離婚後も扶養義務はある?子供・配偶者・請求できるお金などを解説
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
扶養義務(ふようぎむ)とは、簡単にいうと、生活に困っている家族や親族を経済的に支える法律上の義務を指します。離婚によって夫婦の扶養義務は基本的に終了しますが、子供に対する扶養義務は離婚後も続くため注意が必要です。
この記事では、扶養義務の基本的な内容や範囲、離婚前後に扶養義務として請求できるお金などについて、わかりやすく解説します。
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扶養義務とは、自分の力だけでは生活を維持するのが難しい家族や親族を、経済的に支える法律上の義務です。扶養義務を負う人を「扶養義務者」、扶養を受ける権利がある人を「扶養権利者」と呼びます。
扶養義務には、大きく分けて次の2種類があります。
-
生活保持義務
相手が自分と同程度の生活水準を維持できるように支える義務で、主に配偶者や未成熟子に対して負うものです。 -
生活扶助義務
自分の生活に余力がある場合に、相手が最低限の生活を送れるよう援助する義務を指し、親族間の扶養義務などが該当します。
扶養の内容や金額、方法については、まず当事者同士の話し合いで決めるのが基本です。
話し合いがまとまらない場合には、扶養権利者の生活状況や扶養義務者の収入・資産などの事情を踏まえ、家庭裁判所が扶養の程度や方法を定めます。
| 種類 | 対象 | 義務の内容 |
|---|---|---|
| 生活保持義務 | 夫婦、未成熟の子供(経済的に自立していない子供) | 自分と同程度の生活を維持できるよう支える義務。自分の生活に多少の負担が生じても、相手の生活を保障しなければならない。 |
| 生活扶助義務 | 親、兄弟姉妹、成人した子供など | 自分の生活に余力がある場合に、相手が最低限の生活を送れるよう援助する義務。まずは自身の生活を維持することが優先される。 |
扶養義務の範囲はどこまで?【図解】
民法752条および民法877条では、扶養義務を負う親族について次のように定めています。
-
配偶者(夫・妻)
婚姻中の夫婦には、互いに協力して生活を支え合う義務があります(民法752条)。これは「生活保持義務」と呼ばれ、配偶者にも自分と同程度の生活水準を保障すべきと考えられています。 -
直系血族(父母・祖父母・子・孫など)
直系血族とは、親から子、祖父母から孫のように、一直線につながる血縁関係を指します。 -
兄弟姉妹(兄・弟・姉・妹)
兄弟姉妹も互いに扶養義務を負います(民法877条1項)。 -
3親等内の親族(おじ・おば・甥・姪など)
3親等内の親族については、当然に扶養義務が発生するわけではありません。家庭裁判所が「特別の事情」があると認めて審判をした場合に限り、扶養義務が生じる可能性があります(民法877条2項)。
離婚後の扶養義務はどうなる?
離婚後の扶養義務は、夫婦・親子・親族で扱いが異なります。
夫婦間の扶養義務は基本的に離婚により終了しますが、親子関係は離婚後も続くため、子供に対する扶養義務はなくなりません。
このように、夫婦と親子とでは、扶養義務の扱いがまったく異なる点を理解しておくことが大切です。
ここからは、離婚後どのような扶養義務が残るのか、それぞれ詳しく解説します。
配偶者(夫婦)の扶養義務
離婚後は、元配偶者の生活費を負担する義務はありません。
夫婦には、互いに同程度の生活水準を維持できるよう支え合う「生活保持義務」があります。しかし、この義務は婚姻関係を前提としているため、離婚後は消滅するのが基本です。
もっとも、離婚によって生活が著しく困窮するなどの場合は、例外的に扶養的財産分与として、一定期間の生活を支える目的で財産分与が認められるケースもあります。
扶養的財産分与が認められるかどうかは、年齢や健康状態、収入、就労の見込みなどを踏まえて個別に判断されます。
子供(親子)の扶養義務
親が子供を扶養する義務は、離婚後もなくなりません。離婚によって夫婦関係が終了しても親子関係は継続するため、子供が経済的に自立するまでは生活や教育を支える責任があります。
この扶養義務は親権や監護権を持つかどうかに関係なく、父母双方が負うものです。そのため、離婚後に親権を持たず子供と離れて暮らす親であっても、「養育費」というかたちで扶養を継続する義務があります。
離婚はあくまで夫婦間の問題であり、子供の生活や成長に対する責任までなくなるわけではない点に注意が必要です。
親族の扶養義務
義父母や義兄弟姉妹などの姻族に対する扶養義務は、離婚によって消滅するのが基本です。
離婚が成立すると、元配偶者との婚姻関係だけでなく、その親族との姻族関係も終了します。よって、義父母の生活を支えたり、介護費用を負担したりする法的義務は基本的になくなります。
一方、配偶者が死亡した場合、そのままでは義父母などとの姻族関係は終了しません。姻族関係を終了させたいときは、市区町村役所へ姻族関係終了届を提出します。
届出によって、亡くなった配偶者の親族との法律上の姻族関係を解消することが可能です。
離婚前後で扶養義務として請求できるお金とは?
離婚前|収入の多い方へ婚姻費用を請求できる
離婚前であれば、収入の少ない配偶者は、収入の多い配偶者に対して婚姻費用を請求できる可能性があります。
婚姻費用とは、夫婦や未成熟子が通常の生活を送るために必要な生活費や教育費のことです。
夫婦には互いに協力・扶助する義務があるため、別居中であっても、離婚が成立するまでは協力扶助の義務が継続します。よって、夫婦の収入に差がある場合は、一般的に収入の多い方が少ない方へ婚姻費用を支払うことになります。
なお、離婚が成立すると夫婦間の扶養義務は終了するため、婚姻費用を請求できるのは基本的に離婚成立までです。
婚姻費用について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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離婚後|非親権者に養育費を請求できる
離婚後も、父母は子供に対する生活保持義務を負います。そのため、親権者や監護権者だけでなく、別居する親も子供の養育費を負担しなければなりません。
養育費とは、子供の生活費や教育費、医療費など、健全な成長に必要な費用を指します。
離婚前の子供の生活費は、「婚姻費用」の一部として支払われるのが一般的です。
一方、離婚後は「養育費」として、父母それぞれの収入や子供の人数・年齢などを考慮して金額が決められます。
養育費の支払い義務について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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非嫡出子がいる場合
非嫡出子であっても、父親が認知をしていれば、夫婦間に生まれた子供と同様の親子関係が成立します。
そのため、認知した父親には子供を扶養する義務が生じ、離婚した夫婦の子供と同じように養育費を支払う必要があります。養育費の金額や支払期間についても、基本的に嫡出子と同様です。
父親が認知をしていない場合は、法律上の父子関係が認められないため、調停など家庭裁判所の手続きを通して父親に養育費を請求することはできません。
内縁の夫との子供の養育費について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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養子縁組した子供の場合
養子縁組をすると、養親には養子を扶養する義務が発生し、実子と同様に子供の生活や教育を支える責任を負います。
この扶養義務は、養親と実親が離婚した場合でもなくなりません。
例えば、連れ子のいる相手と結婚し、その子供と養子縁組をした後に離婚しても、養親子関係は継続するため、養親は引き続き養子を扶養する義務を負います。そのため、離婚後に子供と別居する養親に対しては、実子の場合と同様に養育費を請求できる可能性があります。
なお、養親が扶養義務を免れるためには、養子との離縁が必要です。
養子縁組した場合の子供の養育費について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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親権者が再婚した場合
親権者が再婚したとしても、実の親子関係がなくなるわけではないため、実父または実母の扶養義務は基本的に継続します。そのため、子供と別居している親は、親権者の再婚後も養育費の支払い義務を負うのが一般的です。
ただし、再婚相手が子供と養子縁組をした場合は事情が異なります。
養子縁組が成立すると、再婚相手も法律上の親として扶養義務を負うため、子供の生活を支える責任が生じます。
その結果、再婚相手が第一次的に扶養義務を負うと判断され、実父または実母の養育費の支払い義務は免除または減額される可能性が高いでしょう。
再婚した場合の養育費の支払い義務について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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メール相談予約受付扶養義務を拒否された場合の対処法
離婚前後の扶養義務である婚姻費用や養育費の支払いは、支払う側が一方的に拒否できるものではありません。しかし、実際には相手が支払いを拒否したり、話し合いに応じなかったりするケースも多くあります。
このような場合は、家庭裁判所の手続きを利用することで、支払いを受けられる可能性があります。
適切に婚姻費用や養育費を受け取るための主なポイントは、以下のとおりです。
- 「婚姻費用分担請求調停」を申し立てる
- 「養育費請求調停」を申し立てる
「婚姻費用分担請求調停」を申し立てる
別居中などで婚姻関係が継続しているにもかかわらず、相手が婚姻費用の支払いに応じない場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てます。
婚姻費用分担請求調停とは、夫婦の間に調停委員が入り、婚姻費用の金額や支払方法について話し合う手続きです。話し合いがまとまれば、その内容をまとめた調停調書が作成され、確定判決と同様の効力を持ちます。
一方、相手が調停に出席しない場合や、話し合いで合意に至らなかった場合は、自動的に審判へ移行し、裁判官が婚姻費用の金額などを決定します。
婚姻費用の支払いを拒否された場合の対処法について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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「養育費請求調停」を申し立てる
離婚後に相手が養育費の支払いを拒否した場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てることができます。
調停でも話し合いがまとまらない場合は、自動的に審判へ移行し、裁判所が養育費の支払額や支払方法を決定します。
すでに「調停調書」や「強制執行認諾文言付き公正証書」があるにもかかわらず、支払いが滞った場合は、裁判を起こさなくても、相手の給与や預貯金などを差し押さえる強制執行が可能です。
なお、合意書などの私的な合意文書でも、子供1人につき月8万円までの範囲で強制執行を行うことができます。
養育費が支払われない場合の対処法について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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成人後の大学生の扶養義務に関する判例
平成12年(ラ)第2337号 東京高等裁判所 平成12年12月5日 決定
事案の概要
両親の離婚後に私立大学へ進学した子供が、大学卒業までの授業料と月9万円の生活費の支払いを父親に求めた事案です。
子供は20歳を超えていましたが、学業を優先しており、奨学金の利用やアルバイトをしていませんでした。また、学費や生活費は母親が負担していました。
これに対し父親は、「子供はすでに成人しており健康であるため、自ら働いて生活できる」と主張し、扶養義務の有無が争いとなりました。
争点
本件の主な争点は、成人した大学生の子供が「未成熟子」に当たるのかという点です。
原審は、「成人した健康な者には働く能力があるため、要扶養状態にはない」と判断し、子供の請求を認めませんでした。
これに対し、抗告審では、成人した大学生であっても扶養の必要性が認められるのかが問題となりました。
裁判所の判断
東京高裁は、原審の判断を取り消し、「成人したという理由だけで直ちに未成熟子ではないとはいえない」と判示しました。 その理由として、大学進学率が高くなっている社会状況や、大学で高等教育を受けることが就職に大きく影響する実情を挙げています。また、大学生が学業を優先し、その結果として学費や生活費が不足することはやむを得ない場合があると指摘しました。 そのうえで、扶養の必要性は以下の事情を総合的に考慮して判断すべきであるとしました。
- 学費や生活費の不足額
- 不足するに至った経緯
- 奨学金を利用できる可能性
- アルバイト収入の有無や見込み
- 親の資力
- 親の大学進学に関する意向
- その他、学業継続に関する事情
扶養義務に関するよくある質問
- Q:
離婚後の子供の扶養義務は何歳までありますか?
- A:
離婚後の子供に対する扶養義務は、法律上「〇歳まで」と明確に定められているわけではありません。
もっとも、養育費の取り決めでは、20歳に達するまでを支払期間とするのが一般的です。2022年に成人年齢が18歳へ引き下げられましたが、家庭裁判所では、従来どおり20歳まで養育費の支払いを認めるケースが多くあります。また、子供の進学状況や家庭環境によっては、大学卒業の22歳までや18歳までとする場合もあり、比較的柔軟に取り決められます。
離婚後の養育費の支払期間について詳しくは、以下のページをご参考ください。
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- Q:
扶養義務の金額はどのように決まりますか?
- A:
扶養義務に基づく婚姻費用や養育費の金額は、家庭裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決めるケースが多いです。
算定表では、夫婦それぞれの年収や子供の人数・年齢などを基準に、おおよその金額が示されています。そのため、支払う側の収入が高い場合や扶養する子供が多い場合には、養育費や婚姻費用の金額も高くなる傾向があります。
当事者間の話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用し、双方の収入や生活状況などを踏まえて適切な金額を決めるのが基本です。
婚姻費用の目安を知りたい方は、以下の計算ツールをご活用ください。
婚姻費用計算シミュレーター養育費算定表や婚姻費用算定表について詳しくは、以下の各ページをご参考ください。
離婚後の扶養義務については弁護士法人ALGにご相談ください
離婚後の扶養義務は、夫婦と子供で法的な扱いが異なります。また、養育費がいつまで認められるのか、再婚や養子縁組によって支払い義務がどう変わるのかなど、個別の事情によって判断が変わるケースも少なくありません。
弁護士法人ALGでは、離婚問題を数多く取り扱ってきた弁護士が、婚姻費用や養育費の請求、調停・審判への対応など幅広くサポートします。相手が婚姻費用や養育費の支払いに応じない場合も、適切な対応を取ることが可能です。
「養育費を請求したい」「適正な金額が分からない」「相手が支払いに応じない」など、離婚後の扶養義務について不安や疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
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