離婚時に父親が親権を取るためのポイント

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
「イクメン」という言葉が広く浸透していたり、テレビで育休を取得する男性が取り上げられていたりと、子育てに積極的な父親というのは、今や珍しくない時代です。
そのため、離婚することになったときには、子供の親権を得たいと考える男性もいらっしゃるでしょう。しかしながら実態は、調停や審判において親権者を取り決めたケースのうち、約9割は母親が親権者となっています(※2019年時点)。このような現状から、父親の親権獲得は難しいと言わざるを得ません。とはいえ、父親が親権者となる可能性はゼロではありません。
父親が親権を取りづらいのはなぜなのか、父親が親権を獲得するためのポイントは何なのか、本ページで確認していきましょう。
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父親が親権を取りにくい理由
父親が親権を取りにくい理由として、「フルタイムで働いているため子供と過ごす時間が少ない」ことが挙げられます。
また、昔から、子供が幼ければ幼いほど「母性優先の原則」が有利にはたらくといわれており、父親が親権を取りづらい背景には、この点も影響しています。
以降、これらの理由を掘り下げていきましょう。
フルタイムで働いているため子供の世話が難しい
父親は、母親に比べて、子供と接する時間が少なくなってしまうことが、「継続性の原則」の観点からみて、親権を得られない大きな理由の一つとなっています。
共働き夫婦が増えているとはいえ、メインとなって働いているのは父親である家庭が多いのが実情です。父親はフルタイムの仕事をしているため、専業主婦やパート、時短勤務などで働く母親に比べて、会社に拘束されている時間が長く、子供の世話をする時間が十分に取れなくなってしまうことが多いです。働き盛りには、残業や出張、転勤なども重なることから、子供との時間を設けるのがより一層難しくなりがちでしょう。
今まで問題なく過ごしていたのであれば、父親に親権が渡った途端、子供をとりまく状況・環境がガラッと変わってしまうことが予想されます。これは、現状に問題ないのであれば、急激に環境を変えるのは望ましくないとする「継続性の原則」という裁判所の判断要素に反することとなります。
一般的に親権は母親が優先
子供の年齢が幼ければ幼いほど、母親を親権者とすることが子供のしあわせにつながるという「母性優先の原則」と呼ばれる考え方があります。共働きや父親の育児休暇制度など、子育てに対する父母の役割分担意識に変化がある現在においてもなお、この考え方が色濃く残っていることもまた実情です。
父親が親権を獲得するためのポイント

父親が親権を獲得するために最も重要なことは、子供の立場で「子供のしあわせ」を考えて実現できるか、追求できるかという点です。子供にとってより有益とされる方が親権者となりますが、そう判断されるには、以下のようなポイントがあります。
これまでの育児に対する姿勢
「これまでどれだけ育児に携わってきたか」という点は、重要な判断要素の一つです。育児において「当たり前のこと」を具体化できるかどうかがポイントとなります。
例えば、どんなに疲れていても子供と一緒に入浴するようにしていた、学校・習い事などのイベントには積極的に参加していた、塾の送迎を行っていた、母親が育児に専念できるよう食器洗いや掃除といった他の家事を行うことで積極的にサポートしていたなどです。
これらを証明できるように、普段の生活を振り返ってメモしてみたり、日付とともに写真を掘り起こしたり、子供や知人、親族などに証言を得たりすることから始めてみましょう。
なお、すでに別居している場合でも、面会交流への積極的な姿勢は、「育児に携わりたい」という意思表示にもなります。面会交流の日付、時間、内容、回数などを記録しておくことをおすすめします。
離婚後、子育てに十分な時間が取れること
離婚後、子育てに十分な時間が取れるかどうかという点も非常に重要です。残業や休日出勤を控えたり、不在時は祖父母に子供の面倒をみてもらったりするなど、周囲の協力を得ながら対応できる体制を整える必要があります。子供優先のライフスタイルを確立できるようにしましょう。
子供の生活環境を維持できるか
子供が安心して過ごせる生活環境を、確保・維持することも重要視されます。
子供は、ただでさえ母親がいなくなったことにより不安に陥ってしまうことが考えられます。加えて引越しや転校等により生活環境が一変してしまうのは、子供にとっては決して良いことであるとはいえません。
引越し先は治安の良い地域にしたり、気軽に周りのサポートを得られるようにしたりして、少しでも子供が安心できる居場所を確保することが大切です。
父親が親権争いで有利になる場合
親権争いで父親が有利になるケースもあります。重要なのは、その事実について、できるだけ客観的根拠となる資料などで主張・立証していくことです。具体的なトピックをみていきましょう。
母親が育児放棄をしている
母親による育児放棄は、父親の親権獲得において有利にはたらくでしょう。
例えば、食事を与えない、学校に登校させない、家事をせず生活スペースを不潔にしている、子供をほったらかしにしてギャンブルしたりや深夜に外出したりするといった事実がある場合は、育児放棄、いわゆるネグレクトをしているといえます。親権争いの態様によって対処方法は異なりますが、子供を守ることを最優先に、ネグレクトの事実を主張・立証すべきです。
具体的な対策として、部屋が荒れている様子を写真に残したり、食事を与えない、登校させない、ギャンブルや深夜の外出といった事実について日時を含め詳細をメモしておいたり、育児放棄に関する証言を近隣や関係者から集めたりしておくといいでしょう。
母親が子供を虐待している
母親が子供を虐待しているケースもまた、父親が親権を得るうえで有利にはたらくといえます。
身体的暴力、言葉の暴力、性的暴力など、その態様はさまざまです。虐待の事実を証明できる証拠がある場合には、より有利となるでしょう。
例えば、虐待を受けたことがわかる写真や音声データ、子供本人や周囲からの証言、学校や行政機関への相談記録などが、有用な証拠になる可能性があります。
子供が父親と暮らすことを望んでいる
子供自身が父親との生活を望んでいることも、親権者を判断するうえでは大きなポイントとなります。
目安として、子供が15歳以上であれば、子供自身の意思が尊重されるといえるでしょう。
ただし、裁判所は、子供に選択させること自体に積極的ではありません。子供にしてみれば、両親のどちらかを選んで、どちらかを捨てる選択をしなければならず、残酷な選択ともいえるためです。子供の年齢が低ければ低いほど、この傾向は強くなります。あくまでも参考程度の聴取と考えておきましょう。
もちろん、親自身も子供に言い聞かせたり、説得したりして、自分を選ぶように仕向けるなどの行為は控えるべきです。「子供のしあわせ」を第一に考えて、子供の意見を尊重してあげましょう。
父親が親権を獲得した場合、養育費を請求することは可能か?

父親が親権者となった場合、養育費を請求することは可能です。
離婚したからといって扶養義務がなくなるわけではなく、親権者とならなかった母親にも養育費を負担する義務があるからです。養育費の決定は、お互いの資力や、子供の人数・年齢など、さまざまな事情が絡んできますので、慎重に交渉しましょう。
詳細については、下記のページをご参照ください。
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父親が親権を得られなかったら子供には会えないのか?

親権を得られなかった場合でも、面会交流を通して子供に会える可能性は十分にあります。
面会交流は、親の事情は抜きに、「子供のしあわせ」を重視して行われるものです。子供の健やかな成長のためには、離れて暮らす親との交流は何よりもの糧となるでしょう。この実現は、たとえ離婚したからといっても、親として果たさなければならない義務ですので、親権者の一方的な都合で拒否できるものではありません。
親権獲得が難しいようであれば、親権を譲る代わりに面会交流を認めるよう交渉することなどを検討してみましょう。
面会交流についての詳細は、下記のページをご覧ください。
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メールで相談する幼い子供の親権を父親が勝ち取れた事例
ここで、難しいとされる幼い子供の親権を父親が獲得できた弊所の解決事例を紹介します。
依頼者は、精神的に不安定な相手と別居し、幼い子供とともに実母と同居している状態で、離婚と親権獲得を求めて、弊所にご依頼くださいました。
ご依頼を受けた後、相手から「監護者の指定調停」を申し立てられてしまいましたが、このタイミングではいくつかの懸念がありました。というのも、別居時の態様が「子の連れ去り」と判断されるおそれがあり、依頼者はフルタイムの会社勤めをしていた関係で、別居前の育児実績があまりなかったからです。
そのため、当面待ちの姿勢をとりつつ、その間に一日でも多く育児の実績を重ねるようアドバイスをしました。その結果、長期間の育児の実績が認められ、裁判所の調査官調査でも子供との関係性に問題がないとの判断をいただき、子供の監護権を得ることができたうえ、最終的には親権を獲得して離婚を成立させることに成功しました。
父親の親権に関するQ&A
- Q:
乳児の親権を父親が取るのは無理なのでしょうか?
- A:
父親が乳児の親権を得るのは不可能ではありませんが、非常に難しいのが実情です。
その背景には、子供が幼ければ幼いほど、特に乳児の場合は、どうしても母親の存在が必要になることが多い点が関係しています。今までの先例においても、そして現状でも、圧倒的に母親が親権者となるケースが多いです。
ただし、母親が虐待や育児放棄をしているなどの事情があれば、父親が親権者となれる可能性は十分にあります。この場合、父親が育児をするのはもちろんですが、親族に協力してもらうなど、周囲のサポート体制を確保し整えておくと親権獲得に有利にはたらきます。また、「母親が育児をするのは子供にとって悪影響である」ことを証明するために、母親による虐待や育児放棄の実態の証拠を集めておきましょう。
- Q:
親権は父親で構わないが、育てるのは母親と主張されています。可能なのでしょうか?
- A:
「親権を持つ親」と「実際に子供を育てる親(=監護者)」を別々とすることは、不可能ではありません。しかし、裁判所は、この判断に消極的であるといえます。子供のしあわせを考えると、親権者と監護者は同一である方が好ましいとされているからです。
ご質問のケースでは、相手方とよく話し合って交渉していくことが望ましいですが、折り合いがつかないようであれば最終的に裁判所に判断してもらうことになるでしょう。そうなる前に一度弁護士に相談した方がいい事案でもありますので、迷われたら弁護士に問い合わせてみるのも一つの手です。
監護者を指定する手続きについて、詳しくは下記のページをご覧ください。
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- Q:
未婚の父親が親権を取ることは可能ですか?
- A:
未婚の男女の間に子供が生まれた場合、原則、子供を出産した母親の単独親権となります。結婚しない限り、父母の共同親権とすることはできません。
父親が親権を取るためには、まずは子供を認知して法律上の父子関係を明らかにする必要があります。そのうえで相手と協議し、合意に至れば父親が親権を取ることは可能です。
お互いに親権を譲らない場合には、裁判所の手続きを利用して親権者を決めていくことになりますが、実情としては、何らかの理由があって母親が子供を育てていくことが難しい場合などを除き、父親が親権を取るのは困難でしょう。
- Q:
元妻がネグレクトをしています。父親が親権を取り返すことはできますか?
- A:
一度決まった親権を変更することは、決して簡単なことではありません。
しかし、ネグレクトや虐待といった「子供のしあわせ」に悪影響を及ぼす事実が証明できる場合、親権の変更が認められる可能性があります。親権の変更について、詳しくは下記のページをご覧ください。
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- Q:
親権は父親が持っています。元妻に子供を連れ去られたらどうしたらいいのでしょうか?
- A:
ケースによって対処方法は異なりますが、話し合いができそうであれば協議により子供を引き渡してもらえるように説得してみましょう。これに応じてもらえないようであれば、一刻も早く子供を連れ戻すためにも裁判所の力を借りることとなります。
注意点として、いずれにしても、“勝手に”連れ戻すことはしないようにしてください。親権を持っているからとはいえ、刑法224条の未成年者略取または誘拐の罪に問われるおそれがあるためです。
具体的な手続きとしては、家庭裁判所に対して「子の引渡し」の審判(または調停)の申立てを行います。この手続きを踏むことで、罪に問われることなく、適法に子供を引き渡してもらうことができます。ただし、急ぐべき事案であり、人身保護請求手続きが検討されるケースもあるので、できるだけ早く弁護士に相談した方がいいでしょう。
子供が連れ去られた場合の対応について、下記のページではより詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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父親の親権獲得でわからないことがあれば一人で悩まず弁護士に相談しましょう。
離婚時の親権をめぐっては、父親ならではのお悩みもあるでしょう。
特に仕事を抱えながら、離婚・親権問題に向き合うことは、心身ともに疲弊してしまうことも少なくありません。そのような状況から、仕事や周囲の方々に悪影響を与えてしまうおそれもあります。さらには、大切な子供の親権について「仕方がない」と諦めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
弁護士は、ご依頼者様の味方となる存在です。離婚・親権問題という深刻でデリケートな問題をお一人で抱え込んでしまうのではなく、弁護士に打ち明けてみるのはいかがでしょうか?法律のプロであり離婚事案に精通した弁護士は、さまざまな要素を考えなければならない親権問題においても的確に対応することができます。お悩みの方はぜひ、弁護士への相談をお試しください。
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- 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)