セックスレスが原因の離婚で慰謝料請求できる?相場や手順などを解説

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
「配偶者に性行為を拒否される」など、セックスレスを理由に離婚に至るケースは一定数存在しています。
令和2年の司法統計年報によれば、「性的不調和」を離婚の原因と挙げた方は、妻側で6.5%、夫側で11.3%とされています。しかし、セックスレスは公に相談できる内容ではないため、離婚や慰謝料請求をするかどうかをお一人で悩まれている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、セックスレスによる離婚や慰謝料請求の可否などについて、詳しく解説していきます。
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セックスレスは離婚原因になる?
配偶者とのセックスレスは、法定離婚事由の一つである「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するため、離婚できます。
配偶者と離婚する方法には、夫婦が話し合い離婚を成立させる協議離婚とそれ以外の離婚調停・離婚裁判があります。離婚調停は、協議離婚と同様に話し合いで離婚の成立を目指しますが、間に裁判官や調停委員が入ります。
離婚裁判は、離婚調停をしても話し合いがまとまらなかったときの最終手段です。夫婦が話し合いで解決を図る協議離婚と離婚調停は、どのような理由で離婚を請求しても特に問題はなく、話し合いがまとまれば離婚が成立します。しかし、離婚裁判は、法律で認められている離婚理由(=法定離婚事由)がなければ、原則離婚が認められません。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
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セックスレスで離婚する場合、慰謝料は請求できる?
セックスレスによる離婚慰謝料の請求は、認められるケースと認められないケースがあります。
配偶者の有責行為が原因で離婚に至った場合は、有責配偶者に対して“離婚慰謝料”を請求できます。有責行為には、主に「DV・モラハラ」「不貞行為」などが挙げられ、セックスレスも配偶者に有責性があれば有責行為とみなされます。
離婚慰謝料は、有責配偶者が夫婦関係を破綻させ、非有責配偶者に精神的苦痛を与えたときに発生します。裁判所は、性交渉を夫婦生活における重要な要素と考え、セックスレスによる慰謝料請求を認めていますが、性交渉を夫婦双方が望んでいないケースも多く存在します。その実情を踏まえ、セックスレスに至った事情などを考慮し、慰謝料の請求可否を決めています。
慰謝料請求が認められるケース
セックスレスによる慰謝料請求は、次のようなケースで認められます。
- ● 夫婦のどちらかが一方的にセックスを拒絶するケース
夫婦の年齢が比較的若く肉体的・精神的に健康であり、「性交渉があって当然」の夫婦状況で一方が理由なく性交渉を継続的に拒絶すると、慰謝料の請求が認められます。 - ● 夫婦双方または一方が不貞しているケース
不貞行為は、慰謝料の請求が認められる有責行為に該当するため、離婚慰謝料だけでなく不貞慰謝料の請求も認められます。
セックスレスで離婚する場合は、「性交渉できる状態であるにもかかわらず性交渉をしようとしない」「性交渉をしようと努力しない」状況が必要です。これらの状況があると、慰謝料の請求が認められやすくなります。また、夫婦双方または一方が不貞を理由に性交渉を拒否していた場合は、相場よりも高い慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料請求が認められないケース
- ● 病気などでセックスができない
病気などでセックスができない場合は、本人に非が無いので慰謝料の請求はできません。 - ● 夫婦のどちらもセックスを望んでいない
例えば、高齢の夫婦では自然とセックスをしなくなったり、若い夫婦でも疲れてしなくなったりすることがあります。このように、お互いが望んでいない場合は双方に非が無いので慰謝料を請求することはできません。 - ● セックスレスの程度が軽い
例えば、3回に1回は応じてくれたり、3ヶ月に1回は性交渉があったりする場合は、慰謝料の請求は難しいでしょう。慰謝料の請求には大体1年以上のセックスレス状態であることが必要です。
セックスレスを理由とした離婚で慰謝料請求が認められた判例
【福岡高等裁判所 平成5年3月18日判決/事件番号:平成4年(ネ)628号】
事案の概要
原告(妻)と被告(夫)の間には長男をもうけましたが、夫婦の性生活は無いに等しく、妻が長男を連れて家を出て、夫に対し離婚を求める訴えを提起しました。
夫婦の性生活は婚姻後約5ヶ月内に2.3回と極端に少なく、長男出産後は全く性交渉が無い状態でした。その反面、夫は深夜ほとんど毎晩ポルノビデオをみて自慰行為を行っていました。
また、夫は、妻は夫との生活が安定せず、性生活が途絶えがちであったことに不満を抱いて、本件を提起しているだけに過ぎないと主張しました。
裁判所の判断
性生活に対する夫の態度は、正常な夫婦の性生活からすると異常というほかないなどと判断し、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして妻の離婚請求と慰謝料請求を容認し、夫に慰謝料120万円を支払うよう命じました。
セックスレスによる離婚慰謝料の相場はいくら?
慰謝料の金額はセックスレスの状況により異なりますが、相場は数十万~100万円程度でしょう。
もっとも、セックスレスといっても、その内容、程度、理由はケースバイケースといえます。
慰謝料の金額は、以下の事情によって増減します。
- セックスレスの期間や程度
- 婚姻期間
- 相手の収入
- 相手の職業
- 子供の有無 など
「慰謝料を請求できるのか」「具体的な慰謝料の金額を知りたい」場合は、離婚を得意とする弁護士にご相談されることをおすすめします。
慰謝料の相場や金額の決め方などについては、以下のページでも詳しく解説しております。
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セックスレスの慰謝料が相場より高額になるケース
セックスレスの慰謝料は、個別の事情によって相場以上の慰謝料が認められる可能性があります。有利な事情をいかに主張・立証できるかが高額な慰謝料を獲得するためのポイントです。
請求する側の事情
- 資産・収入が少ない
- 年齢が高い
- 初婚である(再婚の場合に比べ金額が高めになる)
- 相手の拒絶の態様が厳しい(相手が激しくセックスを拒絶したり、暴言を吐いたりした場合には、慰謝料が高額になりやすいです)
- 結婚してから一度もセックスしていない
- セックスを拒絶している側が不倫している
- 婚姻年数が長い
- 夫婦に未成年の子どもがいる
- 相手が、セックスをするための努力をしていない
- 財産分与の額が低い
請求される側の事情
- 資産を多く持っている、収入が高い
- 相手よりも年齢が高い
- 性行為をしようとする努力がない
- セックスレスのきっかけとなった不倫をしていた
- 夫婦間ではセックスレスであるのに、不倫相手とはセックスをしていた
その他の事情
- 婚姻期間が長い
- 子供がいる
- 財産分与の額が低い
- セックスレスの期間が長い(3年以上)
- 結婚してから一度もセックスがない
なお、不倫相手とセックスをしていた場合は「不貞行為」に当てはまり、セックスレスと不貞行為の慰謝料を請求することができます。
セックスレスの離婚慰謝料請求に必要な証拠
セックスレスによる離婚慰謝料を請求するには、「夫婦がセックスレスである事実」と「セックスレスの原因」を証明する必要があります。離婚慰謝料の請求には、相手の有責行為によって自分に精神的苦痛が生じた事実を証明する証拠が必要であり、証拠がなければ慰謝料の請求は認められません。
しかし、セックスレスは夫婦にとってセンシティブな問題であるため、客観的証拠による証明は困難といえます。そのため、裁判でも認められるような証拠を残していく必要があります。
セックスレスに関する日記やメモ
日記やメモには主に、次のことについて記録しましょう。
●日ごろの生活状況
配偶者が出社・帰宅時間、お互いの起床・就寝時間など生活のパターンを記録しましょう。これは、セックスレスの慰謝料請求をする際に、配偶者が「仕事などが忙しく、すれ違いの生活で性交渉する機会を持てなかった」という主張を覆すためです。
●性交渉に関する状況
あなたが配偶者に対し、性交渉を求めた日・求めた際の言動、相手の言動・反応を記録します。これらを記録することで、あなたが相手と性交渉を持とうと努力したにも関わらず改善されなかったことや、セックスレスの期間、拒否された回数などを証明できます。
日記は有効な証拠になり得ますが、「自分の都合のいいように後から書き換えた」と疑われないように、なるべく毎日続けて、手書きで書くようにしましょう。
メールや会話の録音データ
日記やメモが難しい場合には、メールや会話の録音データも有効な証拠となります。
●メール
メールで性交渉を誘った際の相手からのメールの返信を保存しておきましょう。
一連の流れのメールを定期的に保存しておくことで、相手がセックスを拒絶している事実の証拠となります。
●会話の録音
ボイスレコーダーでセックスについて話し合っているところを録音するのも一つの手です。
録音する際は相手の承諾は必要ありませんが、気づかれないよう細心の注意が必要です。
また、録音データは裁判になった際に裁判官に証拠として提出するため、音声が鮮明に記録されていることが重要です。
セックスレスで離婚慰謝料を請求する手順
セックスレスで離婚慰謝料を請求する際の手順は、以下のとおりです。
- ① 話し合い
- ② 離婚調停を申し立てる
- ③ 調停不成立の場合は離婚裁判に移行
配偶者と離婚したい場合は、理由がセックスレスでなくても、まずは話し合いで解決を図ります。
では、次項でもう少し掘り下げてみていきましょう。
①話し合い
話し合いによる離婚、いわゆる“協議離婚”では、どのような離婚理由でも双方が合意すれば離婚できます。話し合いによって相手が要求に応じれば、早期に離婚が成立する可能性が高まるだけでなく、相場よりも高額な慰謝料を支払ってもらえる可能性もあります。そのため、セックスレスの証拠を揃えたら離婚と慰謝料の請求について、配偶者と話し合いましょう。
話し合いで離婚や慰謝料について双方が合意した場合は、「離婚協議書」の作成をおすすめします。話し合った内容を記録しておけば、水掛け論となるのを防げます。また、離婚協議書を公正証書化すれば、合意内容を公証人が証書として作成し内容を証明してくれるため、トラブルとなるのをさらに防げます。
協議離婚について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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離婚の切り出し方のポイント
セックスレスは夫婦にとってデリケートな問題であるため、落ち着いて離婚を切り出す必要があります。
配偶者に離婚したい旨を伝えたら、セックスレスで自分が感じている気持ちを正直に話しましょう。また、夫婦の話し合いでは、「感情的にならずに話す」「相手の気持ちを理解する」などの努力も重要です。
それでも、話し合いがまとまらない場合には、相手が離婚に同意するまで話し合いを継続するか、離婚調停の申立てを検討する必要があります。
内容証明郵便による請求も可能
直接の話し合いが難しかったり、別居していたりする場合は、「内容証明郵便」による慰謝料請求も有効です。
内容証明郵便とは、郵便局の事業のひとつで、「いつ、誰が、誰に、どのような内容」の書面を送ったかを証明してくれる郵便です。
内容証明が届いたからといって、慰謝料を支払わないと法的に罰せられるという法的な効力はありませんが、急に内容証明が届くことで、相手に心理的なプレッシャーを与えることができます。
また、弁護士に依頼することで、弁護士名で内容証明郵便を送付できるため、より心理的プレッシャーを与えることが期待できます。
内容証明郵便は、郵便局で同じ内容の郵便を5年間保管してくれます。そのため、「慰謝料を請求した」という証拠としても有効です。
②離婚調停を申し立てる
夫婦が話し合いで離婚できなかった場合は、次の手段として“離婚調停”に移行するのが一般的です。
家庭裁判所に申し立てると、裁判官1名、調停委員2名(基本は男女1名ずつ)のメンバーで構成される調停委員を仲介役に離婚や慰謝料に関する話し合いが行われます。
離婚調停は、協議離婚と同様に話し合いで解決を図る手続きであるため、ある程度離婚条件などを自由に取り決められます。また、調停委員が夫婦それぞれから個別に意見を聴取するため、相手と顔を合わせずに話し合いを進められます。この点は、冷静な話し合いを実現させ、協議離婚よりも円滑に解決できる離婚調停の大きなメリットといえます。
「離婚調停」については、以下の各ページにて詳しく解説しています。
ぜひ併せてご参考になさってください。
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③調停不成立の場合は離婚裁判に移行
調停の話し合いがうまくいかず、調停不成立となった場合は離婚裁判に移行します。
離婚裁判は夫婦それぞれの主張や提出した証拠をもとに、裁判官が離婚や慰謝料について最終的な判断をします。
セックスレスを理由に慰謝料請求したい場合は、セックスレスがあったことを裏付ける証拠を提出することが必要不可欠となります。
しかし、どのようなものが証拠になるのか不安な方もいらっしゃるでしょう。また、裁判の手続きは一般の方では分からないことも多く不安になるのではないでしょうか。
裁判は弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士は法の専門家として裁判が有利になるよう、証拠を探したり、書類を作成したりします。
また、弁護士は依頼者の代理人として法廷で主張・立証していくことが可能です。おひとりで裁判を行うよりも、弁護士が力になってくれている方が安心するのではないでしょうか。
離婚裁判については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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セックスレスの慰謝料に関するQ&A
- Q:
婚姻期間5年間で一度も性交渉がありません。離婚慰謝料はいくらぐらいになりますか?
- A:
セックスレスの一般的な慰謝料相場は、数十万~100万円程度とされています。
ただし、婚姻期間に比してセックスレスの期間が長い場合は、慰謝料が増額する傾向にあります。ご相談の内容は、セックスレスの期間の長さに加え、婚姻期間に一度も性交渉がない点から慰謝料の増額が見込める事案といえます。過去には、婚姻期間5年半で一度も性交渉がないケースで慰謝料200万円の判決が下された判例もあります。そのため、5年間一度も性交渉がない点を証明できれば、相場よりも高額な慰謝料が認められる可能性があるでしょう。
おひとりでご不安な場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
- Q:
子供を望んでいるのですが夫から子作りを拒否されています。 離婚慰謝料は請求できますか?
- A:
子供を望んでいることを知りながら、特段の理由もなく子作りを拒否している場合は、夫婦の協力義務に違反しているとして、慰謝料を請求できる可能性があります。
しかし、慰謝料を請求するためには、子作りを拒否されたことを証明できる証拠が必要です。
証拠には、日常生活の記録や子作りに関する話し合いの録音などで「子作りできる状態であるのにも関わらず、しようとしない」という証明になるような証拠を集めましょう。
- Q:
セックスレスを理由とした離婚では、慰謝料に加えて養育費も受け取れますか?
- A:
離婚の原因がセックスレスだとしても、親権を獲得した側は非親権者に養育費を請求できます。
慰謝料は離婚による精神的苦痛に対する補償であるのに対し、養育費は子供の健やかな成長のために必要な費用であり、性質が異なります。そのため、慰謝料と養育費は別で受け取ることができます。
養育費は離婚理由とは別問題であり、どのような離婚理由であれ、親権者は養育費を受け取る権利があります。また、基本的に離婚理由が養育費の金額に影響することはありません。
養育費については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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セックスレスが原因の離婚・慰謝料請求は弁護士にご相談ください
セックスレスは人に話しにくい話題であるため、一人で悩まれる方が多くいらっしゃいます。誰にも話せず、「自分がおかしいのか」「普通じゃないのか」など、心に負った傷も日に日に大きくなります。そういった日々の中でようやく決断した離婚についても、話し合いが難航し、進むべき道が見えなくなるときがあります。
そのようなときには、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、ご相談者様の状況を詳しくヒアリングし、離婚や慰謝料の請求について法的な観点からアドバイスができます。弁護士に手続きを一任することで、より有利な条件で離婚や慰謝料請求ができる可能性を高められます。
セックスレスで離婚・慰謝料請求をお考えの方は、おひとりで悩まず、まずは私たちにご相談ください。
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- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)