婚姻関係の破綻とは?7つのケースや証明のポイントなど

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
婚姻関係の破綻は、民法が定める法定離婚事由の一つで、「夫婦に婚姻関係を継続する意思がなく、夫婦としての共同生活が維持できない状態」を指します。
裁判で離婚を成立させるには、必ず法定離婚事由が必要です。そのため、配偶者に対して離婚や慰謝料を請求する際には、請求と同時に法定離婚事由の証明も行う必要があります。しかし、どのように証明すればよいのか迷われる方がほとんどでしょう。
そこで本記事では、「婚姻関係の破綻」に着目し、婚姻関係の破綻が認められる7つのケースや証明する際のポイントなどについて、詳しく解説していきます。
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婚姻関係の破綻の定義とは
婚姻関係の破綻は、民法が定める5つの法定離婚事由のうち、以下に該当します。
【民法770条1項5号】
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
また、「婚姻関係の破綻」とは、具体的に次のような状態を意味します。
- 夫婦に婚姻継続の意思がない状態
- 夫婦生活を共同で行える見込みがない状態
そのため、同居していても一緒に協力して暮らす意思がそれぞれになく、かつ将来的に改善の見込みもない夫婦は、婚姻関係が破綻していると考えられます。婚姻関係の破綻が証明できれば、裁判所に対して離婚裁判の提起が可能です。しかし、裁判で離婚を成立させるには、婚姻関係の破綻を証明する必要があります。
次項で、婚姻関係の破綻が認められる7つのケースを詳しくみていきましょう。
婚姻関係の破綻が認められる7つのケース
婚姻関係の破綻が認められるケースは、次の7つです。
- ① 長期間の別居
- ② 家庭の放置
- ③ DV・モラハラ
- ④ 飲酒癖・浪費癖・不就労
- ⑤ 親族との不仲
- ⑥ 性格・性生活の不一致
- ⑦ 犯罪行為・服役
では、それぞれのケースについて、詳しく解説していきます。
配偶者に認められるケースがある場合は、自分の状況と照らし合わせながらご参考になさってください。
①長期間の別居
夫婦には、「同居義務」があります。別居が続いている夫婦はこの義務を守れていないため、婚姻関係が破綻していると認められやすいでしょう。
裁判で「婚姻関係が破綻している」と認められる別居期間は3~5年ほどです。5年以上別居が続いていれば、長期間の別居と判断され、より婚姻関係の破綻が認められやすくなるでしょう。
一方で、家庭内別居は物理的な別居状態にないため、別居状態であることの立証が難しく、裁判で別居が認定されるハードルは高いのが現実です。それでも、炊事洗濯といった家事や生活費の分担が一切ない、夫婦間の交流・会話が一切ない、性交渉が長期間ない、離婚の協議を行っていたなどの事情が立証できる場合には、婚姻関係が破綻していると判断される可能性もあります。
②家庭の放置
家庭の放置は、夫婦のどちらか一方が自分の趣味や仕事に没頭してしまい、家庭を疎かにする状態を指します。民法第752条では、「夫婦は同居し、互いに協力して扶助しなければならない」と定められており、夫婦となった時点で同居・協力・扶助義務をお互いに負います。
しかし、配偶者が趣味に没頭して長期間家にいないなどとなれば、それは夫婦として同居し、協力し、扶助していないと捉えられるでしょう。宗教活動にのめり込んでしまい、家庭を疎かにする状態も同様です。
このような、同居・協力・扶助義務を果たしていない状態は、「民法が定める義務に違反し、家庭を放置している」として婚姻関係の破綻が認められます。
なお、裁判では、配偶者が果たすべき義務を著しく怠っている点を主張・立証していきます。
③DV・モラハラ
夫婦には、お互いに助け合って生活する義務があります。配偶者や子供に対する身体的・精神的暴力はこの義務に違反しているため、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高まります。
DVやモラハラで婚姻関係が破綻していると認められるには、証拠が必要です。
特に以下のものは有効な証拠となるでしょう。
- DVやモラハラの音声・映像
- DVによって負った怪我の診断書
- モラハラがあることの分かるメール
- DVやモラハラの内容を記載したメモや日記
④飲酒癖・浪費癖・不就労
健康上問題がないのに働かず、家に生活費を入れなければ、夫婦間の協力・扶助の義務を果たす姿勢が著しく欠けているとみなされます。
また、飲酒癖や浪費癖があり、それが原因で家庭内にトラブルを持ち込むことも、婚姻関係の維持に必要な協力・扶助の義務を違反しているとして、内容によっては婚姻関係が破綻しているとみなされる可能性があります。
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④親族との不仲
配偶者の両親や親族との関係が悪化したことで、夫婦関係が悪化するケースもあります。
- 親族からのDV、モラハラ
- 親族との仲が不仲であるのに配偶者が見て見ぬふりをする
- 配偶者に何度も相談したのに反対に親族の味方をする
- 親族と別居すれば関係改善が見込めるのに配偶者が別居について認めてくれない
- 親族への対応で夫婦が別居状態となった
このように配偶者が親族との不和解消に向けて適切な対応を取らず、関係悪化を招くような行動に出たために婚姻関係が破綻する場合があります。
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⑤性格・性生活の不一致
夫婦の性格や性生活が合わなければ、婚姻関係の破綻につながることもあるでしょう。
夫婦がお互いに歩み寄って改善できれば良いのですが、お互いが身勝手な理由から歩み寄らなければ、それは夫婦として協力できていないのかもしれません。
⑦犯罪行為・服役
配偶者が何らかの犯罪行為で逮捕され服役すると、もう一方の配偶者に社会的影響が及びます。配偶者の犯罪行為が報道され、ネット上でも確認できるようになれば、加害者家族として大きな影響を受ける可能性が高いです。その影響力は、生活を経済的・社会的窮地に陥らせるほど大きく、回避も難しいと考えられます。
もっとも、裁判では、配偶者の犯罪行為やその態様、婚姻生活への影響などのさまざまな事情が考慮され、総合的に判断されます。そのため、配偶者の犯罪行為自体がそのまま離婚を成立させる事由にはならない点に注意しなければなりません。あくまで、配偶者の犯罪行為や服役がきっかけとなり、婚姻関係の破綻が認められる場合に限られます。
婚姻関係の破綻を証明するポイント
裁判では、「婚姻関係が破綻している」と客観的にみてわかる証拠が必要です。
実際にどのような証拠が有効であるか、破綻理由の状況ごとに下表で見ていきましょう。
原因等 | 立証方法 |
---|---|
離婚に関する話し合い | 夫婦での離婚協議の録音 |
長期間の別居 | いつから別居していてどのくらい別居しているのかわかる資料 ・住民票 ・別居先の賃貸契約書 |
DV | ・暴力を振るわれた時の写真 ・暴力によって負った怪我の診断書 |
モラハラ | ・モラハラを受けているときの映像や音声記録 ・モラハラがあると分かるメールのやり取り |
性格・性生活の不一致 | ・性行為を拒否する内容のメールや会話の音声記録 ・性格の不一致で起こるトラブルの内容を記載したメモや日記 |
しかしながら、確実な証拠を集めることはそう簡単なものではありません。なかなか証拠がつかめない場合は、あきらめずに一度弁護士に相談してみましょう。ご自身のお悩みに合った証拠の集め方をアドバイスしてもらえます。
婚姻関係が破綻していないとみなされる証拠とは?
婚姻関係の破綻を理由に離婚を請求しても、相手方から婚姻関係が破綻していないという証拠を出されると、離婚が認められない可能性もあります。
婚姻関係が破綻していないという証拠には、以下のようなものが挙げられます。
- 住民票など夫婦が同居していることが分かるもの
- 別居期間中、頻繁に会ったり、旅行に行ったりしていることが分かるメールのやり取りなど
このように、夫婦が同居していたり、別居していても頻繁に交流していたりする場合は客観的に見て「婚姻関係が破綻している」とは判断しにくくなります。
婚姻関係破綻後の不貞行為は慰謝料請求できない?
配偶者が不貞行為をする前から既に婚姻関係が破綻していた場合、不貞慰謝料の請求は難しいです。
不貞行為(浮気)とは、婚姻関係にあるものが配偶者以外の人と自由意思に基づき性的関係を結ぶ行為をいいます。配偶者が不貞行為をした場合は、「夫婦の円満で平穏な生活を送る権利」を侵害したとして、“不貞をした配偶者”と“その不貞相手”に慰謝料を請求できます。
しかし、不貞行為前から夫婦関係が破綻している場合は、不貞行為が原因とは言い切れないため、配偶者と不貞相手に対する慰謝料請求が難しくなります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
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婚姻関係の破綻が認められない場合の離婚方法
婚姻関係の破綻が認められない場合は、裁判以外で離婚を成立させる必要があります。
なぜなら、裁判では法定離婚事由が必須であるため、婚姻関係の破綻以外に証明できる事由がなければ、高確率で離婚が認められないからです。
法定離婚事由の証明が困難な場合には、次項の手段を用いて離婚の成立を目指すことが大切です。
手段を次項で詳しく解説していきます。
①離婚について話し合う
まずは、夫婦で離婚について話し合う「協議離婚」で離婚の成立を目指します。
協議離婚は、夫婦双方の合意があれば離婚の理由は何でもよく、「性格の不一致」「一緒にいるのが苦痛」「他に好きな人ができた」などの理由でも離婚が成立します。
ただし、夫婦のどちらか一方が離婚を拒否すれば、不成立となり、離婚は成立しません。そのため、離婚の同意を得るために配偶者へ働きかけたり、離婚を拒む理由を確認して解決方法を探したりなどして、離婚を拒否する配偶者を説得する必要があります。
なお、協議離婚が成立した場合は、取り決めた離婚条件の内容を書面化・公正証書化しておくと、トラブル防止につながります。
②別居する
配偶者が離婚に合意しない場合は、別居するのも一つの手段です。別居期間が長期に渡れば、「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められ、離婚が成立しやすくなります。一般的には、3~5年以上の別居が長期間の別居として認められています。
別居を実行する際は、必ず配偶者から同意を得ましょう。配偶者に黙って家を出ると、法定離婚事由の一つである「悪意の遺棄」に該当し、有責配偶者となってしまうおそれがあります。有責配偶者からの離婚請求は基本的に認められないため、離婚の成立が遠のいてしまいます。
③調停離婚を申し立てる
もう一つの方法として「離婚調停」があります。
離婚調停は、家庭裁判所の調停委員を交えて離婚の話し合いを進める方法です。
調停においては、調停委員が個別で意見を聴取するため、夫婦で顔を合わせずに離婚に向けた話し合いができます。そのため、夫婦で直接話し合う協議離婚よりも感情的になりにくく、冷静な話し合いができ、円滑に解決するケースが多いです。
離婚の手続きや離婚調停については、以下のページで詳しく解説しています。
ぜひご参考になさってください。
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④弁護士に相談する
「離婚に向けた話し合いが進まない」「調停を申し立てたい」際に弁護士に相談すると、次のようなメリットを得られます。
- 法的な観点から有利となるアドバイスをもらえる
- 相手との交渉を任せられる
- 離婚調停の手続きを任せられる
- 話し合いの際に有効となる証拠の収集をしてもらえる など
協議離婚や離婚調停は、弁護士に頼らずとも自分の力である程度進められます。しかし、弁護士の力があれば、より負担を少なくでき、有利な条件で離婚の成立を目指せます。不安や疑問点が出てきた際にいつでも弁護士に相談できる状態は、精神的負担の軽減に大きくつながります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
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離婚裁判で婚姻関係の破綻が認められるかどうか不安な場合は弁護士にご相談ください
婚姻関係の破綻を理由に離婚したくても、「裁判で離婚が認められるのか」「裁判の手続きはどんなものなのか」等、不安を抱かれる方は多くいらっしゃるでしょう。裁判では、法定離婚事由がなければ離婚が認められないため、法定離婚事由の証明に苦戦される方は少なくありません。特に「婚姻を継続し難い重大な事由」は範囲が広く、該当するかどうかを一般の方が適切に判断するのは難しいです。
そのため、婚姻関係の破綻を適切に証明したい場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、ご相談者様のお話を丁寧にヒアリングし、最善の解決策を一緒に考えられます。
離婚のお悩みは、考えている時間が長くなればなるほど精神的負担も増していきます。
お一人で悩まれずに、まずは私たちに一度ご相談ください。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)