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離婚した後でも年金分割はできる?注意点や手続き方法について

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

離婚する際に、年金分割の取り決めをし忘れた方もいらっしゃるかと思います。
安心してください。離婚後も年金分割は可能です。
ただし、元夫婦間で年金分割の合意ができていたとしても、別途手続きが必要です。
また、年金分割には請求期限があったりと、年金分割についてあらかじめ知っておいた方が良いこともあります。

そこで本記事では、「離婚後の年金分割」について、注意点や手続き方法などを解説していきます。

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離婚後でも年金分割はできる

年金分割は、離婚後もできます。
ただし、年金分割は、離婚したからといって自動的に行われるものではありません。別途手続きが必要です。

年金分割の手続きをしておかないと、特に、婚姻期間が長く、専業主婦(主夫)だった場合は、将来の年金額が大きく減ってしまう可能性があります。老後に働こうとしてもなかなか就職先が見つからなかったり、肉体的に就労が困難だったりして、老後の生活が困窮する事態も起こり得ますので、年金分割の手続きは確実に行っておくべきです。

年金分割制度とは

年金分割制度は、離婚したときに夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金にできる制度です。
離婚した際、厚生年金の保険料納付記録の多い方から少ない方へ分割します。

分割の対象となるのは厚生年金部分ですので、夫婦のどちらか、また夫婦が会社員や公務員などの厚生年金加入者の場合に利用できます。
他方で、自営業者と専業主婦の夫婦や、農業や漁業の従事者とパート勤務の夫婦などは国民年金加入者になりますので、年金分割制度は利用できません。

なお、年金は、受給要件を満たしていれば、原則として65歳から受給できます。
年金分割の仕組みについては、下記ページでも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

年金分割をするべきケース

年金分割をするべきケースは次のとおりとなります。

  • 国民年金を含む公的年金制度の加入期間が10年以上である
  • 離婚して2年以内である
  • 婚姻期間中に厚生年金保険料をトータルして相手の方が多く納付している

夫婦のどちらが厚生年金保険料を多く納付しているか、そもそも年金分割できるのかを確認するためには、最寄りの年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得して、情報通知書に記載されている「対象期間標準報酬総額」と「按分割合の項目」などを確認する必要があります。

なお、ご自身が相手よりも婚姻期間中の厚生年金の加入期間が長かったり、標準報酬額が高かったりして厚生年金保険料を多く納付している場合は、年金分割によって受け取れる年金額は減ってしまうケースもあります。

年金分割したときの計算と見込み額を知る方法について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

離婚後に年金分割請求をする場合の注意点

離婚後に年金分割請求する場合は、次の点に注意する必要があります。

  • 離婚後2年以内の請求期限がある
  • 相手が死亡した場合、死亡後1ヶ月以内に手続きが必要
  • 相手が年金分割に応じてくれない場合がある
  • 離婚時に年金分割しないことを合意していても3号分割の請求は可能

次項でそれぞれ詳しく解説していきます。

離婚後2年以内の請求期限がある

離婚後に年金分割の手続きをしようとお考えの方は、いつでも手続きできるものではなく、請求期限があるので注意しましょう。
請求期限は、「離婚をした日の翌日から2年以内」です。
請求期限を過ぎてしまうと、年金分割の請求はできなくなってしまいます。

ただし、当事者間の話し合いでは折り合いがつかず、年金分割の内容を決めるために家庭裁判所に調停または審判の申立てをした場合は、申立てが離婚後2年以内であれば、調停成立または審判の確定時に2年が経過していたとしても、確定日の翌日から起算して6ヶ月以内であれば、年金分割の請求ができます。

相手が死亡した場合、死亡後1ケ月以内に手続きが必要

合意または調停・審判などの裁判所の手続きにより、年金分割の按分割合を決定したあと、年金分割の手続きをする前に相手が亡くなった場合は、「死亡した日から1ヶ月以内」であれば、年金分割の請求が認められます。
もし離婚後2年が経っていなくても、相手が死亡してから1ヶ月が経ってしまうと年金分割の手続きができなくなってしまいます。

離婚後は夫婦ではありませんので、元配偶者が死亡したとしても、必ずしも死亡の知らせが届くとは限りません。相手の死亡した事実を知らなくても、死亡してから1ヶ月が経過すると、年金分割の手続きは行えなくなるため、離婚後速やかに手続きをしておくのをお勧めします。

相手が年金分割に応じてくれない場合がある

離婚後に年金分割を請求しても相手が拒否する、交渉に応じてくれないなど、相手には利益がないため、年金分割に消極的な対応を取られる場合があります。

相手が年金分割に応じない場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立て、裁判所で年金分割の按分割合を決めることになります。
裁判官や調停委員を交えて解決を図るので、希望どおりの年金分割ができる可能性が高まります。

一方で調停や審判でも相手が頑なに拒んでいるとなかなか解決できないケースもありますのでご自身での手続きに不安があれば、弁護士に依頼をして進めるのが有用です。

離婚時に年金分割しないことを合意していても3号分割の請求は可能

年金分割請求権は、厚生労働大臣に対する公法上の請求権です。
元夫婦間で「年金分割をしない」という私法上の合意をしていても年金分割請求権を直接制約できません。

よって、離婚する際に、協議離婚書や公正証書で「当事者間に何らの債権債務が存在しないことを確認する。」などの清算条項を締結したとしても、清算条項に縛られずに年金分割請求を行うことが可能です。

ただし、元夫婦間で「裁判所に年金分割の按分に関する調停または審判の申立てをしない」と合意することは可能です。この場合、結局、元夫婦間で年金分割の按分割合を定めることができず“合意分割”はできなくなる可能性があります。

一方、国民年金の第3号被保険者からの請求によって行われる“3号分割”は、元夫婦間の合意が必要ないため、「年金分割をしない」と合意をしていても、3号分割を請求できることになります。

離婚後の年金分割の手続き方法

離婚後の年金分割の手続きは、主に次のような流れとなります。

  1. ① 「年金分割のための情報通知書」を年金事務所から取得する
  2. ② 以下の内容を確認する
    • 年金分割ができる年金記録があるか
    • 年金分割を請求できる要件を満たしているか(請求期限や年金加入期間など)
    • 年金分割をして損しないか(請求者の方が厚生年金の加入期間が長い、標準報酬額が高いなど)
  3. ③ 元夫婦間で年金分割について話し合う
    • 合意分割を合意できた場合・・・合意した内容を記載した書面(年金分割合意書、公正証書など)を作成する
    • 合意分割について合意できなかった場合・・・家庭裁判所に年金分割の按分割合を定める調停また審判を申し立てして決める
      ※3号分割は話し合い不要
  4. ④ 年金事務所へ行って手続きを行う
    • 合意分割の場合・・・合意内容が明らかな書類など必要書類をもって、元夫婦2人で手続きを行う。ただし公正証書や調停調書、審判書などを作成して保有している場合は元夫婦のどちらか1人で請求可能。
    • 3号分割の場合・・・必要書類をもって、請求者1人で手続きを行う。
      ※合意分割と3号分割の両方が適用される場合は、合意分割の手続きをすると、3号分割が適用される期間について、自動的に3号分割の請求をしたものと扱われます。
  5. ⑤ 標準報酬改定通知書を受け取る

年金分割の手続きについては、下記ページでさらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

合意できない場合は年金分割調停などの手続きをする

3号分割に相手の合意は必要ありませんが、合意分割をする場合は、元夫婦間で話し合いをして、按分割合について合意しなければいけません。

話し合いで合意できなければ、家庭裁判所に年金分割の按分割合を定める調停または審判など裁判所の手続きを行って決めます。
ただし、調停成立または審判が確定しても自動的に年金が分割されるわけではありません。

家庭裁判所が作成した「調停調書」または「審判書」などの必要書類をもって、元夫婦のどちらか一方が年金事務所に行って年金分割請求の手続きを行う必要があります。

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離婚後の年金分割を弁護士に依頼するメリット

離婚後の年金分割を弁護士に依頼すると、次のようなメリットが挙げられます。

  • 直接話し合いしたくない相手と代わりに交渉してもらえる
  • 弁護士が相手と直接交渉することによって、希望どおりの結果になる可能性が高まる
  • 複雑な年金分割の制度をわかりやく教えてくれる
  • 調停や審判など裁判所の手続きをする際は、書面作成・提出、裁判所とのやりとり、裁判所への出廷など一任できる
  • 公正証書を作成する際は、適正な公正証書の作成、公証役場とのやりとりなどをしてもらえる
  • 年金分割に必要な書類の収集や手続きをサポートしてもらえる

離婚後の年金分割に関するQ&A

Q:

離婚後、年金分割をしたのちに再婚した場合、年金分割の取り扱いはどうなりますか?

A:

離婚後に年金分割をした後、年金分割をした側と受けた側、どちらか一方が再婚しても、それぞれが受け取る年金額には何ら影響しません。

そもそも年金分割は婚姻期間中の年金保険料の納付実績を分割しており、離婚後の年金保険料の納付や婚姻状態などには一切影響を受けません。そのため、再婚しても問題なく受け取れるのです。

どちらか一方が死亡した場合も同様に影響を受けませんので、年金分割をした側が死亡したとしても、分割を受けた部分については、年金分割を受けた側が生きている限り、受け取ることができます。

また、年金分割を受けた側が死亡しても、離婚してすでに年金分割をした側の年金へ分割済みの年金納付分が戻ることもありません。

Q:

離婚時に既に年金を受給していました。熟年離婚後の年金分割は可能ですか?

A:

離婚時にすでに年金受給者であっても、離婚が成立した日から2年以内に年金分割の手続きを行えば、年金分割が反映された年金額を受け取ることができます。

年金額が変わるのは老齢厚生年金という種類の年金になりますが、分割した側は年金が減り、分割を受けた側は年金が増えることになるでしょう。
年金分割が反映された年金額は、年金分割を請求した月の翌月分から分割後の標準報酬を基礎として計算した老齢厚生年金額に改定されます。

ただし、すでに65歳を過ぎていて、会社員期間の長かった配偶者がいた専業主婦(主夫)の老齢基礎年金には振替加算という加算が行われている場合があります。
振替加算込みの年金を受けている者が離婚して年金分割した場合は、分割の対象となった厚生年金加入期間と元々の本人の厚生年金加入期間を合算して240月以上になった場合は、振替加算は加算されなくなりますので注意しなければいけません。

あてはまる方は、振替加算と年金分割のどちらのほうが、年金額が多くなるのか確認してから手続きするようにしましょう。

Q:

相手に離婚後の住所を知られたくない場合はどうしたらいいですか?

A:

年金分割をするために調停や審判を行いたいものの、相手に離婚後の住所を知られたくないときは、裁判所への申立時に「非開示の希望に関する申出書」を提出しておくことをおすすめします。

この申出書は、提出書類のなかに相手に開示してほしくない書類があることと、その理由を裁判所に伝えるものです。必ずしも希望が通るとは限りませんが、提出しておけば、対象の書類を相手に見られずに済む可能性があるので、離婚後の住所を知られたくないときは提出しておいた方がいいでしょう。

また、相手に知られたくない情報が記載されている部分が、裁判所に知らせる必要がない部分であれば、該当部分をマスキング(黒塗りする等)して提出することも可能です。

離婚後の年金分割についてお悩みの方は、弁護士にご相談ください

離婚する際に年金分割をし忘れても、離婚後に年金分割することは可能です。
ただ、離婚した相手と直接、年金分割について話し合うのは苦痛という方もいらっしゃるかと思います。

離婚後の年金分割についてお悩みのある方は、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士にご依頼いただければ、元配偶者と直接交渉することも可能ですし、仮に交渉では合意に至らない場合には、調停や審判など裁判所の手続きも安心してお任せください。

年金分割は請求期限があったり、年金分割すると損をしてしまうケースもあるので、弁護士にサポートを受けながら進めていくのが有益です。
老後の生活を少しでも豊かにするために年金分割はとても大切な手続きです。

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監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

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