養育費を強制執行(差し押さえ)する方法

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
養育費が支払われず困っている場合、給与から天引きするなどして強制的に支払わせることができないだろうかとお悩みの方もいるかと思います。このページでは、養育費を強制執行する方法を解説します。
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養育費の強制執行について
養育費は、借金の返済や慰謝料の請求とは異なり、強制執行において特別に保護されています。
養育費の強制執行は将来の支払い分まで差し押さえることができる
養育費の差し押さえは一般的な差押えとは異なり、支払われていない分に加えて、将来支払われる予定の分についても財産を差し押さえることが可能です。
養育費は毎月発生するため、養育費の支払いが滞るたびに強制執行手続きをしなければならないとなると、請求者にとって非常に手間になります。養育費の強制執行がされれば、その後は給与から毎月自動的に天引きされる形で将来分の養育費に対しても継続して強制執行がなされることになります。
養育費の強制執行で差し押さえることができる金額
借金の返済や慰謝料を支払わせるための強制執行では、原則として給与の手取り額の4分の1までしか差し押さえることができませんが、養育費の場合は、半分まで差し押さえることができます(なお、手取り額とは、給与から税金・社会保険料・通勤手当等を差し引いた金額を指します。)。
また、手取り額が66万円を超える場合には、手取り額の半分ではなく手取り額から33万円を引いた全額を差し押さえることができます。
なぜ養育費の強制執行は特別なのか
近年、離婚率が3割を超えるに伴い、離婚後の養育費の支払い件数も増加しているにもかかわらず、離婚後に養育費を毎月確実に受け取っているのは約2割程度に過ぎず、社会問題化しています。(厚生労働省作成「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要」参照)
しかしながら、養育費は子供の成長のためには必要不可欠な費用であり、その確実な受け取りを確保することが社会的にも要請されています。
そのため、通常の民事執行手続きによる差押え額と比較して大きな割合が差押えの対象となったり、一度の申立てにより将来受け取るはずの養育費に対する強制執行も進められるといった特別な対応がとることができるように、平成15年に民事執行法が改正されました。
養育費の強制執行の手続き
それでは、ここからは実際に強制執行を申し立てる際の手続きやその後の流れに関して、必要となる書類や情報等も含め説明していきます。
強制執行に必要な書類
強制執行を裁判所へ申し立てるためには、下記のような書類の提出が必要となります。
- 公正証書による合意書正本、調停調書、審判書、判決文等の債務名義
養育費の強制執行をするためには、公正証書による養育費を支払う旨の合意書、調停調書、審判書、判決文のいずれかが必要となります。公正証書による合意書以外は、裁判所が関与した書面でないと強制執行ができないと考えてください。
また、公正証書の場合は、「支払いを遅滞した場合は、強制執行をされても異議を唱えない」と明記した文言(これを「強制執行受諾文言」といいます)が明記されている必要があります。 - 執行分の付与
強制執行をする場合には、上記の債務名義に、執行文という「この債務名義により強制執行をすることができる」という文書を付けてもらう必要があります。
これを「執行文の付与」といいますが、公正証書の場合は公正証書を作成した公証役場で、調停調書等の場合は、それを作成した家庭裁判所で執行文の付与を受けることができます。 - 債務名義正本の送達証明書
公正証書が相手方に届いていることを証明する証明書であり、債務名義を作成した家庭裁判所、公証役場に申請すれば、交付してもらえます。審判書の場合は、確定証明書も必要です。 - 戸籍謄本(全部事項証明書)
公正証書の正本に記載された氏名と現在の氏名が異なる場合には必要となります。 - 住民票、戸籍附票
住所地が現在と異なる場合には、必要。ただし、発行から1か月以内のものが必要。 - 法人の資格証明書(法人の登記事項証明書又は代表者事項証明書)
給与を差し押さえる場合で、差押え先が法人の場合には必要となります。発行日から3ヶ月以内のものを提出します。
- 債権差押命令申立書表紙
- 当事者目録
- 請求債権目録
- 差押債権目録
上記、4つの書類は裁判所のホームページに記載例がありますので、それに従って作成することが可能です。
強制執行の手続きの流れ
- ①裁判所に対する民事執行手続き申立て
養育費を支払うべき相手方の住所地、あるいは勤務先・差押え先の金融機関を管轄する裁判所へ必要書類を提出します。 - ②差押え命令
申立て書類に不備がなければ、裁判所から差押え命令が出されます。相手方と差押え先の勤務先や金融機関に対し、送達書が送られます - ③取り立て
差押え命令が相手方等に送達されてから1週間経つと権利者自らが義務者に対して取り立てを行います。
強制執行の手続きをするには相手の勤務先などの情報が必要
強制執行をするためには、相手方の住所や差し押さえる対象の情報が必要となります。
給与の差し押さえをする場合には、相手方の勤務先の情報が必要となりますし、預金口座を差し押さえる場合には、相手方名義の預金口座の銀行名と支店名が必要となります。
これらの情報は、裁判所では調べてはもらえないため、あらかじめ自分で調べておく必要があります。
弁護士に依頼することで、勤務先に対して回答を求めることで、相手方の住所地や預金口座開設先は入手することが可能な場合がありますが、勤務先について探し当てるのはなかなか難しいでしょう。そんな場合には、探偵に依頼して勤務先を特定する方法がとられることもあります。
養育費の強制執行で差し押さえることができるもの
給与以外にも差し押さえできるものがあります。

・給与
義務者の月々の給与から天引きされることになります。
・預金口座
差押え命令送達時に預金口座にあった預金は全額差押えの対象となります。
金融機関名・支店名がわからなければ預貯金口座を差し押さえることはできないので、注意が必要です。
・土地や建物等の不動産
・貴金属や宝石といった動産
・生命保険
養育費未払いに基づく差押えに関しては、独身時から所有していた預貯金や不動産、独身時から加入していた生命保険等の特有財産も差押えができる可能性もあります。
離婚公正証書を作成していなかったら強制執行はできない?
離婚の際に、公正証書を作成していなかった場合に、強制執行ができなくなるわけではありません。
養育費が支払われなくなった時点で『養育費の請求調停』を裁判所に対して申し立てることで、強制執行の手続きに必要となる債権名義を手に入れることができます。
『養育費の請求調停』は、養育費の支払いに関する合意書を作成していなかった場合やそもそもその話し合いすらしていなかった場合であっても、申し立てることができます。
強制執行にかかる費用
- 収入印紙代:4000円(手数料)
- 予納郵券代:約2400円(各裁判所で異なります。)
遅延損害金などの間接強制金を定める強制執行もある
財産を差し押さえるというのは、強制執行のうち直接強制という種類です。
これに対し、財産を差し押さえるのではなく、義務者が負っている債務とは別に遅延損害金などの間接強制金を課すことで、心理的圧迫を加え、自発的に履行するよう促す間接強制という種類もあります。
強制執行するにしてもどのような方法をとるのが良いのか、弁護士に一度ご相談される事をおすすめします。
適切な手続きで養育費を受け取りましょう
養育費は、子供が安心して生活していくために不可欠な資金です。
養育費が確実に受け取れなければ、離婚後の生活はとても不安だと思いますが、本来養育費は、適切な手続きさえとれば、ほとんどの場合で養育費は確実に受け取れます。
離婚を考えている方、離婚したけれども養育費が支払われず悩んでいる方は、是非弁護士にご相談ください。
養育費が支払われずに困ったら、弁護士への相談がおすすめ
強制執行の手続きをご自身で進めることも、もちろん可能ですが、相手方の住所地や勤務先、口座情報を入手するだけでも大変であり、その後の書類作成に時間がかかってしまうと、養育費の未払い期間が更に延びてしまいます。
弁護士法人ALGにご相談いただければ、必要な情報の入手や強制執行の手続きなど、ご協力できることは多数あります。
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- 監修:谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員 弁護士
- 保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:41560)