離婚調停中にやってはいけないこととは?有利に進めるためのポイントも解説
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
夫婦間での話し合いで離婚について折り合いがつかなければ、次の方法として家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、裁判官や調停委員を交えて話し合いで解決を目指す手続きを考えることになります。
離婚調停では、有利な結果を得るために、やってはいけないことがあります。
はじめて経験する離婚調停において、何がやってはいけないことなのかわからない方も多くいらっしゃるかと思いますが、離婚調停に臨む限り、しっかり把握しておくことが得策です。
そこで本記事では・・・
・離婚調停中にやってはいけないこととは?
・有利に進めるためのポイント
などに焦点をあてて、離婚調停中の方、離婚調停の申立てを検討している方に役立つように詳しく解説していきます。
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離婚調停中にやってはいけない8つのこととは?
離婚調停中にやってはいけないこととして、主に次のようなものが挙げられます。
- ① 配偶者以外の異性と交際する
- ② 不利になる発言をする
- ③ 相手方に直接連絡する
- ④ 相手方に嫌がらせをする
- ⑤ 離婚調停を欠席する
- ⑥ 一方的に別居を始める
- ⑦ 子供を連れ去る
- ⑧ 勝手に財産を処分する
次項よりそれぞれ詳しく確認していきましょう。
配偶者以外の異性と交際する
離婚調停中とはいえ、戸籍上は夫婦関係にあります。
まだ同居している、相手が離婚を拒否しているといった状況で配偶者以外の異性と交際すると、夫婦間にある貞操義務に違反する行為である「不貞行為」と判断される可能性があります。
不貞行為をした者は、離婚原因を作った責任のある配偶者をいう「有責配偶者」となります。
基本的に有責配偶者からの離婚請求は認められません。
さらに、相手から不貞行為により精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求される可能性もあります。
したがって、離婚調停中に配偶者以外の異性と交際することは控えるべきです。
ただし、交際が開始した時点ですでに長期間の別居をしている、夫婦双方が離婚に同意しており離婚条件について揉めているなどの状況で「すでに婚姻関係が破綻している」とみなされる場合は、「不貞行為」と判断されない可能性があります。
離婚調停中の浮気について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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不利になる発言をする
離婚調停で調停委員に悪い印象を持たれてしまうのは望ましくありません。
そのため次のような発言は控えるように心掛けましょう。
- 相手の批判や悪口を過剰にいう発言
- 調停委員が理解できないような曖昧な発言
- 過去の言動と矛盾する発言
- 自分自身の都合ばかりを強調する発言
- 希望条件を一切譲歩しないとする発言
- 希望条件と大きな相違があるのに安易に譲歩するような発言
- 調停委員からの質問に対して答えになっていない発言
- 「配偶者と直接話し合う」という発言 など
離婚調停での不利な発言については、下記ページで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
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相手方に直接連絡する
離婚調停中は調停委員を仲介して話し合うのが基本的なルールです。
離婚に関係のない事務的な連絡であれば問題ありませんし、相手方が離婚調停と並行して当事者同士でも協議することに同意している場合は問題ないでしょうが、そうでない場合に相手方と直接協議しようとすることは、調停委員に「ルールが守れない人だ」、「自己中心的な考えの人だ」といったマイナスの印象を与えて不利になる可能性があります。
むしろ、夫婦間での話し合いが困難なために離婚調停を利用しているので、相手と直接交渉したところで話し合いが進むとは考えられず、さらにトラブルが発生するおそれもありますので、直接の連絡は控えるべきです。
相手方に嫌がらせをする
相手に電話やメールなどで脅迫するような発言をすれば、脅迫罪が成立し得ます。
また復縁を求めたり調停を取り下げるように迫ったりすると、強要罪が成立し得ます。
さらに、つきまといや待ち伏せをしたり、執拗に連絡したりすると、ストーカー規制法に基づいて警察から警告されたり、都道府県公安委員会から禁止命令が発令されたり、裁判所からDV防止法に基づく接近禁止命令が発令される可能性もあります。
いずれにせよ、相手方に嫌がらせをすれば、ご自身の調停委員への心証も悪くなり、不利な状況になり得ますので、嫌がらせ行為は絶対にやってはいけません。
離婚調停を欠席する
離婚調停を欠席し続けたり、無断欠席したりすると調停委員に「だらしない人だ」、「非常識な人だ」といった著しく悪いイメージを与えてしまいます。
また離婚調停を正当な理由もなく欠席すると、5万円以下の過料を課せられる可能性もあります。
離婚調停は、あくまでも裁判官や調停委員を介して話し合いで解決を目指す手続きですので、当事者の一方が欠席すれば話し合いができません。
そして、欠席によって話し合うことができなければ、合意が成立する見込みがないと判断され、調停不成立となって調停が終了することになります。
やむを得ない事情があってどうしても離婚調停に出席できない場合は、事前に裁判所に連絡をするようにしましょう。
離婚調停の欠席について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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一方的に別居を始める
夫婦には同居義務があり、正当な理由もなく一方的に別居をした場合は、同居義務違反となる可能性があります。
場合によっては、「夫婦の協力・扶助の義務を怠った」として、裁判上で認められる離婚事由である「悪意の遺棄」とみなされるおそれもあります。
悪意の遺棄をしたとみなされると、離婚原因を作った責任のある配偶者をいう「有責配偶者」となります。
基本的に有責配偶者からの離婚請求は認められません。
さらに、相手から精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求されるおそれもあります。
したがって、相手からのDV・モラハラなどがあって身の危険を感じて別居するといった正当な理由がある場合を除いて、別居する際は可能な限り相手の同意を得て別居するようにしましょう。
離婚する際の別居について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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子供を連れ去る
離婚調停のなかで親権をはじめ、養育費、面会交流など子供に関する問題で揉めるケースがよくあります。
揉めている最中に、子供が通う学校で待ち伏せしたり、面会交流を実施中にそのまま返さなかったりして子供を連れ去るケースが見受けられます。
子供を連れ去るという実力行使をすると、調停委員に「親権者としてふさわしくない」と悪印象をもたれ、離婚調停において不利になるおそれがあります。
また、実親による子供の連れ去りであっても未成年者略取・誘拐罪に問われる可能性もあります。
離婚する際の子供の連れ去りについて、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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勝手に財産を処分する
別居後、特有財産性が問題になっている財産、相手方名義の財産、相手方が現物取得を希望している共有財産を勝手に処分してはいけません。夫婦のどちらか一方の名義の財産であっても、婚姻中に夫婦の協力によって形成・維持した財産であれば夫婦の共有財産となって財産分与の対象となります。
別居開始時の夫婦の共有財産が財産分与の対象となるため、別居後に財産を勝手に処分して財産分与を減らそうとしても有利になりません。
よって、離婚調停中に勝手に財産を処分する行為は、余計なトラブルを引き起こし、離婚調停が長期化する原因となるだけですので、行ってはいけません。
離婚する際の財産分与について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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離婚調停を有利に進めるためのポイント
離婚調停中にやってはいけないことを把握して理解しておけば、離婚調停は円滑に進められるでしょう。
加えて、離婚調停を有利に進めるためのポイントもあります。
次項で詳しく解説していきます。
調停委員を味方につける
離婚調停は、基本的に調停委員が当事者それぞれから交互に話を聞くかたちで進みます。
よって、調停委員を味方につけるのが、離婚調停を有利に進めるためのポイントといえるでしょう。
調停委員を味方につけるために主に次のような点に気を付けておくべきです。
- 身なりや言葉づかいに気を付ける
表面的な部分で与える印象も大事です。ボロボロの服装を着ていたり、乱暴な話し方をすると悪い先入観をもたれて損をする可能性があります。
男性ならスーツにネクタイ、女性ならビジネススーツとまではいいませんがきれい目の服を着ていくと好印象となります。 - 感情的にならない
突然泣き出したり、興奮したりしてしまうと、調停の進行に支障が出てしまい、調停委員の心証が悪くなるかもしれません。感情論ではなく、冷静に事実を話すほうが、説得力のある主張ができます。 - できるだけ証拠を提出する
証拠に基づく主張であれば、調停委員も納得しやすく、調停委員が相手を説得してくれることも期待できます。
調停委員について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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調停で聞かれることを把握しておく
離婚調停であらかじめ何を聞かれるか把握して、答えを準備しておくとご自身の言いたいことが調停委員に伝わりやすくなります。 調停で聞かれることは調停を申し立てた側と申し立てられた側で異なり、それぞれ次のような内容をよく聞かれます。【離婚調停を申し立てた側である“申立人”が聞かれること】
- 結婚した経緯
- 離婚を決意した理由
- 現在の夫婦生活の状況
- 子供に関すること
- 希望する離婚条件
- 離婚後の生活 など
【離婚調停を申し立てられた側である“相手方”が聞かれること】
- 離婚に同意するかどうか
- 申立人が主張する離婚理由に関する意見
- 希望する離婚条件(離婚に同意する場合) など
離婚調停で聞かれることに関して、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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陳述書を作成・提出する
陳述書とは、自分の考えや離婚調停に至った経緯、言い分などをまとめた文書をいいます。
陳述書は必ずしも離婚調停時に提出しなければならないものではありません。
しかし、陳述書を事前に家庭裁判所に提出して裁判官や調停委員に内容を確認してもらうことで、限られた調停期日の時間においてスムーズに話し合いが進められる効果があります。
また、口頭より書面にまとめておくことで、より明確に夫婦関係の実情や言い分を理解してもらえる利点があります。
離婚調停の際に作成・提出する陳述書については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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具体的なエピソードや証拠を提示する
抽象的な内容の発言だけでは、説得力が乏しくなりますので、調停時に具体的なエピソードや証拠を提示すると、より調停委員にご自身の言い分が明確に伝わります。
例えば、「相手が酔っぱらって帰ってきたときに、いきなり叩き起こされて頬を殴られ、腰を蹴られた」、「相手が仕事から帰宅した際にまだ晩御飯ができていなかったときに、“だからお前は無能なんだ、誰のおかげで飯が食えていると思ってるんだ”と罵倒されて頭を殴られた」などDVやモラハラを受けたときの具体的なエピソードを伝えたほうが説得力は増します。
そのほかにも、相手の不貞行為(不倫・浮気)を理由に離婚したい場合は、相手が不倫相手とラブホテルに出入りしているときの写真や探偵事務所の調査報告書など相手の不貞行為を立証できる客観的な証拠を示すと調停委員に自分の主張を理解してもらいやすくなります。
離婚調停する際は、法的に有効な証拠を集めるほか、状況証拠の収集や事実調査なども行っておくとより有利に進められる可能性が高まります。
譲歩できる部分・できない部分を決めておく
離婚調停はあくまでも話し合いで離婚の成立を目指す手続きですので、ご自身の言い分だけが全面的に通って調停が成立することはまずありえないと考えておくべきです。
調停を成立させるためには、離婚条件について譲歩できる部分、できない部分を決めておくことが大切です。
例えば、「子供の親権は譲れないけれども面会交流は柔軟に応じる」、「慰謝料を求めない代わりに財産分与は公平に分配したい」などです。
離婚裁判に進めば、一切の事情を考慮して家庭裁判所が離婚に関しての判断を下します。よって、離婚裁判に進んだときのことを見据えて、離婚調停のうちに譲歩できる部分・できない部分を整理しておくと離婚調停が円滑に進みます。
離婚調停を弁護士に依頼するメリット
離婚調停を行う際は弁護士に依頼して進めることをお勧めします。
弁護士に依頼することには、次のようなメリットがあると考えられます。
- 代理人として弁護士が調停に出席し、法的な観点から主張・立証ができるので有利に調停を進められる可能性が高まる
- 書面の作成、提出、裁判所とのやりとりなど頓わしい手続きを弁護士が代わりに行ってくれ、時間や労力が軽減できる
- 離婚条件で不利な内容や漏れがあるのに合意してしまうといった取り返しのつかない失敗を未然に防ぐことができる
- 有効な証拠の収集についてアドバイスしてくれる
離婚調停で弁護士が粘り強く交渉した結果、公平な条件で離婚が成立した事例
事案の概要
夫婦双方に有責事由がない、別居期間2年程度の夫婦間において、相手方から婚姻費用分担調停を申し立てられ、ご相談に来られました。
弁護士方針・弁護士対応
相手方が婚姻費用分担調停を申し立てきたのに対して、当方は離婚調停を申し立てました。
相手方は、離婚する意思がないとしてのらりくらりと曖昧な主張を繰り返し、離婚に応じようとしませんでした。
しかし、離婚訴訟に至った場合、弁護士費用や長期化による婚姻費用の支払いがさらなる負担になるため、調停で離婚条件を具体的に示しながら粘り強く話し合う方針をとりました。
結果
粘り強く話し合った結果、慰謝料なし、相手方に自宅を財産分与する代わりに相手からが当方依頼者に代償金を支払うという公平な内容で離婚調停が成立しました。
婚姻費用を支払う側は、婚姻費用の支払いが負担になって離婚条件を譲歩せざるを得ないことがありますが本件は公平な内容で無事に解決できました。
また特に離婚裁判にしなければならない争点もなかったことから、調停での解決が適切であったといえる事案です。
離婚調停に関するQ&A
- Q:
離婚調停中に異性と連絡を取ったり、会ったりすると不利になりますか?
- A:
離婚調停中に異性と連絡を取ったり、会ったりするだけでは、裁判上で離婚が認められる事由(法定離婚事由)のひとつである「不貞行為」にはなりませんので、直ちに調停で不利になるわけではありません。
不貞行為と判断されて調停が不利になるのは、婚姻期間中(離婚調停中を含む)に夫婦間にある貞操義務に反して配偶者以外の者と肉体関係を伴う交際をしている場合です。ただし、すでに婚姻関係が破綻している状態での肉体関係を伴う交際は不貞行為となりません。
そのため、異性と連絡を取ったり、会ったりするだけでは不貞行為とはなりませんが、態様によっては交際や肉体関係が推認されてしまうおそれがあります。そのような場合、不貞行為を疑われて調停が長期化する可能性がありますので、極力紛らわしい行動は控えておくほうがいいでしょう。
- Q:
離婚調停が自分に不利な流れで進んでいる場合、申し立てを取り下げてもいいですか?
- A:
離婚調停を申し立てた側であれば、離婚調停が自分に不利な流れで進んでいる場合、申立てを取り下げても構いません。
離婚調停を取り下げる理由や相手の同意は不要で、どのタイミングで取り下げても問題ありません。
一旦、離婚調停を取り下げて、有効な証拠を準備したり、相手の主張に対してどのように反論するべきか戦略を練ってから改めて離婚調停を申し立てることもできます。なお、離婚調停を申し立てられた側は、離婚調停が自分に不利な流れで進んでいても申立てを取り下げることはできません。
離婚調停の取り下げについて、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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- Q:
離婚調停中に不適切な対応をとってしまうと、その後の離婚裁判にも影響しますか?
- A:
離婚調停中に不適切な対応をとってしまった場合に、その後の離婚裁判に影響する可能性はあります。
基本的に離婚調停と離婚裁判は別個独自の手続きとなります。
離婚調停で提出された主張書面や証拠は、当然には離婚裁判に引き継がれません。
調停不成立後に、別途離婚裁判を提起して、書面や証拠も改めて提出することになります。そのため、かならず影響するわけではありません。ただし、裁判所によっては、調停手続きと裁判手続きを担当する裁判官が同じケースもあります。
また、離婚調停時に不適切な対応をとった事実を離婚裁判の際に相手から証拠として提出される可能性はあります。
したがって、離婚裁判で必ずしも影響するとは断言できませんが、影響する可能性は充分にあるといえます。
離婚調停中の対応で不安なことがあれば弁護士にご相談下さい
離婚調停は、初めて経験する方が大半だと思います。
夫婦間での話し合いで解決できずに離婚調停を利用している状況ですから、感情が高ぶり、冷静になれず不利な発言をしたり、主張をうまく理解してもらえなかったりして、調停委員の心証が悪くなって不利な状況に陥ることもあり得ます。
離婚調停を失敗せずに進めるためにも、離婚調停中の対応で不安なことがある場合は、弁護士にご相談ください。
弁護士に相談・依頼すれば、事前にやってはいけないことを伝えたうえで、一緒に調停に出席して有利に調停を進められるようにサポートいたします。
弁護士法人ALGでは、離婚問題を多数解決してきた実績があります。
ぜひとも、後悔のない離婚調停を進めるためにも、まずは弁護士法人ALGにお問合せください。
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- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)