離婚の解決金とは?相場や慰謝料との違い、メリット・デメリットなど

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
夫婦間で生じた離婚問題の早期解決を図るために、“解決金”の支払いがなされることがあります。離婚する際は、「財産分与」「慰謝料」「子供の親権」等さまざまな離婚条件を取り決めなければなりません。条件によっては、夫婦の話し合いがまとまらず、争いへと発展するおそれがあります。そのような事態を避けるために、解決金の支払いはよく利用されています。
本記事では、「離婚の解決金」に着目し、解決金の相場や取り決める際の注意点などについて、詳しく解説していきます。
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離婚の解決金とは?
離婚における解決金とは、「離婚問題の早期解決を図るために、一方の配偶者から他方配偶者に対して支払われるお金」です。法律上、解決金の支払いに規定はないため、離婚する際に必ず支払う必要はなく、あくまで円満かつ円滑な解決実現のために支払われるお金に過ぎません。
当然解決金に法的根拠はありませんので、裁判では請求できず、夫婦が話し合いで離婚の成立を目指す協議離婚や離婚調停の際に解決金による解決を図れます。
解決金の特徴は、請求理由やその内容を明らかにする必要がある慰謝料とは異なり、曖昧な名目で金銭を請求できる点にあるでしょう。そのため、世間体を守るために慰謝料ではなく解決金が利用されるケースが多くあります。
どのような場面で使われる?
解決金には、法的根拠がないため、裁判以外の場面であれば基本的にいつでも使用できます。
たとえば、婚姻していない男女関係を解消する際の、いわば“手切れ金”として解決金を支払うことも可能です。
離婚時には、「どの財産をどのように分けるのか(=財産分与)」で揉める場合があります。そのような場合に、財産分与の調整を目的に解決金が使われるケースが多くあります。
解決金とその他離婚に関わるお金との違い
解決金の他、離婚に関わるお金には、以下のようなものがあります。
- 慰謝料
- 扶養的財産分与
- 和解金
これらのお金と解決金には、どのような違いがあるのでしょうか?
その違いについて、次項で詳しくみていきましょう。
慰謝料との違い
解決金と慰謝料の違いは、“法的根拠の有無”にあります。
慰謝料は、法律上、請求された側に「不貞行為やDV・モラハラ」などの不法行為が認められ、これが原因で請求する側が「精神的苦痛を受けた」法的根拠が必要です。しかし、解決金にはこのような法的根拠は必要ありません。
そのため、請求を受ける側が悪くなくても、双方に責任がある場合でも、解決金は請求が可能です。慰謝料のように、法的根拠を明らかにする必要がない点は、慰謝料との大きな違いといえるでしょう。
なお、離婚慰謝料についての詳しい内容は、以下のページをご覧ください。
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扶養的財産分与との違い
扶養的財産分与との違いは、“支払目的と支払方法”にあります。
離婚により生活が困窮してしまう配偶者に支払う扶養的財産分与は、「離婚後の生活の扶助」を目的とし、一般的に「定期金」の支払方法が取られます。これに対し、解決金は「離婚の早期解決」を目的とし、一般的に「一括」で支払われることがほとんどです。解決金の名目は曖昧でよいため、必ずしも元配偶者の離婚後の生活を扶助するために支払われるわけではありません。
また、別居中の生活費を収入の多い配偶者が支払う婚姻費用も、似て非なるものといえます。
解決金との違いは“支払時点”にあり、解決金は「離婚時」に支払われますが、婚姻費用は「離婚前」に支払われます。しかし、婚姻費用は離婚が成立するまで継続的に支払う必要があるため、夫婦の話し合いのなかで「解決金を支払うので離婚してほしい」と天秤にかけられるケースがよくあります。
財産分与についての詳しい内容は、以下のページをご覧ください。
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和解金との違い
解決金と和解金は、同じ意味合いで使われることが多いため、強いて言えば“使用段階”に違いがあるといえるでしょう。解決金は、「話し合いで解決を図る段階」で使用されますが、和解金は「裁判で解決を図る段階」で使われます。
ただし、裁判であっても、解決金を和解金と同じ意味合いとして使用し、和解条項に「被告は、原告に対し、解決金として○○万円の支払義務のあることを認める」などと記す場合があります。したがって、必ずしも裁判で使用されないわけではないのが実情です。
なお、和解離婚についての詳しい内容は、以下のページをご覧ください。
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離婚の解決金の相場はいくら?
解決金は、当事者間で金額を決められるため、明確な相場はありません。
慰謝料のように、過去の裁判例を参考にする必要がないため、相手が支払えるのであれば数百万から1000万円などの高額になるケースもあります。とはいえ、当事者間で解決金を決める際には、解決金を支払う目的や支払う側の年収、支払理由などのさまざまな事情が考慮されるでしょう。
また、「解決金の金額に妥当性が認められるかどうか」は、当事者双方が持つ事情を踏まえて総合的に判断する必要があります。解決金に相場はないとはいえ、あまりにも高額な解決金の請求を受けた場合や、どのくらいの解決金を請求すればよいのか悩まれる場合には、専門家である弁護士に相談した方がよいです。
弁護士であれば、当事者双方の事情を踏まえ、適切な解決金の金額を導き出し、早期解決を図れます。
離婚の解決金は分割払いできる?
離婚における解決金の支払いは、基本的に一括払いで行われます。
ただし、解決金には法的根拠がありませんので、相手の合意があれば分割払いも可能です。
後からトラブルへと発展しないようにするためにも、きちんと話し合い、できれば書面化しておくことが望ましいです。特に、支払う側の経済状況が悪く分割払いにする場合は、書面化にして未払いとなるリスクを回避する必要があります。
この辺を曖昧にして、相手と話し合わずに解決金の支払いを決めてしまうと、不利益を受ける可能性が高まります。
離婚時の解決金に関するメリット・デメリット
メリット
離婚時の解決金には、次のようなメリットがあります。
- 離婚に応じてもらいやすくなる
- 円満離婚できる可能性が高まる
- 慰謝料を別途請求されるリスクを回避できる
- 支払った側の立場を守れる(世間体を守れる)
- 支払を受ける側に思いやりを示せる など
解決金の提示は、相手の気持ちが離婚する方向に傾くきっかけとなり得ます。特に、経済的な不安を理由に離婚を拒否されているのであれば、解決金の支払いにより離婚に応じてもらえる可能性が高まります。
また、「慰謝料」の名目での支払いと比べると、解決金の支払いは印象を悪く捉えられる心配がないため、双方の世間体を守れます。こうした点は、解決金がもたらす大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
一方で、離婚時の解決金には、次のようなデメリットもあります。
- 法的根拠がないため、曖昧
- 高額請求される可能性がある
- 贈与税の課税対象となる可能性がある など
法的根拠がなく曖昧である解決金は、当事者の話し合いで解決を図れますが、裁判で決着はつけられません。当事者同士で自由に決められるため、曖昧であるが故に、高額請求される可能性を否定できないのです。
また、明らかに高額な解決金が支払われた場合は、税務署から「贈与」とみなされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。いくら以上という明確な金額の基準はなく、税務署の判断次第となりますが、「納税逃れの可能性」や「解決金に見せかけた贈与」と疑われやすくなります。
離婚解決金を取り決める際の注意点
離婚時に夫婦で解決金を取り決める際には、以下の点に注意する必要があります。
- 清算条項を設けた離婚協議書を作成する
- 高額な解決金は課税対象になる場合がある
- 解決金を払わない場合は差押えのリスクがある
これらの点に注意しなければ、後にトラブルとなる可能性を高めてしまいます。
では、次項にてそれぞれの注意点を詳しく解説していきます。
清算条項を設けた離婚協議書を作成する
夫婦間で話し合い、離婚と解決金について取り決めたら、後で「言った」「言わない」のトラブルになることを避けるため、離婚協議書を作成し、取り決めた内容を書面に残しておきましょう。加えて、離婚協議書は公正証書にしておくことをおすすめします。
また、後から解決金を追加で請求されたり、慰謝料や財産分与等、他の名目で請求されたりしないようにするためには、離婚協議書に、「本件離婚に関し、この離婚協議書に定める事項以外に、当事者間に何らの債権債務がないことを確認する」といったような、清算条項を設けておくことが重要です。
なお、離婚方法として調停を利用した場合、調停が成立したら、家庭裁判所によって調停調書が作成されます。そのため、ご自身で書面を作成する必要はありませんが、解決金を含め、取り決めた内容がきちんと記載されていること、清算条項が設けられていること等、調停調書の内容は調停合意前にきちんと確認しましょう。
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高額な解決金は課税対象になる場合がある
解決金の支払いが、慰謝料や財産分与の代わりである場合、解決金を支払った側にも受け取った側にも、基本的に税金はかかりません。そもそも、慰謝料は原則として非課税であり、財産分与も、対象が金銭の場合は基本的に税金がかからないためです。
ただし、解決金の金額が過大である場合には、受け取った側に贈与税がかかるおそれがあります。
また、解決金は、発生原因や内容を明らかにしないで済む曖昧なものです。解決金の実質的な中身によっては税金がかかる場合もありますので、ご注意ください。
解決金を払わない場合は差押えのリスクがある
解決金の内容を記載した「公正証書(強制執行認諾文言付)」「調停調書」等がある場合に解決金の支払いを怠ると、強制執行によって差押えられる可能性があります。なぜなら、公正証書や調停調書等は、“債務名義”に該当するからです。
□ 債務名義とは?
債務者に給付義務を強制的に履行させる手続き(=強制執行)を行なう際に必要となる公的機関が作成した文書のこと。
債務名義があれば、強制執行による財産の差押えが可能です。離婚後に経済状況が悪化し、解決金の支払いが困難になる場合もありますが、だからといって、解決金の支払いを怠れば、財産を差し押さえられる可能性があります。そのため、解決金の支払いが困難となった場合には、「解決金の減額」や「分割払い」を相手にお願いすることが大切です。
離婚の解決金について弁護士に相談するメリット
離婚の解決金には、内容を明らかにせず曖昧に使用できる便利さがあります。しかし、その一方で、曖昧が故に不利益を受けるおそれもあるため、解決金の取り決めは慎重に行わなければなりません。
離婚の解決金として妥当である金額については、「夫婦が離婚に至るまでの背景」や「支払う目的」などによって異なります。夫婦の状況に即して判断する必要があるため、金額の妥当性でお悩みの際は、専門家である弁護士への相談が有効的です。
弁護士であれば、状況を見極めながら的確に解決金を提示し、交渉を円滑に進められます。相手との直接交渉も弁護士にすべて任せられるため、精神的負担の軽減にもつながります。また、夫婦間の話し合いで解決できず、次の手段として調停や裁判に発展した場合も、弁護士がいれば適切なサポートを受けられます。こうした点は、離婚の解決金について弁護士に相談する大きなメリットといえるでしょう。
「離婚問題を弁護士に依頼するメリット」についての詳しい内容は、以下のページをご覧ください。
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離婚解決金に関するQ&A
- Q:
不貞行為などの有責行為はなく、性格の不一致による離婚で妻から解決金を請求されました。支払わなくてはいけませんか?
- A:
解決金に法的根拠はないため、支払う必要はありません。
ただし、「支払った方が円満に離婚できる」「支払える資力がある」などの場合には、解決金を支払われてもよいでしょう。法的根拠がある慰謝料は、支払う側に不法行為(不貞行為やDVなど)が認められ、それにより支払いを受ける側が精神的苦痛を受けた事実の証明を行わなければなりません。しかし、解決金は夫婦で自由に決められ、何かを証明する必要はないため、解決金には相場もありません。
「性格の不一致による慰謝料請求」などについては、以下のページをご覧ください。
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- Q:
解決金を支払えば離婚してくれると言われたので支払いましたが、離婚に応じてくれません。解決金を返してもらうことはできますか?
- A:
離婚に際して、離婚しない場合の解決金返還を明記した合意書を作成しているのであれば、返してもらうことは可能です。
しかし、そのような合意書が存在しない場合、解決金と称して交付したお金が、離婚することについての解決金かどうか、第三者から見て明確にはならないケースが多いので、結局返してもらえない可能性が高いです。
解決金の名目が、「相手が離婚に応じるため」である場合は、その旨を明記した離婚協議書を作成して公正証書化するのが有効的です。解決金の支払いを条件に離婚を成立させたい場合は、離婚協議書に解決金の支払時期を離婚届の提出後とする条項を入れると良いでしょう。
離婚の解決金に関するお悩みは弁護士にご相談ください
解決金は、離婚問題の事態を収束する糸口になり得ます。
しかし、法律上の規定がなく曖昧に使用できる便利さがある半面、その曖昧さがトラブルの原因となる場合もあります。そのため、解決金について取り決める際には注意が必要です。とはいえ、「どれくらいの解決金が妥当なのか」「解決金をうまく使用できるのか」など、解決金の扱いに悩まれる方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、解決金を正しく扱い、離婚成立に向けた手続きを円滑に進められます。相手との直接交渉も弁護士に一任できるため、離婚問題の悪化を防ぎ、精神的な負担も軽減できます。
解決金が離婚を成立させる最善の策となるかは、夫婦の事情によって異なります。
離婚の解決金に関してお悩みの方は、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)