離婚時に生命保険を見直すポイント|生命保険は財産分与の対象

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
離婚する際には、家をどうするか、子供の親権や養育費はどうするかといったように、決めなければならないことが多くあります。そんななかで忘れられがちなのが、【生命保険】です。
結婚を機に、今後のことを考えて生命保険に加入した方もいるでしょう。一般的には配偶者を生命保険の受取人にしているケースが多いですが、離婚したら受取人を変えたいと考えませんか?このように、生命保険の見直しも、離婚前に行っておくべき大切な作業です。解約するのか、それとも継続して契約内容を変えるのかなど、きちんと考えておきましょう。
このページでは、離婚時の生命保険について、財産分与に関する内容や見直す際のポイントなども含めて、詳しく解説していきます。
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離婚したら生命保険はどうなるのか?
離婚すると、家族構成が変化するため、加入している生命保険の契約内容を見直す必要があります。生命保険を解約するのか、継続するのか、また、継続する場合、契約者や受取人の変更が必要かどうか、個別の状況によって慎重に判断しなければなりません。
次項目より、具体的にみていきましょう。
生命保険を解約する場合の注意点
生命保険を解約する場合には、次のような注意点があります。
- 再加入したときに保険料が高くなるおそれ
生命保険の保険料は、加入時の年齢が上がるほど高くなる傾向にあります。そのため、解約した後、再び保険に加入するとき、これまでよりも保険料が高くなることが予想されます。 - 健康状態が悪いと再加入できないおそれ
解約し、再び保険に加入しようとしても、健康状態が悪いと加入できなかったり、加入できても保険料が高くなったりするおそれがあります。 - 払い込んだ保険料よりも解約返戻金の金額が少なくなるおそれ
解約返戻金とは、保険を解約した際に戻ってくるお金のことです。ただ、解約返戻金があるからといって、必ずしもそれまで払い込んだ保険料が全額戻ってくるわけではありません。保険料の支払い年数によっては、払い込んだ保険料よりも少なくなるおそれがあります。
もう生命保険に加入する気はない、解約返戻金で損することもない、といったようなケースなら解約を検討してもいいかと思いますが、ご自身の今後のことを考え、慎重に判断するようにしましょう。
離婚後も生命保険を継続する場合の見直し方
離婚後も生命保険を継続する場合には、主に次のような流れで見直していきます。
- ①保険の契約内容や保障内容を確認する
生命保険に加入した際に受け取った「生命保険証券」を見れば、契約内容や保障内容を確認できます。また、保険会社に直接問い合わせて確認するなどの方法もあります。 - ②必要に応じて「契約者」や「受取人」を変更する
①で確認した内容から、「契約者」や「受取人」を変更したいときは、保険会社に連絡して手続きをします。変更が必要なケースの具体例は、次項目以降で紹介します。 - ③必要に応じて住所や姓、支払い方法なども変更する
離婚によって、「契約者」「被保険者」「受取人」いずれかの住所や姓が変わった場合には、これらの変更手続きが必要です。また、例えば口座振替からクレジットカード払いに変更したいなどの希望があれば、支払い方法の変更手続きも行います。
「契約者」の変更が必要なケース
例えば、①「契約者」「被保険者」「受取人」がすべて【妻】になっているケースでは、いずれも変更の必要はないでしょう。
一方で、例えば、②「契約者」が【夫】、「被保険者」「受取人」が【妻】になっているケースでは、「契約者」を【夫→妻】に変更する必要が生じるかと思います。保険料を支払うのは基本的に契約者ですが、離婚後も元夫に保険料を支払ってもらうというのは考えにくいからです。妻が契約を継続したいと考えるなら、契約者を自分(妻)に変更します。ただし、契約者の変更を含め、保険の契約内容の変更ができるのは契約者だけですので、離婚前に夫婦間で相談して手続きしておきましょう。
「受取人」の変更が必要なケース
生命保険を継続させる場合に、「契約者」の変更が必要なケースがあることを紹介しましたが、保険金の「受取人」の変更が必要となるケースもあります。続けて詳しくみていきましょう。
受取人が配偶者になっている場合

例えば、「契約者」「被保険者」は自分であるものの、「受取人」が配偶者になっている場合には、「受取人」を自分の親または子供などに変更する必要が出てくるでしょう。変更しないままでいると、離婚後、自分に何かあった時、保険料は元配偶者に支払われることになります。こうした事態は避けたいと思うのは自然なことですので、本当に受け取ってほしいと望む人に受取人を変更します。
受取人を子供にすべきケースとは
離婚する際に未成年者がいると、養育費の支払いが発生しますが、養育費を支払う側が「被保険者」になっている場合には、「受取人」を子供に変更した方がいいといえます。
養育費は、原則として未成年者が成人するまで支払わなければなりません。しかし、支払う者が亡くなった場合、養育費の支払い義務は相続されず、亡くなった時点で終了します。このとき、支払う者が「被保険者」で子供が「受取人」になっていれば、子供が死亡保険金を受け取れるので、その保険金を養育費にあてることができます。
再婚する場合も子供を受取人にすべきか?
再婚する場合には、子供のほかにも「受取人」にすべき人の選択肢は広がります。例えば、元夫が「契約者」かつ「被保険者」であり、元夫が再婚する場合には、再婚相手を「受取人」にしたいと考える方が多いでしょう。
なお、「契約者」と「被保険者」が同じであれば、契約者はいつでも自由に受取人の変更ができます。受取人の同意は不要です。
生命保険料控除を受けたいとき
生命保険料控除を受けたいときは、「受取人」を子供や父母などに変更しておく必要があります。生命保険料控除とは、その年に支払った生命保険料に応じて、税金の計算のベースとなる所得金額から一定額を差し引くことができるという制度です。その結果、住民税や所得税の負担が軽減されます。
ただし、生命保険料控除の対象となるのは、「受取人」すべてが、次のいずれかになっているケースに限られます。
- ①保険料を支払う人(通常は「契約者」)
- ②①の配偶者
- ③①の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)
したがって、離婚後も受取人が元配偶者のままである場合には、生命保険料控除は受けられません。離婚する際は早急に受取人を変更しておきましょう。
生命保険は財産分与の対象
一生涯保障を受けられる終身保険のように、“積立型”の生命保険は、解約時に解約返戻金が発生するため、財産分与の対象になります。一方で、一定期間だけ保障が受けられる定期保険のように、“掛け捨て型”の生命保険の場合、通常は解約しても解約返戻金はないので、財産分与の対象にはなりません。積立型と掛け捨て型の違いを簡単にまとめると、下表のとおりです。
積立型 | 解約時に解約返戻金を受け取れたり、保険期間が満了した時に生存していれば満期保険金を受け取れたりするタイプの保険のこと。 <メリット>貯蓄性がある <デメリット>同じ保障内容でも、掛け捨て型に比べて保険料が高い |
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掛け捨て型 | 保険料がほぼ返ってこないタイプの保険のこと。通常、解約返戻金はなく(あっても少額)、満期保険金もない。 <メリット>積立型よりも安い保険料で、同じ保障を受けられる <デメリット>貯蓄性がない |
そもそも財産分与とは何なのか、詳しい内容は下記のページをご覧ください。
生命保険を解約しないと財産分与はできない?
「自身が契約を継続する代わりに解約返戻金に相当する額の半分を相手に支払う」といったように、生命保険を解約せずとも財産分与することは可能です。
こうした方法をとるときは、まずは保険会社に問い合わせ、財産分与の基準時(別居時または離婚時)での解約返戻金の金額を確認します。そして、その金額のうち相手に分け合うべき金額(基本的に2分の1)を支払い、ご自身が契約者として生命保険を継続していくこととなります。
生命保険を解約し、受け取った解約返戻金をそのまま分け合うのが最もシンプルですが、このように継続した状態で財産分与することもできますので、ご安心ください。
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メールで相談する離婚で生命保険を見直す際のポイント
離婚によって家族構成に変化が生じると、重きを置くべき保障もおのずと変わってきます。「誰のために、どのような保障の充実を図るべきか」といったことを意識して、生命保険の見直しを行うようにしましょう。
子供の親権者になる場合
離婚する際に子供の親権者になったら、自分に万一のことがあったときに残された子供の将来を考え、死亡保険金の保障額を増やすなど、保障を手厚くすることを検討した方がいいでしょう。ただ、今後おひとりで子供を育てていくことになるので、日々の生活が苦しくならないよう、月々の保険料を収入に見合った金額に調整することも大切です。
また、病気や怪我などで収入が減少するリスクに備え、生命保険とは別に医療保険に加入することも検討した方がいいかもしれません。
子供の親権者になった方は、子供の将来を見据えて生命保険を見直すことが重要です。自分に何かあってもできる限り子供に負担がかからないよう、しっかりと考えましょう。
親権者にならない場合・子供がいない場合
離婚する際に親権者にならなかったとしても、子供の養育費を支払う義務はあります。自分にもしものことがあったとき、将来の子供の養育費分を少しでも残せるよう、死亡保険金の受取人を子供に変更しておくなど、離れて暮らす子供の将来を考えて、保険の見直しを検討した方がいいかと思います。
一方で、子供がいない場合には、保障を減らし、独身者と同じくらいの保障内容にしてもいいでしょう。なお、受取人が配偶者となっている場合は、受取人を親や親族にするなど、受取人の変更を検討する必要が出てきます。
離婚時の生命保険に関するQ&A
- Q:
婚姻前から加入していた生命保険も財産分与の対象ですか?
- A:
婚姻前から生命保険に加入し、婚姻後も加入し続けている場合には、婚姻中に支払っていた保険料分が財産分与の対象になります。婚姻前(独身時代)に支払っていた保険料分は、財産分与の対象にはなりません。
一般的には、財産分与の基準時(別居時または離婚時)の解約返戻金から、婚姻時の解約返戻金を控除した金額を、財産分与の対象として分け合うことになります。
- Q:
離婚時、子供の生命保険も財産分与の対象となりますか?
- A:
“共有財産”とは、婚姻中に夫婦が協力して形成・維持してきた財産のことです。例えば、婚姻中に働いて得た収入や、その収入で購入した家や車などが共有財産になります。子供の生命保険が、解約返戻金が生じるものであり、その保険料を夫婦の共有財産から支払っていたのなら、財産分与の対象となり得ます。
一方で、相続して得た財産や、結婚する前に各自で貯めたお金などは共有財産にはならず、“特有財産”といって、財産分与の対象からは外れます。
- Q:
離婚の際、生命保険について取り決めた内容は書面に残しておいた方がいいですか?
- A:
離婚の際、生命保険について取り決めたときは、その内容を書面に残しておいた方がいいです。口約束だけで済ませてしまうと、あとで言った言わないの争いになってしまうおそれがあるからです。
生命保険の財産分与の仕方や受取人の変更など、生命保険に関する取り決め内容は、「離婚協議書」のなかに記載することができます。なお、作成した離婚協議書は「公正証書」にしておくといいでしょう。より証拠能力が高くなるというメリットがあります。
取り決めた内容を書面に残すときは、その記載内容が非常に重要です。曖昧な記載があったり、抜け漏れがあったりすると、後々トラブルが発生したとき、適切な対処がとれなくなってしまう場合もあります。こうした事態を防ぐためにも、不安がある方は弁護士に相談し、書面の作成を進めていくといいでしょう。
- Q:
離婚により親権がなくなった子供でも、生命保険の受取人に指定することはできますか?
- A:
離婚によって親権をなくしても、子供を生命保険の受取人に指定することは可能です。一般的に、生命保険の受取人として指定できるのは、被保険者の「配偶者」または「2親等内の血族」とされていることが多いです。この点、親権の有無は関係なく、離婚後も親子は1親等の血族になります。
ただ、生命保険の受取人の指定については、契約されている保険会社に個別に問い合わせることが確実です。そのうえで、受取人を子供に変更することを離婚条件とする場合には、離婚協議書などをどのような文言で作成するべきか、弁護士にご相談ください。
離婚時の生命保険についてのご相談は、経験豊富な弁護士へお任せください。
離婚するにあたり、生命保険を解約するか、それとも継続するか、継続するにしても受取人は誰にするかなど、判断に悩むでしょう。子供の有無や個別の事情によって、どの選択をした方がいいのかは異なるので、慎重に判断することが大切です。
離婚時には決めるべきことが多くあり、相手と揉めてしまうこともあるかと思います。そんななかで、生命保険についても取り決めていくというのは、とても負担のかかることでしょう。弁護士なら、相手との交渉を代わりに行うことができますし、生命保険等の取り決め内容を「離婚協議書」にまとめる際にサポートすることも可能です。また、生命保険の財産分与についても適切にアドバイスいたします。
あとで後悔する事態とならないよう、離婚時の生命保険をめぐる相手との交渉等でお困りのときは、離婚問題の経験豊富な弁護士にご相談ください。
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- 監修:谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員 弁護士
- 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)