婚姻費用の分担請求をする方法や流れについて

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員

離婚を視野に入れて別居することになった場合、一番の心配事は当面の生活費をどうやって工面するかということではないでしょうか?

別居中の生活費は、相手に「婚姻費用」として請求することで確保します。正しい手続名は“婚姻費用分担請求”といいますが、安定した別居生活を送るためにも、婚姻費用は別居を始めたらすぐに請求すべきです。なお、弁護士や専門家は、「婚姻費用」のことを略して「婚費(こんぴ)」という場合が多いです。

このページでは、《婚姻費用分担請求》について詳しく解説していきます。別居をお考えの方やすでに別居中の方などには、特によく知っておいてほしい内容です。ぜひ参考にしてください。

まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

お電話でのご相談受付

0120-519-116

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メールでのご相談受付

メールで相談する

婚姻費用分担請求とは

婚姻費用分担請求とは、衣食住にかかる費用や子供の養育費といった、家族が生活を送っていくために必要な費用である「婚姻費用」の分担を、夫が妻に・妻が夫に請求することをいいます。一般的には、収入の少ない方が多い方に対して請求します。

夫婦間には、お互いが同じ生活レベルで暮らしていけるようにする「生活保持義務」が生じるため、それぞれが持っている財産や収入等に応じて、婚姻費用を分担する義務があります。したがって、たとえ別居中であっても、はたまた離婚手続きを進めている最中であっても、結婚している間は婚姻費用分担請求ができるのです。

婚姻費用分担請求の方法としては、まずは夫婦間で話し合うのが一般的です。話し合いでは決められそうにないときは、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てることになります。

そもそも婚姻費用とは何なのかについては、下記のページで詳しく解説しています。本ページをより深く理解していただくためにも、ぜひ併せてご覧ください。

さらに詳しく
婚姻費用とは

婚姻費用分担請求を行うメリット

婚姻費用分担請求を行うメリットには、次のようなものがあります。

・別居中の生活費を確保できる
別居中の自身の生活費をどうしたら良いのか、悩む方もいらっしゃるでしょう。ましてや子供を連れて別居した場合、子供の生活費も必要になります。とはいえ、「児童扶養手当」等のひとり親家庭に向けた公的支援は、離婚後に受けられるものであり、通常、離婚前の別居中の段階では受けられません。したがって、婚姻費用分担請求をして生活費を確保することは、非常に大きなメリットといえます。

・早期の離婚成立に繋がる可能性がある
離婚を視野に入れて別居中の場合、婚姻費用分担請求をすることで相手にプレッシャーを与え、早期の離婚成立に繋がる可能性があります。別居期間が長くなれば、その分相手は長く婚姻費用を支払い続けていかなければなりません。離婚が成立すると支払い義務はなくなるため、「早く離婚してしまおう」という気持ちになり、離婚に同意してくれるケースもあるでしょう。

婚姻費用はどのタイミングで請求すべきか?

裁判所の実務では、婚姻費用分担請求が認められるのは基本的に「請求した月からの分」です。つまり、請求したときより前の過去分については、通常、遡って受け取ることはできません。そのため、婚姻費用は、別居を始めたらなるべく早く請求すべきです。

婚姻費用の請求のタイミングについて、詳しくは下記のページをご覧ください。

申立ての前に内容証明郵便を送るという方法も

一般的に、婚姻費用を「請求したとき」とされるのは、家庭裁判所に「調停を申し立てたとき」です。ただし、申立ての前に内容証明郵便(誰にいつどのような内容の書面を出したかを郵便局が証明してくれる郵便物)を相手に送り、請求の意思表示をすれば、「内容証明郵便を送ったとき」が「請求したとき」とみなされる可能性が高いです。

受け取れる婚姻費用の総額を増やすためにも、調停を申し立てる前に内容証明郵便を送っておくことをおすすめします。

まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

お電話でのご相談受付

0120-519-116

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メールでのご相談受付

メールで相談する

婚姻費用分担請求調停の流れ

婚姻費用について、夫婦間で話し合って決めることができれば良いのですが、難しい場合は家庭裁判所の「婚姻費用分担請求調停」という手続きを行います。調停では、夫婦それぞれが調停委員(一般的には男女1名ずつの計2名)と話していき、合意による解決を目指します。そのため、調停の成立時などを除いて、通常は夫婦が直接顔を合わせずに話し合いを進めていくことができます。

婚姻費用分担請求調停の流れは、次のとおりです。

①家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てる。

申立先 相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者間で決めた家庭裁判所
必要書類 婚姻費用分担請求申立書とその写し
夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
申立人の収入関係の資料 等
費用 収入印紙1200円分
連絡用の郵便切手(※金額は裁判所によって異なる)

※事案によっては追加書類の提出を求められることがあります。

②申立人と相手方の双方に、裁判所から第1回の調停期日が記載された呼出状が届く。

③第1回調停期日が行われる(通常は申立ての約1ヶ月後)。

④第1回調停期日で成立しなければ、第2回調停期日へ、第2回調停期日で成立しなければ第3回調停期日へ…と進んでいく(通常は1ヶ月に1回程度のペース)。

⑤調停成立や不成立で終わる(早ければ2~3回目の調停期日で結論が出る一方で、長期化するケースもある)。

調停成立の場合

夫婦の意思が合い調停が成立すると、合意内容をまとめた「調停調書」が裁判所によって作成されます。「調停調書」には裁判の「判決」と同じ法的効力があるため、相手が合意内容を守らずに婚姻費用を支払わない場合は、強制執行を行うことが可能になります。

婚姻費用の強制執行について、詳しくは下記のページをご覧ください。

調停不成立の場合

調停を行ったものの合意することができなければ、調停は不成立となってしまいます。調停不成立の場合は、自動的に「審判」の手続きに進み、裁判所が婚姻費用について判断します。

審判がなされると、その内容が書かれた「審判書」が夫婦双方に送付されるのですが、裁判所の判断に納得いかない場合もあるでしょう。そのようなときは、「不服申立て(即時抗告)」をして、さらに上の裁判所に判断を求めることができます。ただし、不服申立て(即時抗告)ができるのは、審判の告知を受けた日(通常は審判書を受け取った日)の翌日から2週間以内ですのでご注意ください。夫婦のどちらからも不服申立て(即時抗告)が行われなければ審判は確定し、審判の内容が守られないときは強制執行できるようになります。

調停や審判では婚姻費用の金額はどのように決められる?

婚姻費用の金額は、話し合いで夫婦双方が合意すれば自由に決めることができます。調停も裁判所の手続きとはいえ話し合いの手続きですので、お互いの考えを聞きながら金額を決めていきます。

対する審判では、金額について裁判所が決めることになります。基本的には「婚姻費用算定表」という資料を参考にして計算し、さらに考慮すべき個別の事情があれば調整を加えます。

「婚姻費用算定表」についての詳しい内容は、下記のページをご確認ください。

さらに詳しく
婚姻費用算定表の見方

婚姻費用の相場はどのくらい?

婚姻費用の金額は、家族構成や夫婦それぞれの収入などによって異なりますので、一律に「○円が相場」と言うことは難しいです。ただ、裁判所が判断するときには「婚姻費用算定表」が参考にされることが多く、話し合いで決めるときも算定表は一般的によく利用されます。そのため、相場を知るには「婚姻費用算定表」で確認すると良いでしょう。

具体例として、次の2つのケースについて、算定表に基づいた相場を確認してみます。なお、いずれのケースも、婚姻費用を支払う側(義務者)を「夫」、受け取る側(権利者)を「妻」とします。

【夫婦のみの場合】
・夫の年収(会社員):500万円
・妻の年収(会社員):200万円
⇒婚姻費用の相場は「4~6万円(月額)」

【子供がいる場合】
・夫の年収(会社員):700万円
・妻の年収(専業主婦):0円
・12歳の子供が1人
⇒婚姻費用の相場は「14~16万円(月額)」

ご自身のケースでは相場はどのくらいになるのか、もっと簡単に知りたいという方のために、自動計算ツールをご用意しました。当てはまる内容を入力・選択するだけで、算定表に基づいた婚姻費用の相場を確認できますので、ぜひご活用ください。

さらに詳しく
婚姻費用計算ツール

婚姻費用分担請求調停で調停委員に聞かれること・主張すべき内容とは

婚姻費用分担請求調停で実際に話す相手は調停委員になりますが、調停委員に聞かれることの多い内容は次のとおりです。

(共通)

  • 現在の収入
  • 夫婦の生活状況(別居しているかどうか等)
  • 子供の監護状況(子供の世話は誰が見ているのか等)
  • 希望する婚姻費用の金額や支払い方法
  • 相手の主張内容に対する反論

(申立人)

  • 調停を申し立てた動機や経緯

ただ、調停委員に聞かれたことだけ話すのでは、ご自身の考えが調停委員に正しく伝わらないおそれがあります。聞かれた内容のほかに考慮してほしい事情などがある場合には、しっかりと主張しましょう。例えば、次のような事情は主張すべきといえます。

  • 子供が私立学校に通っているので、その分増額してほしい
  • 別居中ではあるものの、相手が住んでいる家の住宅ローンは自分が支払っているので、その分減額してほしい

婚姻費用分担請求調停に欠席するとどうなる?

1回目の調停期日は、裁判所と申立人で日程を調整したうえで決めるのが一般的です。そのため、相手方にとっては都合の悪い日程になってしまうこともあります。事前に相手方から裁判所へ欠席の連絡があった場合、期日が延期され、改めて双方に通知されるケースもあれば、期日はそのままに申立人の主張の聞き取りのみ行われ、相手方の主張の聞き取りは次回の期日に行われるケースもあるようです。

対して、相手方が連絡もせず欠席した場合は、調停委員は申立人の主張の聞き取りのみ行い、次回の期日を指定します。その際、「相手方は今後出席しそうか」「相手方と連絡の取りやすい方法はあるか」「相手方の生活状況はどのようであるか」といったことを、申立人は確認されるでしょう。

その後は、裁判所の書記官が相手方に連絡を試みたり、調査官が出頭するよう勧告したりすることもあります。相手方が2回目も無断欠席すると、ほとんどの場合は調停不成立となり審判に移行します。

今すぐにでも婚姻費用を支払ってほしいときは?

調停や審判の結果を待てないほど経済的に苦しい場合、裁判所から相手方に対し、婚姻費用の仮払いを命令してもらえる制度を利用できる可能性があります。制度には「調停前の仮処分」と「審判前の保全処分」の2つがあります。

「調停前の仮処分」は、“調停の申立てをしてから調停が終了するまでの間”に行う手続きです。申立書や上申書を提出して、裁判所が「婚姻費用の支払いを急がなければならない」と判断した場合には、裁判所から相手方に対し、婚姻費用を支払うよう勧告や命令がなされます。「調停前の仮処分」には、残念ながら相手に支払いを強制させる力はないものの、勧告や命令を無視すると10万円以下の過料に処せられるため、心理的プレッシャーにはなるでしょう。

一方、「審判前の保全処分」は、“審判の決定が出るまでの間”に行う手続きです。手続名に「審判前」とありますが、婚姻費用分担請求では、審判に移る前の調停中に申し立てても構いません。「調停前の仮処分」とは違い、「審判前の保全処分」には強制執行力があり、支払いの命令をしても相手方が応じないときは、相手方の財産を強制的に差し押さえることが可能になります。実効力のある手続きであるため、認められるには、緊急性が高い状況だと判断される必要があります。

婚姻費用分担請求調停と離婚調停の同時申立てについ

婚姻費用分担請求調停と離婚調停は、同時に申し立てることが認められています。同時申立てによるメリットとデメリットは、次のとおりです。

同時に申し立てるメリット

  • 離婚を視野に入れて別居している間も、経済的・精神的に安定した生活を送ることができる。
  • 離婚調停が不成立になっても、婚姻費用は受け取ることができる。
  • 離婚調停が不成立になってから婚姻費用分担請求調停を申し立てる場合に比べて、長期間にわたって婚姻費用を受け取ることができる。
  • 基本的には同じ期日で話し合うことになるため、別々に進めるよりも調停の回数や期間を減らすことができる。

同時に申し立てるデメリット

  • 婚姻費用の調整に時間を取られ、離婚の成立が遅れることがある。
  • 離婚と婚姻費用の両方について同時に考えていかなければならないため、情報の整理が上手くできずに不利な内容で調停を成立させてしまうおそれがある。

婚姻費用分担請求が認められない場合もあるので注意

夫婦である以上、婚姻費用を分担する義務を負い続けるのですが、ご状況によっては婚姻費用分担請求が認められない場合もあります。

例えば、婚姻費用を受け取る側が浮気やDVなどをして、夫婦関係を破綻させる原因を作っていた、いわゆる有責配偶者であった場合には、請求は認められない可能性が高いでしょう。ただし、子供の養育費分については認められると考えられます。

また、なんとなく一緒に住む気がなくなった等、正当な理由もなく一方的に同居を拒んだ場合も、請求が認められないことがあります。

下記の各ページでは、「有責配偶者」と「別居の正当な理由」についてそれぞれ詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

婚姻費用分担請求に関するQ&A

Q:

婚姻費用算定表よりもできるだけ多くもらうにはどうしたら良いですか?

Q:

子供を引き取っていない場合でも、婚姻費用分担請求は可能でしょうか?

A:

夫婦間の収入差によっては、ご自身の生活費を婚姻費用として請求できる可能性があります。

ただし、婚姻費用を決めるときによく参考にされる「婚姻費用算定表」は適用できません。算定表(※子供がいる場合の表)は、婚姻費用を受け取る側(権利者)が子供を引き取っているケースが前提とされているからです。そのため、算定表のもととなった計算方法に当てはめてみて、婚姻費用分担請求ができるかどうかを確認します。

算定表のもととなった計算方法は、次のとおりです。

①受け取る側(権利者)と支払う側(義務者)の基礎収入を算出する
総収入×基礎収入割合※1
※1:総収入の金額に応じて決められています。

②権利者世帯で必要になる生活費を算出する
(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×{(権利者世帯の生活費指数※2)÷(権利者世帯の生活費指数+義務者世帯の生活費指数)}
※2:親(権利者・義務者)=100

子供(0~14歳の場合)=62
子供(15歳以上の場合)=85

③婚姻費用(年額)を算出する
②の金額-権利者の基礎収入

相手が子供を引き取っているのなら、②の「権利者世帯の生活費指数」には“ご自身のみ”の生活費指数が、「義務者世帯の生活費指数」には“相手と子供”の生活費指数が入ります。そうして計算した結果、プラスの金額になれば、請求できる婚姻費用があるということになるので、婚姻費用分担請求ができます。

Q:

働いており多少の定収があるのですが、婚姻費用分担請求は認められますか?

A:

全く収入のない専業主婦(主夫)の方だけではなく、働いていて一定の収入がある方も、相手より収入が低いのであれば、基本的に婚姻費用分担請求は認められます。

というのも、法律上、夫婦はお互いに助け合わなければならないとされており、扶養義務を負うからです。夫婦間の扶養義務は、経済的に余裕があるかどうかに関係なく、相手に自分と同じレベルの生活を送らせなければならないという、「生活保持義務」と考えられています。 したがって、一般的には収入の多い方が少ない方に支払うかたちで、婚姻費用を分担する必要があります。

Q:

配偶者と同居中でも婚姻費用の分担請求はできますか?

婚姻費用分担請求でお困りでしたらぜひ弁護士へ

婚姻費用分担請求は、別居中の生活費を確保するため、そして離婚に向けての第一歩としても重要です。請求したいと考えているものの、「何から手を付けたら良いのかわからない」「交渉で不利にならないか心配」「自分の状況だと増額できるだろうか?」「調停の申立書の書き方がわからない」など、お悩みを抱えているときは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

弁護士は、法律の専門知識を持つ交渉のプロです。ご相談者様の状況に合わせて適切にアドバイスできますし、代理人となって相手との交渉や調停手続きを進めていくこともできます。不利な内容で取り決めをしてしまう事態も避けられるでしょう。

弁護士法人ALGでは、これまでに多くの方から婚姻費用に関するご相談をいただいており、問題を解決するためのノウハウを培っています。経験豊富な弁護士がお一人おひとりのお悩みに真摯に向き合いますので、婚姻費用分担請求でお困りのときは、ぜひ弊所にご相談ください。

まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

お電話でのご相談受付

0120-519-116

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メールでのご相談受付

メールで相談する
弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修:谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員 弁護士
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:41560)

弁護士法人ALG&Associates 事務所情報

お近くの事務所にご来所いただいての法律相談は30分無料です。お気軽にお問い合せください。

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。

関連記事