養育費の回収方法

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員

“養育費を支払う”と約束していたにもかかわらず、養育費が未払いになったとき、養育費を回収するには、実際にどのような手続きが必要になるのでしょうか?本記事では、《養育費の回収方法》について詳しく解説していきます。

養育費の未払いにお困りの方はもちろん、これから養育費について話し合おうとしている方や、すでに養育費の支払いに関する取り決めをして養育費を受け取っている方も、今後もし同じような状況になったときに落ち着いて対処できるよう、本記事をお役立ていただければ幸いです。

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養育費の回収方法は大きく分けて2つ

養育費が支払われなくなったときに未払い養育費を回収する方法は、細かい手続きを説明すれば様々ありますが、大きく分けると「任意の回収方法」と「強制執行による回収方法」の2つに分類できます。前者は相手に任意で支払ってもらう方法であり、後者は法律の手続きにより強制的に回収する方法です。この2つの回収方法について、それぞれ詳しく確認してみましょう。

任意の回収方法

任意の回収方法としては、交渉・内容証明郵便の送付・履行勧告・履行命令などがあります。

ただし、いずれの方法も、未払いの養育費を回収できるかどうかはあくまでも相手の気持ち次第であり、養育費の支払いを強制することはできません。

対して、次に紹介する「強制執行」の効果は強力です。未払いの養育費を回収するためには、任意での支払いに期待するよりも、強制的に支払わせる法的手続きを行った方が現実的だと考えられます。

強制執行による回収方法

「差押え」という言葉を、誰しも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか? 「差押え」は、約束した金銭が支払われない場合、強制執行するにあたっての入り口になるものと考えてください。

財産を差し押さえられた者は、勝手にその財産を処分したり売却したりすることが禁止されます。そして、強制執行されることで、裁判所により、差し押さえられた財産は養育費の回収に充てられます。つまり、養育費を回収するために相手の財産を取り上げ、「この財産を対象にこれから強制執行しますよ」と予約する行為を、「差押え」といいます。

強制執行において、未払いの養育費を回収できる実効性が高いのが、「預貯金の差押え」と「給与の差押え」です。

養育費の場合、特に「給与の差押え」はとても強力な手続きになっていますので、積極的に活用すべきです。

差し押さえることができるもの

【給与】
通常の債権の場合、差押えの対象となる給与は、原則として手取り額の4分の1です。これに対し、養育費の場合、原則として手取り額の2分の1が差押えの対象となります。また、養育費の未払いを理由とした差押えでは、月々の手取り額が66万円を超えているなら、「手取り額-33万円」で残った全額を差し押さえて良いとされています。
なお、差し押さえた分は、相手の月々の給与から天引きされることになります。

【預貯金】
相手の預貯金を差し押さえたいとして強制執行の申立てを行い、受理されると、裁判所から金融機関に対して差押命令が送られます。この差押命令が送られたとき、相手の預貯金口座にあった預貯金は、全額差押えの対象となります。
ただし、金融機関名・支店名がわからなければ預貯金を差し押さえることはできないので、注意が必要です。

【土地や建物等の不動産】
相手が所有する土地や建物等の不動産も、差押えの対象となります。なお、不動産が複数人で所有する共有名義となっている場合、差し押さえることができるのは、相手の持ち分のみです。また、相手が所有する建物が建っている土地を別の人が所有している場合には、相手が所有する建物のみが差押えの対象となります。
差し押さえた不動産は、その後競売にかけられ、売却した代金が養育費の回収に充てられます。しかし、先の2つのケース(不動産が共有名義のものであるケース・建物と土地の名義が異なるケース)では、不動産を差し押さえたとしても、競売で買い手がつかない可能性が高く、養育費を回収できないおそれがあります。

【貴金属や宝石といった動産】
貴金属や宝石といった動産も、差し押さえることができます。しかし、動産のなかには、法律上、差押禁止とされているものが多くあり、例えば、生活を送っていくうえで最低限必要な衣服や家具等は、差し押さえることができないとされています。

【生命保険】
生命保険には、解約時に解約返戻金が支払われたり、定期的に配当金が支払われたり、保険期間の終了時に生存している場合に満期保険金が支払われたりするものがあります。これらのお金を生命保険会社に請求する権利は、差押えの対象とすることができます。

養育費の強制執行をするために必要なものは?

養育費の強制執行をするためには、「債務名義」が必要です。

債務名義になるものは、以下のように、養育費の取り決め方によって異なります。

  • ①当事者間の話し合いで取り決めた場合→「公正証書」(※強制執行認諾文言が付されているものに限られます。)
  • ②調停・審判・裁判等の裁判所の手続きで取り決めた場合→「調停調書」「審判書」「判決」等

②のケースでは、それぞれの債務名義は自身で手続きせずとも裁判所が作成してくれますが、①のケースでは、公証役場にて自身で作成の手続きをしなければなりません。離婚する際、夫婦で話し合ってお互いに納得したうえで決めたことでも、約束が守られずに養育費の未払いが生じるおそれがあります。取り決めた内容は、しっかりと「公正証書」に残しておきましょう。

預貯金の差押え

裁判所に強制執行の申立てを行う際、相手の預貯金口座がわかっている場合には、預貯金を差し押さえます。

預貯金を差し押さえると、差押え時点で入金されていた預貯金について、金融機関は払い戻せなくなりますので、相手方も口座からお金を引き出せなくなります。

ただし、預貯金の差押えは、差押え時点で口座に残っていたお金が対象になるので、その後に入金されたものは対象になりません。

なお、預貯金を差し押さえるには、強制執行の申立て時に、「金融機関名」と「支店名」を明らかにしなければなりません。(※「口座番号」まで特定する必要はありません。)

特に、相手方が自営業者などで、会社員のように会社から給与をもらっている給与所得者ではない場合には、預貯金の差押えが重要になってきます。

離婚後の預貯金口座なんてわからないという方へ

民事執行法が改正(令和2年4月1日に施行)されたことで、預貯金をはじめとした相手方の財産を調査するための裁判所の手続きが、より強力なものになりました。

今までは、相手の預貯金口座の金融機関名や支店名がわからず、強制執行ができないというご相談をいただくことも多くありました。しかし、今回の法改正で主に次の2点が変わり、改正前に比べ、預貯金口座の情報を明らかにしやすくなりました。

  • 第三者からの情報取得手続の新設
  • 財産開示手続の拡充

この2点について、さらに掘り下げていきます。

第三者からの情報取得手続の新設

改正前でも、「弁護士会照会」によって相手方の財産を調査するという方法はありました。しかし、個人情報保護の観点から照会先(金融機関等)に回答を拒否されることもあるなど、調査には限界があると言わざるを得ない状況でした。

そこで、このような状況を打開することが期待されているのが、民事執行法の改正で新設された「第三者からの情報取得手続」です。裁判所に申立てをする必要はありますが、この手続きを利用すると、裁判所から金融機関や市区町村、登記所等に対し、情報提供を命令してもらうことができます。そのため、これまで難航していた預貯金口座の調査が容易になり、情報を明らかにしやすくなることが予想されます。

財産開示手続の拡充

従来の民事執行法においても、相手方を裁判所に出頭させ、財産状況について聞き取りをして開示を要求する手続き(財産開示手続)は存在しました。

しかし、公正証書で支払いを約束しただけでは財産開示手続が利用できない等、利用できる者が限られていました。さらに、相手方が正当な理由なく裁判所に出頭しなかったり、仮に出頭して嘘をついたりしても、罰則が極めて軽微であったことなどから、実際にこの手続きが利用されることはほとんどありませんでした。

このように、従来の財産開示手続では、実効性の低さが問題となっていましたが、今回の法改正により、制度の拡充がなされました。例えば、公正証書で強制執行できる場合、つまり、「強制執行認諾文言付の公正証書」で支払いを約束した場合にも、財産開示手続の利用が可能になりました。さらに、相手方が正当な理由なく出頭しなかったり、虚偽の陳述をしたりした場合には、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されるようになり、罰則が強化されました。こうした財産開示手続の拡充により、以前よりも実効性が上がることが期待されています。

給与の差押え

相手が会社員等の給与所得者である場合には、給与の差押えをすることができます。養育費の強制執行では、給与の差押えをすれば、給与から税金や社会保険料等を引いた残額(=手取り額)の2分の1までの範囲を差し押えることができます。なお、給与の毎月の手取り額が66万円を超えるケースでは、「手取り額-33万円」で残った金額すべてが差押えの対象となります。

さらに、養育費については、未払いとなっている分のみに限らず、将来の養育費分も差し押さえることができます。そのため、未払い分と将来分の両方の差押えをすれば、基本的に、一度手続きするだけで、相手が退職するまで継続的に会社からの支払いを受け、養育費を回収できるようになります。

このように、給与の差押えはとても強力であるため、会社に与える印象を気にするのか、相手は給与が差し押さえられたとたん、慌てて「差押えをやめてほしい」と交渉してくるケースも多く、その結果、養育費の支払いに応じてくれることもあります。

相手の職場がわからなくても調査できます

離婚後、相手とこまめに連絡をとっている方は少ないでしょう。そのため、相手の職場が変わってしまい、新しい職場がわからないというのはよくあることですが、給与の差押えをするには、相手の職場を特定する必要があります。

今までは、相手の職場を調査するために、高い費用を出して探偵に尾行をしてもらうという方法がとられることもありました。

しかし、令和2年4月1日以降、民事執行法の改正で新設された、「第三者からの情報取得手続」という制度を利用して相手の職場を調査できるようになりました。この方法で調査すれば、市区町村や日本年金機構等、会社の厚生年金の情報を把握している機関に対し、裁判所を通じて情報提供を求めることができるため、今までよりも、相手の職場をつきとめやすくなります。

強制執行に必要な書類

強制執行を裁判所へ申し立てる際には、「強制執行の申立書」のほか、以下のような書類が必要になります。

なお、場合によっては、異なる書類の提出が求められることもありますので、事前に申立先の裁判所に確認しておいた方が良いでしょう。

【公正証書、調停調書、審判書、判決等の債務名義の正本】
養育費の強制執行をするためには、養育費の内容を定めた、公正証書、調停調書、審判書、判決等の「債務名義」が必要となり、裁判所にはいずれかの債務名義の正本を提出します。
なお、公正証書の場合は、「支払いを遅滞した場合は、強制執行をされても異議を唱えない」旨の文言(これを「強制執行認諾文言」といいます)が明記されている必要がありますので、ご注意ください。

【執行文】
強制執行の申立て時、債務名義の種類によっては、「執行文」といって、「この債務名義により強制執行をすることができる」という文書が必要なものがあります。
執行文が付いていないときは、債務名義を作成したところ、つまり、公正証書の場合は公正証書を作成した公証役場、調停調書等の場合はその書類を作成した裁判所で、執行文の付与を受けることになります。
なお、審判書の場合、執行文は必要ありませんが、審判が確定したことを証明する、「確定証明書」という別の書類が必要になります。審判をした裁判所に申請手続きをして、取得しましょう。

【送達証明書】
債務名義の正本または謄本が、債務者(相手方)に届いていることを証明する書類を、「送達証明書」といいます。強制執行するにあたっては、事前に債務の内容が債務者にも伝わっていなければなりません。そのため、強制執行の申立て時には、「送達証明書」を提出する必要があります。債務名義を作成した公証役場や裁判所に申請すれば、交付してもらえます。

【戸籍謄本(全部事項証明書)、住民票、戸籍の附票等】
債権者(ご自身)または債務者(相手方)の氏名や住所が、債務名義の正本に記載されたものと現在とで異なる場合には、1ヶ月以内(※債権者の場合は「2ヶ月以内」としている裁判所もあります)に発行した戸籍謄本(全部事項証明書)、住民票、戸籍の附票等が必要になります。

【法人の資格証明書(法人の登記事項証明書、代表者事項証明書等)】
預貯金や給与を差し押さえるケース等で、差押え先が法人の場合には、法人の登記事項証明書や代表者事項証明書といった、法人の資格証明書の提出が必要です。提出するのは、3ヶ月以内(※「1ヶ月以内」としている裁判所もあります)に発行したものでなければなりません。

なお、強制執行の申立書には、基本的に次の4つの書類を付けます。

  • 申立書の表紙
  • 当事者目録
  • 請求債権目録
  • 差押債権目録

これら4つの書類については、下記のように、ウェブサイトでフォーマットや記載例を紹介している裁判所もあります。

強制執行の手続きの流れ

【①裁判所に対する強制執行の申立て】
強制執行の手続きは、まずは裁判所に必要な書類を提出し、強制執行の申立てを行うことから始めます。
どこの裁判所に申し立てれば良いのかは、差し押さえたい財産の種類によって異なります。例えば、差し押さえたいものが「不動産」である場合には不動産の所在地、「動産」である場合には動産の所在地、「債権(給与や預貯金等、第三債務者(金融機関や会社等)が有している債権)」である場合には債務者(相手方)の所在地、それぞれを管轄する地方裁判所が申立先となります。なお、管轄の異なる複数の財産を差し押さえたい場合には、各裁判所に対し、別々に申立てを行う必要があります。
続いて紹介する手続きの流れ(②・③)では、「債権」を差し押さえたい場合に焦点を絞り、解説していくこととします。

【②差押命令】
「債権」を差し押さえたい場合、強制執行の申立てが受理されると、裁判所から差押命令が出され、債務者(相手方)や第三債務者(金融機関や会社等)に対し、差押命令の正本が送られます。

【③取立て】
差押命令の正本の送達が完了してから1週間が過ぎると、第三債務者に対し、差し押さえた債権を取り立てることができます。つまり、差し押さえた給与や預貯金等の支払いを求め、受け取ることができるようになります。ただし、この取立ては、強制執行を申し立てた者(債権者)が自ら第三債務者に連絡して行う必要があります。
なお、第三債務者が、差押命令を受けた後、差押えの対象となっている給与や預貯金等を供託所に預ける「供託」をした場合、債権者は取立てを行うことはできません。この場合、裁判所から弁済金として、差し押さえた債権の金額が交付されます。ただ、ほかの債権者からも差押えがなされていて差押えが競合しているときには、債権者ごとに按分された金額が、配当金として支払われることになります。

強制執行の申立てにかかる費用

  • 収入印紙代:基本的に4000円(債権者1名、債務者1名、債務名義1通あたり)
  • 郵便切手代:各裁判所で異なります
  • 予納金(※「債権」を差し押さえたい場合にはかかりません):各裁判所で異なります

「収入印紙代」は、強制執行の手数料として納めます。差し押さえたい財産の種類や裁判所によって異なることもありますが、基本的に4000円(債権者1名、債務者1名、債務名義1通あたり)がかかります。

また、「郵便切手代」は、申立人(債権者)や債務者、第三債務者等に書類を送付するための費用として納めます。裁判所によって納めなければならない金額は異なりますので、事前に確認したうえで、申し立てるようにした方が良いでしょう。

そして、強制執行の申立てにかかる費用で、大きな負担になりやすいのが「予納金」です。なお、「債権」を差し押さえたい場合にはかかりません。支払った予納金は、裁判所が強制執行を行う際の費用に充てられます。申立て時に必要な予納金額は裁判所によって異なりますが、差し押さえたい財産の金額に応じて定められていることが多いです。特に「不動産」を差し押さえたい場合には、予納金が高額になることもあり得ます。

養育費の強制執行

養育費の取り決めをしたにもかかわらず、支払われなくなってしまった場合、債務名義さえあれば、強制執行により未払いの養育費を回収できる可能性があります。加えて、法改正が行われたことで、相手の財産状況を調査しやすくなり、以前に比べて回収できる可能性が高まっています。未払いの養育費を回収するためには、強制執行を積極的に活用すべきでしょう。

間接強制金を定める強制執行もある

これまで説明してきた、「財産を差し押さえる」というのは、強制執行のうち直接強制という種類です。

これに対し、財産を差し押さえるのではなく、債務者(相手方)が負っている債務とは別に間接強制金を課すことで、心理的圧迫を加え、自発的に支払うよう促す間接強制という種類もあります。養育費の未払いが発生したときは、間接強制を行うこともできます。

協議離婚で公正証書による合意がない場合

離婚の際、できる限り揉めたくないという気持ちを抱くのは自然なことです。そのため、夫婦で話し合って合意できたら、これ以上長引かせないようにと、何の書面も作成せずに協議離婚を成立させてしまい、養育費について公正証書を作成していない人もいらっしゃるかと思います。

その結果、離婚後に養育費の未払いが発生したとき、公正証書を作成していないことを理由に、「もう養育費を支払ってもらえない」と諦めてはいませんか?このような場合でも、泣き寝入りするのはまだ早いです。

離婚した後であっても、家庭裁判所に調停や審判の申立てをして、養育費を請求することはできます。そして、養育費について定めた債務名義を取得できれば、強制執行して養育費を回収できる可能性があります。

とはいえ、実務上、養育費の請求は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てた月からの分のみ認められることがほとんどです。

養育費を支払ってもらえずに悩まれている方は、すぐに弁護士にご相談ください。適切な対処方法を考え、ご相談者様とお子様のこれからの将来を見据えた最善の解決に導けるよう、全力を尽くします。

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