能性があります。
特に、結婚式直前での破棄など重大なケースでは、相場の中でも高めの金額が検討されるでしょう。一方、交際期間が短い、結婚準備が進んでいないなどのケースでは、慰謝料が低額にとどまる、あるいは認められないケースもあります。
- Q:
口約束で婚約していた場合でも慰謝料を請求できますか?
- A:
口約束であっても、婚約が成立していると認められれば、慰謝料を請求できる可能性があります。
婚約は、契約書などの書面が必要とされるものではありません。「結婚しよう」と互いに合意し、その前提で交際が続いていれば、書面がなくても婚約が成立していると判断される可能性があります。もっとも、口約束のみだと、後に相手が婚約を否定するおそれもあるため、客観的事情により婚約の存在を裏付けることが重要となります。
たとえば、両親への結婚挨拶、婚約指輪の授受、結婚式場や新居の準備、LINEやメールでの結婚に関する具体的なやり取りなどが証拠として有効です。
- Q:
婚約破棄の慰謝料請求にかかる弁護士費用はいくらですか?
- A:
婚約破棄の弁護士費用は、依頼する事務所や内容によって異なりますが、一般的に着手金は20万~40万円程度、報酬金は得られた慰謝料の10~20%程度とされることが多いです。
着手金は依頼時に支払う費用で、結果にかかわらず返還されないのが通常です。一方、報酬金は実際に慰謝料を回収できた場合に支払う“成功報酬”となります。他にも、交渉・調停・裁判など、手続きの進行に応じて追加費用が発生する場合も多いです。
もっとも、弁護士に依頼すると適正な金額での解決が見込めるほか、手続きの負担も軽減できるなど多くのメリットがあります。費用体系は事務所ごとに異なるため、事前に見積りを確認することが大切です。
- Q:
婚約破棄の慰謝料は浮気相手にも請求できますか?
- A:
一定の条件を満たせば、婚約相手だけでなく浮気相手に対しても慰謝料を請求できる可能性があります。
婚約関係は法律上も保護される大切な関係と考えられており、これを侵害する行為は「不法行為」に該当する場合があります。そのため、浮気相手が、当事者に婚約者がいると知りながら肉体関係を持った場合は、責任を問うことが可能です。
一方、浮気相手が婚約の事実を知らなかった場合や、知ることができない状況だった場合、慰謝料の請求は難しくなるでしょう。
浮気相手への慰謝料請求が認められるかは、「婚約していたことを知っていたか」など具体的な事情によって判断されるのがポイントです。
- Q:
マリッジブルーが原因で婚約破棄されたら慰謝料請求できますか?
- A:
マリッジブルーを理由に婚約破棄された場合、正当な理由とは認められにくく、慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。
マリッジブルーは“結婚前の不安や精神的な揺れ”を指しますが、通常は一時的な感情と判断されるため、それだけで婚約を解消する合理的な理由とは認められにくい傾向があります。
慰謝料の金額は、一般的な相場である30万~200万円程度の範囲で検討されますが、交際期間の長さや結婚準備の進み具合、退職の有無など、具体的な事情によって増減します。
婚約破棄の慰謝料請求は一人で悩まず弁護士へご相談ください
結婚生活に期待を膨らませる中で婚約を破棄されると、大きなショックを受けるのは自然なことです。
婚約破棄の理由によっては、精神的苦痛への賠償として慰謝料を請求できる可能性があるため、納得できない場合は適切に対応することが大切です。
弁護士法人ALGでは、ご相談者様のケースで慰謝料を請求できるか、また具体的な請求手続きの進め方などについて専門的なアドバイスを提供しています。相手方との交渉代理や、必要に応じて裁判での主張・立証も可能です。
婚約破棄に関して不安や疑問がある場合は、一人で抱え込まず、私たちにご相談ください。納得のいく解決に向けて、全力でサポートいたします。
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- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
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