アルコール依存症と離婚について

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
「酒は飲んでも飲まれるな」という格言があるように、お酒は“適量”であるからこそ、良い効果をもたらすものです。
お酒好きな方は多くいますが、飲酒を続けていると、アルコール依存症になるケースもあります。アルコール依存症は、お酒を飲む人なら誰でもなるおそれのある、身近な病気です。アルコール依存症になった場合、身体にはもちろん、仕事や普段の生活にも悪影響を及ぼすことが考えられます。
配偶者がアルコール依存症になったら、夫婦関係を続けていくことに不安を感じてしまうのも当然です。それでは、配偶者のアルコール依存症を理由に離婚することはできるのでしょうか?本ページで確認していきましょう。
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アルコール依存症とは
お酒の飲み方を自分の意志で制御できず、お酒を飲まずにはいられない状態のことを、アルコール依存症と呼びます。お酒に含まれるアルコールは、依存性のある薬物の一つです。習慣的にお酒を飲むようになり、大量の飲酒を長い間続けること等が、依存症の原因となります。
アルコール依存症は否認の病ともいい、依存症になっている人の多くが、「私はアルコール依存症ではない」と否認するそうです。配偶者をアルコール依存症から回復させるためには、まずは自身が依存症に陥っていると認識させ、医師による治療を受けさせることができるかどうかが重要です。
アルコール依存症の診断について
単なるお酒好きとアルコール依存症は違います。単なるお酒好きの場合は、自分でお酒を飲む量をコントロールでき、控えることができます。
アルコール依存症に特有の症状は様々あります。それでは、アルコール依存症であるかどうかを医師が診断する際、具体的にどのようなことをチェックしていくのでしょうか?
医師の診断時に用いられる基準としては、WHO(世界保健機関)が定めている診断基準があります。過去1年間において、以下の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いた、または繰り返し出現した場合、アルコール依存症であると診断されます。
- ①渇望
飲酒したいという強い欲望あるいは切迫感がある。 - ②飲酒行動のコントロール
飲酒行動(飲酒の開始・終了、飲酒量の調節)に関して、自分の意志で制御することが困難である。 - ③離脱症状
断酒あるいは減酒したときに、離脱症状(手が震える、汗をかく、眠れない、不安になる等)がある。 - ④耐性の増大
お酒を飲み続けるうちに、次第にお酒に強くなった、あるいは高揚感を得るのに必要な飲酒量が増えた。 - ⑤飲酒中心の生活
飲酒のために本来の生活(仕事、家族との交流、友人との付き合い、趣味等)を犠牲にする。
アルコールの影響からの回復に要する時間(=酔いからさめる時間)が長くなった。 - ⑥有害な使用に対する抑制の喪失
心身に明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず、飲酒を続ける。
アルコール依存症を理由に離婚できるのか
配偶者のアルコール依存症を理由に離婚できるのかどうかは、離婚方法によって異なります。
協議による離婚の場合、相手の同意を得て当事者間の合意に至れば、離婚することが可能です。また、調停による離婚の場合も、基本的に当事者間が合意することで、離婚できます。
対して、裁判による離婚の場合、法定離婚事由に該当しなければ、裁判所に離婚を認めてもらうことはできません。「配偶者がアルコール依存症だから」というだけでは、離婚を認めてもらうのは難しいでしょう。ですが、事情によっては、法定離婚事由に当てはまるとして離婚を認めてもらえるケースもあります。詳しくは後ほど解説します。
離婚するためにも証拠集めをしましょう
アルコール依存症の方は、自分がアルコール依存症だと認めないことが多く、離婚理由を告げたところで、納得してもらえない可能性があります。また、裁判では、法定離婚事由に該当すると主張する内容を裏付ける証拠が必要です。
そのため、協議・調停・裁判、いずれの離婚方法の場合でも、離婚を成立させるためには、相手がアルコール依存症であることの証拠や、主張内容を裏付ける証拠を集めておくことが重要になります。
法定離婚事由にアルコール依存症は当てはまるのか
裁判による離婚の場合、裁判所に離婚を認めてもらうためには、法定離婚事由に該当する必要があります。ですが、法定離婚事由のなかに、“アルコール依存症”という文言はなく、「配偶者がアルコール依存症だから」という理由の離婚請求は、法定離婚事由には当てはまりません。
ただし、アルコール依存症がきっかけで発生した事情によっては、法定離婚事由に当てはまると判断されることがあります。法定離婚事由のうち、どの事由に当てはまる可能性があるのでしょうか?確認していきましょう。
なお、法定離婚事由については、下記のページで詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
アルコール依存症は回復の見込みがない強度の精神病?
アルコール依存症は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象になる精神疾患です。そのため、回復の見込みがない強度の精神病という法定離婚事由に当てはまるのではないか?とも思えます。
しかしながら、アルコール依存症は、ここでいう“強度の精神病”にはあたらないとされています。本人の努力や家族の協力によって回復し得る病気である、と考えられているためです。
悪意の遺棄?
アルコール依存症になったことで、収入の多くをお酒の購入費に使ってしまう方もいます。その結果、生活費を渡されない等、夫婦の同居・協力・扶助義務が履行されなくなった場合等には、悪意の遺棄という法定離婚事由に当てはまる可能性があります。
婚姻を継続し難い重大な事由?
配偶者がアルコール依存症で、お酒を飲むと暴力を振るわれる(=DVを受けている)という事情があるなら、その暴力行為が、法定離婚事由に規定されている婚姻を継続し難い重大な事由に当てはまる可能性があります。
また、アルコール依存症が原因で夫婦仲が悪くなり、夫婦関係が破綻してしまった場合にも、婚姻を継続し難い重大な事由があると判断してもらえることがあります。
離婚の同意が得られなければ別居してみる
離婚するためには、まずは当事者間で話し合い、「協議」による離婚を目指すことから始めるのが一般的な流れです。もし、配偶者から離婚の同意を得られなければ、別居してしばらく距離を置き、冷静に考える時間を作るのも一つの手です。別居の注意点については、下記のページをご覧ください。
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メールで相談するアルコール依存症を理由に離婚するときの後遺症について
アルコール依存症は、夫婦関係だけではなく、親子関係にも悪影響を与えるおそれがあります。
なかでも、アルコール依存症の親がお酒を飲んでは他方に暴力を振るう、暴言を吐くという場面を目にすること(=面前DV)は、心理的虐待にあたります。子供自身が直接的に何かをされているわけではなくても、心に大きな傷を負い、次第に感情を表に出しづらくなり、コミュニケーション能力を育めないという事態になってしまうことがあります。
このように、子供の頃の家庭内トラブルで心的外傷を負って大人になった、いわゆるアダルトチルドレンは、大人になってからも、過去のできごとにとらわれ、トラウマを抱えながら生きていくことになります。
子供の将来を心配して、アルコール依存症の配偶者との離婚を決意する方は多いのではないでしょうか?
面前DVについては、下記のページでも解説しています。ぜひご覧ください。
アルコール依存症が理由の離婚に関するQ&A
- Q:
アルコール依存症の妻が、離婚時に親権を獲得することはありますか?
- A:
アルコール依存症と言っても、程度には個人差があります。軽度のアルコール依存症の妻で、子供の監護・養育に問題がなければ、その妻が親権を獲得することはあるでしょう。
アルコール依存症の配偶者とスムーズに離婚するためにも弁護士にご相談ください
一度アルコール依存症になったら、完治することはないといわれています。回復を図ることはできるものの、家族の協力だけではなく、本人の努力も、アルコール依存症からの回復には欠かせません。
なんとかアルコール依存症から回復させようと様々手を尽くしても、なかなか事態が好転しなければ、どんどんストレスは溜まっていく一方でしょう。夫婦は助け合うものだとしても、離婚したいと思うのはやむを得ません。
配偶者のアルコール依存症を理由に離婚を考えた際には、弁護士への相談を検討してみてはいかがでしょうか。弁護士は、ご相談者様の状況に応じて、どのように離婚を進めていけば良いのか、適切にアドバイスいたします。
また、弁護士なら、配偶者との交渉を代わりに行うこともできます。アルコール依存症の配偶者と直接やりとりすることに不安を感じる方にとって、この点は大きなメリットになるかと思います。さらに、ご自身のみで対応するよりも、弁護士に相談・依頼して対応する方が、早期に離婚問題を解決できる可能性もあります。
スムーズに離婚して新たな一歩を踏み出せるよう、アルコール依存症の配偶者との離婚で悩んでいる方は、まずは弁護士にご相談ください。
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- 監修:谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員 弁護士
- 保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:41560)