ハーグ条約とは?国境を越えた子の連れ去りについて

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員

一方の親が勝手に子供を外国に連れ去ってしまう「国境を越えた子の連れ去り」は、深刻な社会問題となっています。

いきなり違う国に連れて行かれた子供は、それまで住んでいた場所とは全く異なる環境・言葉のなかで生活することになります。そこで、子供に生じる様々な悪影響から守るために作られた国際ルールが、「ハーグ条約」です。

「ハーグ条約」という言葉を耳にしたことはあっても、どんな内容なのかよく知らない方もいるでしょう。本記事では、ハーグ条約についてわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

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ハーグ条約とは

「ハーグ条約」とは、子供が外国に不法に連れ去られた場合に、子供を守るために国同士で協力しようと作られた条約です。具体的には、子供の返還子供との面会交流について定められています。

国際結婚が増加し、離婚で争っているときや離婚後などに、一方が勝手に子供を外国に連れて行ってしまうという事態が生じるようになったことから、ハーグ条約ができました。正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」と言いますが、オランダのハーグという場所で作られたため、通称「ハーグ条約」と呼ばれています。

ハーグ条約加盟国について

ハーグ条約は、子供が元々住んでいた国と連れて行かれた国の両方が、ハーグ条約の加盟国だった場合に適用されます。

国際結婚して日本に住んでいるご夫婦の一方が、勝手に子供を自分の母国に連れ去った場合を例に考えてみましょう。日本はハーグ条約に加盟していますので、子供が連れて行かれた国も加盟していれば、ハーグ条約が適用され、返還手続きなどを行うことができます。

ハーグ条約の加盟国は、日本を含めて101ヶ国となっています(※令和2年10月時点)。加盟国の一覧は、下記のページをご覧ください。

ハーグ条約のメリット

ハーグ条約のメリットは、子供を元いた国に連れ戻しやすくなることです。
ハーグ条約に加盟していない場合、自力で子供を探して外国の裁判所で返還請求をしなければならないうえ、子供が元いた国に戻るまで時間がかかります。一方、加盟していれば、条約に基づき速やかに子供を元いた国に戻らせることができます。

また、そのほかのメリットとしては、元いた国に連れ戻すには至らなかったとしても、面会交流の機会を設けてもらうための援助の申請ができることが挙げられます。

ハーグ条約によっても返還されない場合もある

子供を返すと子供の心身に悪影響を与える場合等には、返還の拒否が認められることもあります。例えば、返還を求めている親が子供に対して虐待をしている場合などです。返還が不適切だと思う場合は、その理由を裏付ける資料が必要ですので、返還を求めている親による虐待の証拠を集めて提出するなど、適切に対応しましょう。

子の返還請求を行う場合

子の返還請求を行う場合、具体的にどのように返還の手続きを進めていくことになるのでしょうか?次項より確認していきます。

返還請求の要件

子の返還請求が認められるには、まず前提として、返還事由をすべて満たしている必要があります。日本で返還手続きをする場合(外国から日本に子供が連れ去られた場合)には、日本のハーグ条約実施法が適用されますが、この法律では次の4つの返還事由が定められています。

  • ①子供が16歳未満であること
  • ②子供が日本国内に所在していること
  • ③連れ去った当事者の行為が、元いた国の法令での「監護権の侵害」にあたること
  • ④連れ去り・留置(期限付きで子供を外国に連れて行ったのに、期限を過ぎても子供を帰さないこと)の開始時に、元いた国がハーグ条約の加盟国であること

ハーグ条約による子の返還手続きの流れ

ハーグ条約に基づく子の返還手続きの主な流れは、日本から外国(※ハーグ条約締約国)に子供を連れ去られた場合を例にすると、下記のとおりになります。

1.元いた国(日本)の中央当局に対し、返還援助申請を行う。
申請書類に使用できる言語は、日本語または英語のみです。書類の提出先は、外務省のハーグ条約室になります。

2.申請を受領した中央当局は、子供が現に所在している締約国(連れ去られた先の国)の中央当局に申請を移送する。

3.移送先の中央当局は、子の返還手続きに必要な調査や、子供が任意に返還されるよう適切な措置をとる。
例:子の所在の特定、ADR(裁判外紛争解決手続)機関による当事者間での協議のあっせん等

4.連れ去られた先の国(相手国)の司法当局または行政当局に対し、子の返還申立てを行う。
子の返還命令を出して返還に向けた手続きを行うのは、中央当局ではなく、司法当局または行政当局です。
なお、返還援助申請を行わず、子の返還申立てのみを行うことも可能です。

5.連れ去られた先の国(相手国)の司法当局または行政当局によって、子供を元いた国に返還するよう命じられる。
司法当局または行政当局は、返還拒否事由のいずれかがあると認める場合を除いて、基本的には子供を元いた国に返還するよう命じます。

6.返還命令に基づき、子供の返還がなされる。

ただし、締約国によって手続きや支援内容が異なることがあります。詳しくは、下記のハーグ国際私法会議のホームページで提供されている、各締約国のカントリープロファイル(一部の国を除いた、各締約国のハーグ条約に基づく裁判手続きに関する情報等の概要が掲載されているもの。)に記載されています。

外務省による支援について

外国へ連れ去られた子供を返還してもらうため、ご自身の国の中央当局から様々な支援を受けることができます。

日本の場合、中央当局は外務大臣であり、その実務は外務省のハーグ条約室という機関が担っています。外務省では、返還援助申請の受付をはじめ、子供の居所等の特定、外務省の費用負担によるADR(裁判外紛争解決手続)機関の紹介、日弁連による弁護士紹介制度や法テラスによる法律扶助の案内、裁判資料の和訳等、ハーグ条約に基づく子の返還手続きに関する支援を行っています。

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子供の返還を拒否したい場合

例えば、相手のDVから逃れるために自国へ子供を連れて帰った場合には、相手から子の返還請求がなされたとしても、子供を返したくないと思われることでしょう。

ハーグ条約では、元いた国に子供を戻すのが基本的なルールとされていますが、状況によっては例外的に子供の返還を拒否できることがあります。次項より、子供の返還の拒否について確認していきます。

返還拒否事由

連れ去られた先の国の司法当局または行政当局は、返還が求められたことについて、返還拒否事由のいずれかがあると認めるときには、子の返還を命じる義務は負わないとされています。

つまり、例えば日本に子供を連れて帰った場合は、日本の裁判所に、返還拒否事由のどれかに当てはまる事情があると判断されれば、子供を返還せずに済むということです。

子の返還拒否事由について、日本のハーグ条約実施法28条では、次のような事項が定められています。

  • ①子の返還の申立てをした時点で、連れ去り時または留置の開始時から1年経っていて、子供が新しい環境に慣れている。
  • ②申立人が、連れ去り時または留置の開始時に、子供の世話をしていなかった。
  • ③申立人が、前もって連れ去りまたは留置に同意していた。あるいは後から承諾した。
  • ④元いた国に子供を返還すると、子供の心身に悪影響を及ぼしたり、子供を耐え難い状況にさせてしまったりする重大な危険がある。
    ※次の事情等を考慮して判断されます。
    ・子供が申立人から暴力等を受けるおそれの有無
    ・連れ去った親が申立人から、子供の心にダメージを与えることとなるDV等を受けるおそれの有無
    ・申立人または連れ去った親が、元いた国では子供の世話をすることが困難な事情の有無
  • ⑤子供自身が、元いた国に返還されることを拒んでいる。(子供の年齢や成熟度から、子供の意見を考慮するのが適当な場合。)
  • ⑥元いた国に子供を返還することが、日本国における人権と基本的自由の保護に関する基本原則から認められないものである。

DVや虐待を理由に子供を連れて帰った場合

ご自身が相手からDVを受けていたり、子供が相手から虐待されていたりしたために、自国へ子供を連れて帰った場合には、子供を返さずに済むのでしょうか?

この場合、先ほど紹介した子の返還拒否事由のうち、「④元いた国に子供を返還すると、子供の心身に悪影響を及ぼしたり、子供を耐え難い状況にさせてしまったりする重大な危険がある。」に該当するとして返還の拒否が認められ、元いた国に子供を返さずに済む可能性があります。

ただし、返還拒否事由があると判断されるためには、DVや虐待が行われていたことを立証する証拠が必要になります。

ハーグ条約に関するQ&A

Q:

日本でハーグ条約が締結される前に、子供の連れ去りがあった場合はどうなりますか?

A:

現在ではあまり見受けられないかもしれませんが、日本でハーグ条約が締結される前に、子供が日本から他国に連れ去られたというケースでは、自力で子供を探し出し、その国の裁判所で返還請求をしていくことになります。子供が元いた国と連れて行かれた国の両方がハーグ条約に加盟していなければ、ハーグ条約に基づいて、国の協力を得て子供の返還請求をすることはできません。

Q:

日本人同士の夫婦が海外で生活していた場合はハーグ条約が適用されますか?

A:

日本人同士の夫婦が海外で生活していた場合でも、子供が連れ去られたとき、住んでいた国と連れ去られた先の国がハーグ条約に加盟していれば、ハーグ条約が適用されます。

Q:

配偶者に無断で子供を居住国から日本に連れて帰ることは、犯罪になりますか?

A:

犯罪になるかどうかは、元いた国(居住国)の法律によります。日本の場合、お互いに親権を持っている親の間であれば、相手の同意を得ずに子供を連れて行っても、必ずしも誘拐とはなりません。ですが、国によっては、たとえ親権を持っていても誘拐等の犯罪になってしまうこともありますし、ときに国際手配されることもあります。

Q:

国際離婚時の親権はどうなりますか?

A:

国際離婚時の子供の親権は、どの国の法律に基づいて決めるかで異なります。そのため、夫婦のどちらか一方が親権者になること(単独親権)もあれば、夫婦がともに親権者になること(共同親権)もあります。

どの国の法律が適用されるかは、次のとおりです。(※日本で離婚するケース)

  • 夫婦のどちらか一方でも子供と同じ国籍の場合➡子供の国籍がある国の法律
  • その他の場合➡子供が住んでいる国の法律

なお、国際離婚時に単独で親権者となり、子供と日本で暮らしていたにもかかわらず、元配偶者に子供を外国へ連れ去られてしまったときには、ハーグ条約に基づき子供の返還を求めることができます。ただし、連れて行かれた国がハーグ条約に加盟していない場合や、子供が16歳未満の場合には、ハーグ条約に基づく返還請求はできません。

ハーグ条約に関する様々なご相談は、子に関する問題の経験豊富な弁護士にお任せください。

外国に連れ去られてしまった子供を返還してもらうためには、ハーグ条約についてよく知り、適切に手続きを進めていくことが大切です。しかし、国と国との間で生じるとても複雑な問題ですので、おひとりだけですべて対応することは非常に難しいでしょう。

子供を取り戻したいとお悩みのときは、弁護士の力を借りることをおすすめします。弁護士なら、どのような手続きをとれば良いのか、そもそもハーグ条約は適用されるのか等、適切に判断してアドバイスすることができます。また、必要な手続きをサポートすることも可能です。

ハーグ条約に関して不明点やお困りのことがある方は、子に関する問題を数多く解決してきた経験豊富な弁護士にご相談ください。

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