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ハーグ条約とは? 日本が加盟して変わったことなどわかりやすく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員

近年、国際結婚の増加により、国際離婚も増えています。子供の両親が不和になり、どちらか一方の親が、勝手に子供を海外に連れ去ってしまう事件が起きるようになり問題視されています。
そこで、子供を保護するために、迅速な解決と連れ去りの抑止などを目的として定めた国際ルールが「ハーグ条約」です。

本記事では、ハーグ条約の内容やハーグ条約を日本が締結して変わったこと、ハーグ条約による子供の返還手続きなどをわかりやすく解説します。

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ハーグ条約とは

ハーグ条約の正式名は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」といい、以下について定めています。

  • 国境を超えた子供の不法な連れ去りや留め置かれるといった紛争への対応
  • 子供を元の居住国に返還する手続きや、国境を越えた親子の面会交を実現するための国と国との協力方法

近年、日本人と外国人の国際結婚が急増したことによって、国際離婚も増加し、一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく、子供を自分の母国へ連れ出して面会させないといった「子供の連れ去り」が問題になっています。

子供にとって生活基盤が急変し、一方の親の親族や友人との交流も断絶され、異なる言語文化環境へ適応しなくてはならなくなるなど、有害な影響を与えることから、子供を守るために上記のように定められました。

子供の返還請求が認められるには、定められた要件を満たす必要があります。一方で例外的に返還請求を拒否できる要件もあります。(後ほど、詳しく解説します)。

日本が加盟して変わったこと

日本がハーグ条約を締結していなかった以前は、日本から子供が連れ去られた場合、自力で子供の居場所を探して、外国の裁判所に子供の返還を訴えなければなりませんでした。そのほかにも里帰りのために日本人の親が子供と一緒に一時帰国したくても、「日本はハーグ条約締約国ではない」という理由で外国の裁判所から渡航許可が出ず、居住国から日本へ一時帰国することができないといった事態も生じていました。

しかし、2014年4月に日本がハーグ条約を締結したため、子供の返還を求めることができるようになりました。くわえて、面会交流するための各種支援についても受けられるようになりました。

ハーグ条約加盟国

ハーグ条約は、子供が元々住んでいた国と連れ去られた国それぞれがハーグ条約の締約国でないと効力がありません。

例えば、日本人とアメリカ人が国際結婚をして日本で結婚生活を送っている夫婦の一方が、母国であるアメリカに勝手に子供を連れ去った場合、日本とアメリカはどちらも締約国ですので、ハーグ条約を適用されて返還手続きを行うことが可能となります。
しかし、元々住んでいた国もしくは連れ去られた国のどちらかしか締結してない場合は、適用されません。

ハーグ条約の締約国は、日本を含めて現在103ヶ国となっています(※2023年1月時点)。締約国の一覧は、下記のページをご覧ください。

ハーグ条約実施法の改正

2019年5月に子供の返還の強制執行手続きの実効性を確保するため、ハーグ条約実施法が改正されて2020年4月より施行されました。
改正点は、下記表のとおり主に3点です。

改正前 改正後
間接強制の決定から2週間を経過した後に代替執行(執行官などが申立人(債務者)の代わりに子供の解放・返還を行うこと)が可能 一定条件のもとで間接強制を経ずに代替執行が可能
子供が連れ去った相手と一緒にいる場合に限って解放実施を行うことが可能 子が連れ去った相手と一緒にいなくても解放実施を行うことが可能
第三者の占有場所で代替執行を行う場合には、当該場所の占有者の同意が必要 執行の場所が子供の住居である場合には、裁判所の許可により、当該場所の占有者の同意がなくても、代替執行を行うことが可能

ハーグ条約による子供の返還の手続き

ハーグ条約による子供の返還手続きは具体的にどのような手続きを進めていくのか説明します。

まず日本もしくは子供が元々住んでいた締結国の中央当局に、子供への返還を実現するための援助申請(外国返還援助)をします。
または、中央当局による援助を経ないで、直接子供の返還を求める裁判所へ申し立てを行うこともできます。

重要なことは、裁判所への子供の返還手続きは、子供を返還するか否かを判断する手続きであって、どちらの親が子供の親権者や監護者となるかなどを判断する手続きではありませんので注意してください。

次項から中央当局による支援について、返還請求の要件、返還手続きの流れなどを詳しくみていきましょう。

中央当局による支援について (外務省)

外国へ子供を連れ去られて返還を求めるとき、または日本にいる子供を相手から返還を求められたときなどに中央当局から様々な支援を受けることができます。

ハーグ条約は、締約国に対して「中央当局」を設置することを義務づけており、日本では、中央当局を外務大臣として、具体的な実務を外務省領事局ハーグ条約室が担当しています。

中央当局の役割は大きく2つあり、

①子供の迅速な返還を確保するなど条約の目的を達成するため、ほかの締結国の中央当局と協力すること
②国内における権限のある当局の間の協力を促進すること
としています。

日本中央当局は中立的な立場からそれぞれの当事者に対して次のような様々な援助をしています。

  • 子供の返還や面会交流に関する申請の受付や相談
  • 子供の所在の特定
  • 当事者間の話し合いによる解決の促進
  • 翻訳支援(裁判所に提出する資料や申請書の翻訳など)
  • ハーグ条約に詳しい弁護士や法律扶助の紹介
  • 外国の中央当局との連携
    など

国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)についての連絡先です。

外務省領事局ハーグ条約室
住所:〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1
電話番号:03-5501-8466
受付時間:平日9時から17時(12時30分から13時30分を除く)
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html
E-mail:hagueconventionjapan@mofa.go.jp

返還請求の要件

子供の返還請求が認められるには、まず前提として、返還事由をすべて満たしている必要があります。日本で返還手続きをする場合(外国から日本に子供が連れ去られた場合)には、次の4つの返還事由が定められています。

  • ①子供が16歳未満であること
  • ②子供が日本国内に所在していること
  • ③連れ去った当事者の行為が、元いた国の法令での「監護権の侵害」にあたること
  • ④連れ去り・留置(期限付きで子供を外国に連れて行ったのに、期限を過ぎても子供を帰さないこと)の開始時に、元いた国がハーグ条約の加盟国であること

ハーグ条約による子の返還手続きの流れ

ハーグ条約に基づいた子供の返還手続きの主な流れを説明します。
具体例として、日本からハーグ条約締約国に子供を連れ去られた場合とします。

  1. ①元いた国(日本)の中央当局に、返還援助申請を行う
  2. ②申請書の受理・審査ののちに、援助決定
  3. ③子供が所在している締約国(連れ去り先の国)の中央当局に申請書類を送付して連携する
    ・子供の所在の特定
    ・任意の返還・問題の友好的解決の促進【裁判外紛争解決手続き(ADR)機関による当事者間での協議のあっせんなど】
  4. ④子供が所在している締約国の裁判所へ子供の返還を求める裁判を提起する
  5. ⑤子供の返還決定もしくは申立却下が命じられる
    (返還決定後、相手が子供の返還に応じなければ、強制執行の手続きも可能となります)

相手からの返還請求は拒否できるのか

ハーグ条約では、子供を元々暮らしていた国へ返還するのが原則とされていますが、次の6つのいずれかの返還拒否事由に該当する場合は、子供を返還するのは、子供の利益に反するため例外的に返還を拒否できます。

  • ①連れ去りや留置から1年を経過したあとに返還の申立てがされ、子供が新たな環境に適応している場合
  • ②申立人が連れ去りや留置開始時に子供の面倒をみていなかった場合
  • ③申立人が事前に連れ去りや留置に同意していた、または事後に承諾した場合
  • ④元々住んでいた国への返還によって、子供の心身に悪影響を及ぼしたり、子供が耐え難い状況に陥ったりする重大な危険がある場合
  • ⑤子供の年齢や発達の程度によって子供の意見を考慮するのが適当な場合、子供自身が返還を拒否している場合
  • ⑥子供を返還することが日本国における人権及び基本的自由の保護に関する基本原則より認められないものである場合

なお、④の「重大な危険」とは、具体的に次のような場合となります。

  • 子供が申立人から暴力を受けるおそれがある
  • 連れ去った親が申立人から子供が心の傷を負うようなDVなどを受けるおそれがある
  • 連れ去った親や申立人が返還先の国で子供を監護するのが難しい事情(例えば、申立人が薬物中毒やアルコール依存症などの場合や連れ去った親が返還先の国に戻ると逮捕されたり、滞在資格が得られなかったりした場合など)がある

ハーグ条約に関するQ&A

Q:

日本でハーグ条約が締結される前に、子供の連れ去りがあった場合はどうなりますか?

A:

2014年よりも前に子供の連れ去りがあった場合、ハーグ条約に基づいて子供の返還請求はできません。
自力で子供を探し外国の裁判所で子供の返還請求をしないといけません。
しかし、ハーグ条約に基づいて面会交流を実現するための援助を要請することは可能です。

Q:

日本人同士の夫婦が海外で生活していた場合はハーグ条約が適用されますか?

A:

日本人同士の夫婦が海外で生活していた場合でも、子供が連れ去られたとき、住んでいた国と連れ去られた先の国がハーグ条約に加盟していれば、ハーグ条約が適用されます。

Q:

配偶者に無断で子供を居住国から日本に連れて帰ることは、犯罪になりますか?

A:

犯罪になるかどうかは、元いた国(居住国)の法律によります。日本の場合、お互いに親権を持っている親の間であれば、相手の同意を得ずに子供を連れて行っても、必ずしも誘拐とはなりません。ですが、国によっては、たとえ親権を持っていても誘拐等の犯罪になってしまうこともありますし、ときに国際手配されることもあります。

Q:

DVや虐待を理由に子供を連れて帰った場合でも子供は返さなくてはいけませんか?

A:

相手が子供やご自身に対して、DVや虐待をしていた場合には、返還拒否事由のひとつである「元々住んでいた国への返還によって、子供の心身に悪影響を及ぼしたり、子供を耐え難い状況に陥ったりする重大な危険がある」に該当して、返還を拒否できる可能性があります。返還拒否事由であると認められるには、DVや虐待が行われていた事実を証明する証拠が必要となります。

仮に、相手によるDVや虐待の行為の事実が認められても、返還先の国によっては、DVや虐待から子供を保護する施設や制度などがある場合には、返還しても重大な危険は及ばないと判断されて、返還が認められる場合もあります。

ハーグ条約に関する裁判例

子供を元の居住国へ返還を認めた裁判例

東京家庭裁判所 平成27年3月2日判決

家族構成:夫(トルコ人)、妻(日本人)、子供A(2歳)

事案の概要

夫と妻はトルコの方式により婚姻して、夫婦と子供Aはトルコで共に生活をしていました。
婚姻から2年後、妻は子供Aとともに、トルコを出国して日本に入国し、現在まで日本国内において子供Aと同居していることから、夫は子供Aの返還を求めました。

裁判所の判断

妻は夫のDV・モラハラやアルコール依存症を主張しましたが、返還拒否事由である「子供が夫から身体に対する暴力などを受けるおそれ」や「妻が子供に心理的外傷を与えることとなる暴力などを受けるおそれ」は認めることはできないとしたうえ、アルコール依存症も認めることはできないとしました。

トルコの地方自治法によって、女性と子供が宿泊できるシェルターが設置されており、仮に、トルコに戻って夫から再びDVを受けても、保護されるための手段としてシェルターなどトルコの法制度を利用でき、子供の返還拒否事由は認めることはできないとして、子供Aをトルコに返還するように命じました。

子供を元の居住国へ返還を認めなかった裁判例

東京家庭裁判所 平成30年12月11日判決

家族構成:夫(スペイン人)、妻(日本人)、子供A(小学生:養子縁組済)、子供B(小学生)、子供C(幼稚園)

事案の概要

夫と妻は日本の方式により婚姻しました。妻の非摘出子であった子供Aも日本の方式に従い、養子縁組をしており、子供Bと子供Cは夫妻の実子です。

家族はスペインで生活を開始して、子供Aと子供Bはスペインの小学校に在籍していました。

婚姻から8年後、妻は子供3人とともにスペインを出国し、日本へ入国し、子供3人とともにそのまま日本国内に留まっており、夫は子供3人の返還を求めました。

裁判所の判断

子供の返還申立ては、「日本へ留置の開始から1年を経過したあとにされたものであり、子供らは日本での生活に適応している」として、返還拒否事由が認められるとして申立てを却下しました。

ハーグ条約に関する様々なご相談は、子に関する問題の経験豊富な弁護士にお任せください。

外国に連れ去られてしまった子供を返還してもらうためには、ハーグ条約についてよく知り、適切に手続きを進めていくことが大切です。しかし、国と国との間で生じるとても複雑な問題ですので、おひとりだけですべて対応することは非常に難しいでしょう。

子供を取り戻したいとお悩みのときは、弁護士の力を借りることをおすすめします。弁護士なら、どのような手続きをとれば良いのか、そもそもハーグ条約は適用されるのか等、適切に判断してアドバイスすることができます。また、必要な手続きをサポートすることも可能です。

ハーグ条約に関して不明点やお困りのことがある方は、子に関する問題を数多く解決してきた経験豊富な弁護士にご相談ください。

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保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

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