熟年離婚したら元夫の遺族年金はもらえる?受給要件や手続きなど
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
熟年離婚後に元夫が亡くなったとき、「自分も遺族年金を受け取れるのか」と不安に感じる方は少なくありません。基本的に離婚した元妻は支給対象外ですが、子供がいる場合や離婚後も内縁関係が続いていた場合は、受給が認められるケースもあります。
この記事では、熟年離婚後に元夫の遺族年金をもらえるケースや、遺族年金の受給要件や手続きなどについて、詳しく解説します。
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熟年離婚した元妻は、基本的に元夫の遺族年金を受け取ることはできません。
遺族年金は、亡くなった人によって生計を維持されていた「配偶者」などに支給されるお金であり、婚姻関係が続いていることが前提だからです。離婚した時点で配偶者ではなくなるため、元妻の受給権は消滅します。
ただし、次のように例外的に受給が認められるケースもあります。
- 亡くなった元夫に扶養されていた子がいる
子自身に遺族年金の受給権が発生します。 - 離婚後も内縁(事実婚)状態が続いていた
元妻でも実質的な配偶者として扱われる可能性があります。
熟年離婚後の遺族年金は、元夫の年金加入状況や子供の有無、生計維持関係など複数の要素で判断されるため、制度を正しく理解することが重要です。
ここからは、遺族年金の種類や受給要件などをさらに詳しく解説します。
妻が受給できる2種類の遺族年金
妻が受け取れる遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
亡くなった夫の加入状況や生計維持関係によって受給できる内容が変わるため、まずはそれぞれの仕組みを押さえることが重要です。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金に加入している夫が亡くなった場合に支給される年金です。
【受給対象者】
- 子のある配偶者
- 子
対象となる「子」とは、18歳になった年度末までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級に該当する子を指します。
熟年離婚した元妻は「配偶者」ではないので、基本的に遺族基礎年金の受給資格はありません。
ただし、18歳未満の子供については、亡くなった父からの養育費の支払いなどが認められれば、子自身が遺族基礎年金を受給できる可能性があります。
※母親と生計を同じくしている場合は支給停止となることもあります。
離婚後でも、父からの支援や生活実態を証明できれば受給対象となるため、子の生活を支える重要な制度といえるでしょう。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた夫が亡くなった際、その生計を維持されていた家族に支給される年金です。 遺族基礎年金とは異なり、18歳未満の子供がいなくても妻であれば受給できる可能性があります。
受給の可否は、「亡くなった夫と生計維持関係があったか」が重要です。離婚後も実質的に内縁関係が続いていた場合は“元妻”が、養育費が支払われていた場合は“子供”が、例外的に支給対象となるケースもあります。
ただし、遺族厚生年金には受給の優先順位があるため、注意が必要です。
【受給対象者の優先順位】
- ①子のある配偶者
- ②子
- ③子のない配偶者
など
例えば、夫が再婚していれば現在の妻が最優先となるため、前妻は基本的に受給できません。
遺族年金の受給要件
遺族年金の受給要件を正しく理解しておくと、手続きの見通しが立ちやすく、申請の不安も軽くなります。ここからは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の主な受給要件について詳しく解説します。
遺族基礎年金の要件
遺族基礎年金は、亡くなった方が次のいずれかの要件を満たす場合に支給されます。
【受給要件】
- ① 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
- ② 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
- ③ 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
- ④ 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
【注意点】
●①②については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上であることが要件です。
※令和18年3月末日までに65歳未満で死亡したときは、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
●③④については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間、65歳以降の厚生年金保険の被保険者期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。
遺族厚生年金の要件
遺族厚生年金は、亡くなった方が次のいずれかの要件を満たす場合に支給されます。
【受給要件】
- ① 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
- ② 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
- ③ 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
- ④ 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
- ⑤ 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
【注意点】
● ①②については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。
※令和18年3月末日までに65歳未満で死亡したときは、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
● ④⑤については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間、65歳以降の厚生年金保険の被保険者期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。
遺族年金として元妻や子供が受給できる額の目安はいくら?
遺族年金の受給額は、亡くなった夫の年金加入状況や、子供の人数によって大きく変わります。
【遺族基礎年金】
遺族基礎年金の基本額は年間84万7300円です。ここに子供の人数に応じた加算額が上乗せされます。
- 第1子・第2子:各 24万3800円
- 第3子以降:各 8万1300円
例えば、子供が1人の場合は、年間で109万1100円、2人なら133万4900円が目安です。
【遺族厚生年金】
遺族厚生年金は、夫が受け取る予定だった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が基本となります。
夫の平均標準報酬額が20万~50万円、被保険者期間が25年の場合に受給できる遺族厚生年金の目安は次のとおりです。
| 平均標準報酬額 | 受給額 |
|---|---|
| 20万円 | 約25万円 |
| 30万円 | 約37万円 |
| 40万円 | 約49万円 |
| 50万円 | 約61万円 |
遺族基礎年金と遺族厚生年金は同時に受け取れるため、子供がいる家庭では合計額が年間150万〜250万円程度になるケースもあります。
熟年離婚後に遺族年金を受給するための手続き
遺族基礎年金受給の流れ
遺族基礎年金を受給するまでの主な流れは、次のとおりです。
- ①必要書類を揃える
- 年金請求書
- 戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票(世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要)
- 請求者の収入が確認できる書類
- 子の収入が確認できる書類(義務教育終了前は不要)
- 市区町村長に提出した死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義)
- ②書類を提出する
住所地の市区町村役所に書類を提出します。
※死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合、提出先は「年金事務所」または「街角の年金相談センター」になります。 - ③遺族基礎年金が入金される
審査には通常2〜3ヶ月ほどかかります。
年金は偶数月に前月・前々月分がまとめて支給されるため、初回の支給は通常より遅れることがあります。
遺族厚生年金受給の流れ
遺族厚生年金を受給するまでの主な流れは、次のとおりです。
- ①必要書類を揃える
- 年金請求書
- 戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票(世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要)
- 請求者の収入が確認できる書類
- 子の収入が確認できる書類(義務教育終了前は不要)
- 市区町村長に提出した死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義)
- ②書類を提出する
最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターに書類を提出します。 - ③遺族厚生年金が入金される
審査状況などによって前後しますが、おおむね2〜3ヶ月程度で結果が通知されます。年金は偶数月にまとめて支給されるため、初回の振込は通常より遅くなる場合があります。
熟年離婚における年金分割と遺族年金の違い
熟年離婚では、「年金分割」と「遺族年金」の違いをしっかり理解しておくことが大切です。
年金分割は、婚姻期間中に納めた厚生年金の納付記録を、離婚時に分け合う制度です。専業主婦や扶養内パートの方も、将来の年金として受け取れるため、離婚時は忘れずに手続きをしましょう。
一方、遺族年金は、夫(または妻)が亡くなった後、その人に生計を支えられていた遺族に支給される年金で、遺族の生活を守ることを目的としています。
制度の目的も条件もまったく異なるため、将来の生活設計を考える際は、それぞれの仕組みを正しく把握しておくと安心です。
熟年離婚に伴う遺族年金の扱いは複雑なため、弁護士へ相談するのが安心です
熟年離婚における遺族年金は、「離婚後に受け取れる場合」と「受け取れない場合」があり、判断が難しいのが実情です。生計維持関係の有無や子供の年齢、元配偶者の加入記録によって受給できるかが変わるため、制度を正しく理解しておかないと、本来受け取れるはずの年金を受け取れないおそれがあります。
弁護士法人ALGでは、熟年離婚や遺族年金に詳しい弁護士が、状況に合わせて必要な手続きや進め方を分かりやすくご案内します。複雑な制度を一つひとつ丁寧に整理し、将来の生活まで見据えたサポートが可能です。離婚後の不安を少しでも和らげるためにも、まずはお気軽にご相談ください。
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