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熟年離婚

熟年離婚でよくある理由と離婚に必要な準備

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
この記事の監修
弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

長年連れ添った配偶者と別れ、心を新たに第二の人生を送りたい、そのように考えて熟年離婚する方もいらっしゃることでしょう。しかし、熟年離婚を機に経済的に苦しくなったり、孤独感に苛まれたりして熟年離婚を後悔する場合もあります。また、熟年離婚したいと思っても、夫婦間で争いが生じ、なかなか離婚することができないケースもあります。

熟年離婚するということは、その後の人生を左右する大きな決断です。後悔せず、そしてきちんと離婚を成立させるためには、どのようなことに注意した方が良いのでしょうか。本記事では、離婚のなかでも熟年離婚に焦点を当てて、説明していきます。

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熟年離婚について

熟年離婚の原因(浪費癖)

熟年離婚は、長年の結婚生活に終止符を打ち、離婚する場合に用いられる言葉です。明確な定義はありませんが、年齢が熟年層の夫婦が離婚することではなく、長年連れ添った夫婦が離婚することを指すものとされることが多いです。

つまり、離婚時の年齢ではなく、婚姻期間によるということです。なお、“長年”とは、一般的には20年以上とされています。1990年代後半から、メディアの影響を受けて、「熟年離婚」という言葉が広く認知されるようになりました。

熟年離婚の原因・理由

熟年離婚に至る原因・理由とは

熟年離婚に至る原因・理由は、個々の夫婦関係によって様々あります。では、具体的にどのようなことが熟年離婚の原因・理由になり得るのか、確認してみましょう。

熟年離婚の原因(相手の顔を見ることがストレス)

相手の顔を見ることがストレス
定年退職前は、お互いが働いていたり、片方が専業主婦(夫)であったりして、平日は離れており、休日は一緒に過ごすという夫婦が多いことでしょう。ところが、定年退職後、夫婦が2人でいる時間は長くなります。そのため、毎日一緒にいることに耐えられなくなってしまったり、それまで気づかなかったお互いの嫌なところが見えてしまったりして、相手の顔を見ることがストレスになり、熟年離婚を決意する方もいます。

価値観の違い、性格の不一致
熟年離婚のみならず、通常の離婚でもその原因で多いとされているのが、価値観の違いや性格の不一致です。他人からみて明らかなことではありませんが、相手と価値観が違ったり、性格が合わなかったりすると、本人にとっては精神的にとても辛いでしょう。結婚した当初から、このようなズレに気づいていたものの、長年耐え続け、月日を経るごとにストレスが蓄積され、ついに我慢の限界に達して離婚に至ることがあります。

夫婦の会話がない
結婚当初は会話が弾んでいたものの、だんだんと会話が減っていき、後年はほとんど会話がなくなってしまう夫婦もいます。お互いが、息苦しさを感じず、その空気が良いと思っているのであれば問題ありませんが、どちらかが会話がないことに不満を感じている場合、今後も一緒に生活することに耐え切れず、熟年離婚に至ることがあります。

熟年離婚の原因(配偶者の自立)

配偶者の自立
それまでは専業主婦(夫)であった配偶者が社会復帰し、外で働くようになるというケースもあります。自分で収入を得られるようになったことで、自信がつき、生活費を相手に依存する必要もなくなります。このように、離婚後の経済的な不安を払拭できたことがきっかけで、熟年離婚を決意する方もいます。

子の自立
親が離婚することで、子の養育に悪影響を及ぼすのではないか、離婚後の子の学費や生活費を賄えないのではないか、と心配に思われる方もいるでしょう。このように、子に関する懸念があることで、離婚したいと思っていてもなかなか踏み切れずにいるケースもあります。そのような場合、子が成年になる・就職して家を出た・結婚して自身の家庭を持った等、子の自立をきっかけに、熟年離婚を決意する方もいます。子が自立することで、離婚をためらう必要がなくなるためです。

熟年離婚の原因(浪費癖)

借金、浪費癖
配偶者に借金や浪費癖があることは、家計を苦しめます。長年にわたって配偶者に借金や浪費癖があり、改善しない場合、今後も改善することはないだろうと諦めてしまわれるでしょう。このように、配偶者に借金や浪費癖があることで熟年離婚に至る夫婦もいます。
熟年離婚と借金についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

介護
熟年離婚する夫婦は、両親の介護が必要になる年代であることが多いです。介護は、身体的にも精神的にも労力を要するものです。実の両親の介護ならまだしも、配偶者の両親(義父母)の介護はしたくないと思われる方もいるでしょう。また、義父母の介護に対し、配偶者が全く協力してくれなかったり、ねぎらいの言葉がなかったりすると、不満は募っていきます。さらに、長年抱いてきた配偶者への不満から、将来配偶者の介護をしたくないと思ってしまうこともあるでしょう。このように、義父母や配偶者の介護をしたくないことが、熟年離婚の原因になる場合もあります。

退職金がもらえる年齢
配偶者が退職金をもらえる年齢になったタイミングで、熟年離婚する夫婦もいます。専業主婦(夫)の方のように、離婚後の経済的な不安を抱えている方にとって、退職金というまとまったお金はとても大切です。そこで、配偶者が定年退職するまで待ち、離婚を切り出すという、計画的な熟年離婚をする方もいます。

年金分割ができる
専業主婦(夫)の方は、第三号被保険者に該当している場合が多いです。このような方は、離婚後、年金を受給する際に、基本的には国民年金しか受け取ることができないため、老後に不安を感じる方もいるでしょう。そこで、年金分割という制度を利用することにより、婚姻期間中の厚生年金記録(※現在は厚生年金に一元化されている共済年金の記録を含む)を夫婦間で分割することができ、分割した厚生年金記録に基づいた厚生年金を受け取ることができます。
このような年金分割制度の整備も、熟年離婚を後押しする一つの要因になっていると考えられます。

身体的、精神的暴力
身体的、精神的暴力等のいわゆるDVを受けていたことから、熟年離婚を決意する方もいます。身体的暴力とは、殴る・蹴る・物を投げつけるといった行為のことであり、精神的暴力とは、無視する・罵倒する・監視するといった行為のことです。テレビ等でよく耳にする「モラハラ」も、精神的暴力の一種です。
DVを受けている方は、子が成長するまで我慢していたり、自身がDVを受けているとは気づいていなかったりすることがあります。そのような方が、子の成長により熟年離婚を決意したり、子からの助言やとあることがきっかけとなり、自身がDV被害者であることに気づき、熟年離婚を決意したりすることがあります。

浮気
浮気は、熟年離婚に限らず、離婚の原因・理由の上位に挙げられるでしょう。特に熟年離婚の場合は、長年配偶者の浮気に悩まされているケースが考えられます。子のことや経済的な事情等を考えたうえで我慢していたものの、そのような懸念事項が解消されたり、とうとう我慢できなくなったりして、熟年離婚を決意するということもあるでしょう。

原因・理由によっては、熟年離婚できない場合もある

そもそも、離婚はどのように成立するのかを確認してみましょう。
まず、夫婦双方が合意していれば、原因・理由がどのようなものであれ、離婚は成立します(協議離婚)。しかし、話し合いがまとまらず、協議離婚が成立しない場合には、調停や審判、最終的には裁判に至ることがあります。裁判に発展した場合、裁判所に離婚を認めてもらうためには、民法上の離婚事由(民法770条)に該当している必要があります。

したがって、裁判に発展した場合には、熟年離婚の原因・理由が民法上の離婚事由に該当していなければ離婚を認めてもらえず、熟年離婚できないことがあるのです。

熟年離婚は原因・理由によってできない場合もあるので、弁護士に相談してみましょう

熟年離婚には、様々な原因・理由があることがお分かりいただけたかと思います。熟年離婚に特有のことから、熟年離婚に限らず、離婚全般にいえることまで、多岐にわたります。さらに、個々の夫婦関係によっては、上記で挙げた例の他にも、熟年離婚に至る原因・理由は多くあるでしょう。

しかし、夫婦間の話し合いがまとまらず、裁判にまで発展した場合、熟年離婚の原因・理由によっては、離婚を認めてもらえず、熟年離婚できないことがあります。

熟年離婚することを考えているものの、ご自身の状況で離婚を成立させるために、どのように進めていけば良いのか悩まれた場合には、法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

熟年離婚のメリット、デメリット

メリット

熟年離婚に至る原因・理由は様々ありますが、配偶者や配偶者の親族に、何かしら不満やストレスを感じていたものの、長年耐え続けていたケースが多いでしょう。熟年離婚することで、このような「結婚生活で我慢していた不満やストレスから解放される」というのは、熟年離婚の大きなメリットです。

また、「趣味や仕事、恋愛等、新たに第二の人生を自由に歩むことができる」ということも、熟年離婚のメリットとして挙げられます。熟年離婚することで、配偶者のことを気にすることなく、自身のやりたいことを自由に行うことができます。趣味に没頭したり、今まで専業主婦(夫)であった方は社会復帰したりできることはもちろん、別の方と新しい恋愛をして、再婚することも可能です。

デメリット

配偶者と別れて一人になりたいと思い、熟年離婚したとしても、離婚後に孤独を感じる方もいます。長年生活を共にしてきただけに、一人でいることに慣れず、周囲の夫婦や家庭を目にすることで余計に孤独を感じ、寂しくなってしまうのでしょう。このような「孤独感」が、熟年離婚のデメリットとして挙げられます。

また、「経済的な不安」も熟年離婚のデメリットの一つにあります。熟年離婚すると、夫婦間で財産分与することになりますが、働いていた方にとっては、財産分与が大きな負担になることがあります。一方、専業主婦(夫)であった方にとっては、社会復帰しようと思っても、経験不足等からなかなか定職に就けず、結婚していたときよりも生活が苦しくなることがあります。

その他、「家事の負担」を、熟年離婚のデメリットとして感じる方もいるでしょう。家事を一方に任せていた方にとっては、熟年離婚することで、自身ですべての家事をやらなければならなくなり、負担になることがあるためです。

熟年離婚に必要な準備

熟年離婚したいと考えている方は、財産分与や年金分割等を把握し、離婚後の生活費をどのくらい確保できるかを、事前にきちんと確認しておくことが大切です。また、離婚後の居住場所についても、確認と準備をしておきましょう。そして、夫婦間で争うことなく、相手方に合意してもらって協議離婚を成立させるために、どのように進めていけば良いのかも、確認しておいた方が良いといえます。

熟年離婚に必要な準備についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

専業主婦(夫)

専業主婦(夫)の方にとっては、熟年離婚するにあたり必要な準備のうち、生活費の確保が特に重要になります。財産分与や年金分割等で得られるお金だけでは、今後の生活費が十分あるとはいえず、社会復帰してフルタイムで働くことになる方もいるでしょう。離婚後の経済的不安を拭うためにも、就職活動を含めた離婚後の生活費の確保について、きちんと確認し、準備しておいた方が良いといえます。

専業主婦(夫)の方の熟年離婚について、詳しい内容は下記の記事をご覧ください。

もし熟年離婚を考えているなら、まず弁護士に相談してみましょう

できる限り配偶者と揉めずに熟年離婚するため、そして、熟年離婚することで、経済的な不安や居住場所の不安を感じて後悔してしまわないためにも、熟年離婚することを決めたら、きちんと必要な準備を行うことが大切です。

しかし、財産分与や年金分割、離婚の進め方等については、個別の状況によって複雑になるケースもあります。また、居住場所の確保については、手続が必要になることはもちろん、持ち家であった場合には財産分与に関わりますし、賃貸であった場合には、賃料が離婚後の経済的負担になる等、確認・準備しておくことは多くあります。このように、熟年離婚に必要な準備については専門知識を要し、労力や手間がかかることもあります。

法律の専門知識を有する弁護士に相談することで、ご自身の状況に応じた適切なアドバイスを受けることができます。熟年離婚に必要な準備について、お困りの場合には、まず弁護士にご相談ください。

熟年離婚の理由

妻から

熟年離婚に至る原因・理由は様々ありますが、特に妻から夫に対して熟年離婚を切り出す場合には、下記のような理由によることがあります。

  • 夫が家事や子育てに全く協力してくれない
  • 夫の両親(義父母)の介護を押し付けられた
  • 定年退職後、夫がずっと家にいることが耐えられない
  • 姑や小姑等、夫の親族との関係が上手くいかない
  • 夫が過去にした浮気を許せない

夫から

一方、特に夫から妻に対して熟年離婚を切り出す場合には、下記のような理由によることがあります。

  • 妻の生活態度や家事、子育てに不満がある
  • 妻の気持ちを確かめたい(結婚当初に比べて、だんだんと会話が減ってきたこと等により、妻に愛されているか不安になり、離婚を切り出すことで妻の反応を伺いたいと考えている夫もいます。)
  • 妻の浮気
  • 妻以外に好きな人ができた

熟年離婚のタイミング

熟年離婚は、夫から妻に対して切り出されることもありますが、妻から夫に対して切り出すケースの方が圧倒的に多いようです。また、熟年離婚を切り出すタイミングとしては、夫の定年退職時や、子が成長して自立したときが挙げられます。

は、熟年離婚を切り出された方は、どのように対応すれば良いのでしょうか。まずは、夫婦間でよく話し合いましょう。相手が熟年離婚したいと思うに至った原因・理由に気づき、改善することで、相手の気が変わり、離婚せずにもう一度やり直すことができるかもしれません。話し合いに応じてもらえない場合には、知人や子、親族に仲介してもらい、話し合いを行うという手段もあります。また、プロのカウンセラーに相談し、熟年離婚を回避するためのサポートをしてもらうというのも、対応策の一つとなります。

熟年離婚の手続き

熟年離婚の場合も、通常の離婚の場合と同様の手続を行います。
まず夫婦間で話し合いを行い、双方が合意すれば、離婚は成立します(協議離婚)。

双方が合意に至らなかった場合や、そもそも話し合いができない場合には、家庭裁判所に調停の申立てを行い、家庭裁判所の調停委員会を介入させて話し合いを行います。調停が成立すれば、離婚は成立します(調停離婚)。

調停も不成立となった場合、家庭裁判所の判断で審判がなされ、離婚が成立する(審判離婚)こともありますが、ケースとしては少なく、多くの場合で裁判を起こすことになります。家庭裁判所の判決で離婚が認められたら、離婚は成立します(裁判離婚)。なお、裁判の中では和解することもでき、和解が成立すれば裁判は終了し、離婚は成立します(和解離婚)。

このような手続を踏み、離婚が成立したら、離婚届を市区町村役場に提出し、戸籍の変更を行います。なお、協議離婚以外の手続によって離婚が成立した場合、離婚が成立した日から10日以内に離婚届を提出しないと、5万円以下の過料に処せられるおそれがありますので、ご注意ください。

熟年離婚で子にかかる負担

子がいる場合、熟年離婚することで子に負担をかけてしまうことがあります。

子が未成年の場合には、ある日突然両親のどちらかがいなくなるという環境は、子の養育に悪影響を与えることが考えられます。また、父と母のどちらが親権者になるかによって、子が家事をしなければならなくなったり、生活が苦しくなったりするといった負担をかけてしまうことがあります。

一方、子が成長し、自立していたとしても、子に負担をかけてしまうことがあります。何歳になっても、両親の離婚というのは、子の心境としては複雑でしょう。また、熟年離婚することで、本来であれば必要のなかった経済的負担や介護の負担を、子にかけてしまう場合があります。熟年離婚により、両親それぞれが経済的な不安を抱えるおそれがあり、さらに、両親の介護が必要になった場合、本来であれば両親が互いの介護を行えばよかったものの、子が父と母それぞれの介護に奔走しなければならなくなるおそれがあるためです。

熟年離婚することで子に負担をかけることがあります。弁護士に相談して負担を減らしましょう

子がいる場合、そもそも今の時点で離婚すべきか否かの判断が悩ましいものとなるでしょう。特に未成年の子がいる場合には、子の将来を考えると、誰が離婚後の監護をしていくべきかで頭を悩ませるのではないでしょうか。

離婚の決意が固いとしても、子がいる場合には、進め方として別居すべきか否か、別居するとしても一人で別居すべきか、子と一緒に別居すべきかといった実行面でも一つ一つ吟味・検討が必要になります。

さらに、離婚の中身の話し合いをするところまで状況を進められたとしても、別居中の婚姻費用や養育費の金額、財産分与等の経済的条件の調整といった、離婚後の生活に影響する重要なテーマが浮上してくるため、個別具体的な検討と、それを踏まえての交渉が必要となります。

こうした内容をお一人だけで考えるにはかなりの負担がかかりますし、十分な検討や準備ができないまま話し合いを進めてしまうと、こちらの希望があまり通らないまま離婚が決まってしまい、めぐりめぐって子に負担をかけることになりかねません。

また、親御さんが一人で悩みを抱える姿はお子さんにも伝わってしまうこともありますので、弁護士に相談していただき、これから先の見通しをつけたり、離婚の条件調整を充実したものにしたりして、お子さんへの経済面や精神面での負担を軽減できるようにすることをお勧めいたします。

熟年離婚と熟年別居

熟年離婚と似ている言葉に、「熟年別居」があります。熟年別居は、長年連れ添った夫婦が、離婚せずに別居することを意味します。熟年離婚との大きな違いは、婚姻費用をもらう権利があるということです。

夫婦と未成熟子(経済的に自立していない子)が生活するうえで必要な費用のことを、婚姻費用といいますが、法律上、離婚が成立するまでの期間については、夫婦で分担する義務を負っています。そして、相手が負担すべき婚姻費用を支払ってもらえない場合には、相手に婚姻費用を請求することが可能です。

なお、ご自身に別居に至った原因がある場合、裁判所の手続において、請求が認められないこともあるということにはご注意ください。

熟年離婚には、離婚後の経済的な不安を伴うことがあります。まずは生活費を確保し、離婚について検討する時間を設けるためにも、熟年別居という方法は有用なのではないでしょうか。

熟年離婚で後悔してしまうケース

自ら離婚を切り出して熟年離婚したとしても、後悔してしまう方はいらっしゃいます。先に、熟年離婚のデメリットとして挙げたケースがまさにあてはまりますが、そのうちの「経済的な不安」は、熟年離婚を後悔する一番の理由だといわれています。とりわけ、専業主婦(夫)の方が離婚する場合に多いことでしょう。それまで専業主婦(夫)として生活を送ってきたことで、お金がなくなるという事態への危機感が薄くなる傾向にあり、また、離婚してからいざ社会復帰しようとしても、就職活動に難航し、生活が苦しくなることがあるためです。

熟年離婚するときの財産分与

これまで、「財産分与」という言葉が何度か出てきました。財産分与は、婚姻期間中に夫婦の協力により築いた財産を分け合うことをいい、原則、2分の1ずつの割合で分け合います。なお、基本的には、別居している期間分は対象外とされています。

熟年離婚の場合、特に退職金が気になる方もいらっしゃるでしょう。退職金も財産分与されることにはなりますが、その対象は、あくまで婚姻期間中に積み上げた分のみです。つまり、婚姻期間より勤続年数が長い場合には、その分の割合で減額した退職金を分け合うということです。

長きにわたる結婚生活を送ってきた熟年離婚の場合、財産分与が高額なケースが多く、また、財産の内容が複雑になることも多いため、離婚時に財産分与について揉めてしまうおそれがあります。

熟年離婚の財産分与についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

熟年離婚に関するQ&A

Q:

熟年離婚して生活保護を受けることはできますか?

A:

熟年離婚することで後悔する一番の理由であるといわれているのが、「経済的な不安」です。特に、専業主婦(夫)の方が熟年離婚する場合、社会復帰しようと思っても、経験不足等からなかなか定職に就けず、離婚後に生活が苦しくなることがあります。

このように、熟年離婚後に生活が苦しくなった場合、住んでいる地域の福祉事務所に申請し、申請が認められれば、生活保護を受けることができます。具体的には、下記のような要件を満たしているか確認したうえで、個別の状況に応じて判断されます。

・世帯収入が、厚生労働省が定めている最低生活費よりも少ないかどうか
・働くことができるかどうか
(※働く能力があり、収入を得ていたとしても、世帯収入が、厚生労働省が定めている最低生活費よりも少ない場合には、生活保護を受けることができるケースもあります。)
・預貯金や、生活に利用されていない土地・家屋等、生活費として活用できる資産があるかどうか
・年金や手当等、他の制度を利用することができるかどうか
・両親や子、兄弟姉妹といった扶養義務者から援助を受けることができるかどうか

Q:

熟年離婚しますが未成年の子がいます。養育費は何歳までもらえますか?

A:

養育費の支払義務は、裁判所の実務上、現在の成年年齢である20歳までとされることが多いです。
(※なお、今後、成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法の改正法が施行されますが、施行前に養育費の取り決めがなされたケースで、養育費の終期を「成人するまで」と定めた場合であっても18歳までに引き下げられるわけではなく、施行後に取り決める場合も子を取り巻く状況を踏まえて検討されるべきと考えられています。)

しかし、そもそも養育費とは、未成年に対してではなく、未成熟子(経済的に自立していない子)に対して支払われるものです。したがって、大学に進学することを想定して、「22歳の3月末まで」や「大学を卒業するまで」というように、養育費について取り決めがなされている場合には、その年齢まで養育費を支払ってもらうことができます。これに対し、高校卒業後に就職した場合のように、20歳になる前に未成熟子とはいえなくなってしまうケースでは、相手方から養育費減額の調停を申し立てられ、20歳まで養育費を支払ってもらえないこともあります。

Q:

熟年離婚後の生活費の相場はいくらですか?

A:

婚姻中に別居を開始した場合、収入の多い者が収入の少ない者に対して婚姻費用分担義務を負います。

離婚成立後は、夫婦からいわば赤の他人となるので、婚姻費用分担義務や扶養義務はなくなります。そのため、実務上、離婚後の生活費の相場が決まっているわけではありません。

もっとも、離婚時の財産分与に際して、退職金等の金額が大きくなる傾向にある項目をきちんと含めて整理したり、夫婦間の収入格差を踏まえて財産分与の支払額を調整したりすることがあります。

熟年離婚は思っているよりも大変です。弁護士に相談してじっくり決めましょう

熟年離婚は、長年の結婚生活に終止符を打ち、第二の人生を歩んでいくための大きな決断です。

しかし、年齢を重ねていることもあり、離婚後の生活費の確保等、きちんと準備をしておかなければ、熟年離婚したことで後悔してしまわれる方もいます。そのため、財産分与や年金分割等を把握することが大切です。特に熟年離婚の場合、財産分与が高額になることが多く、対象となる財産が複雑になることも多いため、財産分与で揉めてしまうことが考えられます。

また、夫婦間での話し合いがまとまらず、裁判にまで発展した場合、熟年離婚の原因・理由によっては、裁判所に離婚を認めてもらえず、熟年離婚できないことがあります。したがって、熟年離婚するために、どのように話し合い、手続を進めていくかを、ご自身の状況に応じて慎重に検討していく必要があります。

このように、熟年離婚には様々な注意点があり、専門知識も要します。ご自身の今後のために熟年離婚することを決意した方が多いでしょうから、離婚後に後悔してしまわれるような事態になることは避けてほしいものです。また、熟年離婚するということ自体、身体的にも精神的にも大きな負担がかかります。

法律の専門家である弁護士に相談することで、財産分与はどのくらい請求できるのか、どのように手続を進めていけば良いのかというような疑問や不安に対し、個別の状況に応じてアドバイスを受けることができます。また、弁護士に依頼して必要な手続を代わりに行ってもらい、身体的・精神的な負担を軽減することもできます。

熟年離婚することを決めたからといって、すぐに行動に移すのではなく、まずは弁護士に相談し、慎重に進めていく方が良いでしょう。熟年離婚したいものの、疑問や不安を抱かれている場合には、弁護士に相談・依頼することをぜひご検討いただければ幸いです。

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