ハーグ条約とは?国境を越えた子の連れ去りについて

日本人のなかには、外国人の方と結婚して海外で生活したり、日本人同士で結婚して海外で生活したりする方も多くいらっしゃいます。円満に結婚生活を送ることができれば良いのですが、関係がうまくいかなくなり、同居していた国から他国に子供を連れ去られてしまうというトラブルが生じることがあります。国際結婚等の件数が増加するに伴い、国境を越えた子の連れ去りという問題は、深刻な社会問題として考えられるようになりました。そこで、このような問題に対し、国際的なルールを設けて解決しようと作成されたのが、ハーグ条約です。

国境を越えた子の連れ去りについて調べると、必ずと言っていいほど目にする「ハーグ条約」とは何なのか、本記事で詳しく解説していきます。

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ハーグ条約とは

ハーグ条約とは、オランダのハーグに事務局を有するハーグ国際私法会議(HCCH)において、1980年に作成された「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」のことをいいます。

なお、ハーグ国際私法会議で作成された条約は他にも様々あり、それぞれの通称やすべての総称として「ハーグ条約」が用いられることもありますが、本記事で「ハーグ条約」と言う場合は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」を指すこととします。

ハーグ条約は、国境を越えて子供が不法に連れ去られたり、留置されたりすることで生じる有害な影響から子供を保護するため、子供の利益を第一にして作成されました。内容としては、原則として元の居住国に子供を返還することや、子供との面会交流の機会を確保することの実現に向け、各締約国の政府窓口となる中央当局を通じて協力する旨が定められています。

ハーグ条約の適用対象は、16歳未満の子となっています。

ハーグ条約締約国について

ハーグ条約を締結している国は、日本を含む101ヶ国となっています(※2019年10月時点)。締約国の一覧は、下記をご参照ください。

ハーグ条約は、締約国間において、条約の効力が生じた後に行われた不法な子の連れ去りや留置についてのみ適用されます。したがって、連れ去られた国(元の居住国)と連れ去られた先の国の双方がハーグ条約を締結していて、その条約が発効している必要があります。

日本は、2014年にハーグ条約を締結し、発効しており、外務大臣を中央当局として指定しています。ハーグ条約の締結に先立つ2013年には、ハーグ条約の実施に必要な国内手続等を定めた「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」(以下、「ハーグ条約実施法」と表記します)が制定され、国内法の整備がなされています。

ハーグ条約のメリット

日本がハーグ条約に加盟する前は、子供が日本から外国に連れ去られると、その国から日本に子供を連れ戻すことがすぐにはできませんでした。その点、ハーグ条約には、子供をもといた国(日本)に返還する手続が定められているため、子供の返還が容易になりました。また、日本へ連れ戻すところまで至らない場合でも、面会交流の機会を確保するための援助が受けられることになりました。

ハーグ条約のデメリット

子供の返還が容易にできる、という点は、外国から日本へ子供を連れ去った場合も同様です。つまり、外国に住んでいる日本人が日本に子供を連れ帰った場合に、もといた国(外国)へ子供を返還する裁判がなされる可能性もあるということになります。ただし、DV等の事由がある場合は、子供の返還が命じられないこともあり得ます。詳しくは後ほど解説します。

国籍との関係性

ハーグ条約には、常居所地国(もといた国)から子供が不法に連れ去られた場合に、常居所地国へ子供を返還することが定められています。その定めにおいて、常居所地国がその子供の国籍と一致しているかどうかは問題とされていません。そのため、日本国籍である子供が外国(常居所地国)から日本に連れ去られた場合であっても、日本から常居所地国である外国に返還すべし、という命令が出されることもあり得ます。

親権における注意点

ハーグ条約の下では、常居所地国(もといた国)の法令において日本への連れ去り等が他方当事者の監護の権利を侵害する場合は、返還が命じられることになります。そのため、日本において離婚時に親権者(監護者)として定められた親だとしても、それだけでは子供を日本に連れて帰ることが正当化されない可能性があるのです。

ハーグ条約に関する問題でお困りの際は、弁護士に相談することをお勧めします

「ハーグ条約」という言葉を耳にしたことはあっても、その内容や手続方法、自身のケースで適用され得るのか等、ご不明な点がある方は多いのではないでしょうか。

国境を越えた子の連れ去りについて、実際に当事者となった場合、ハーグ条約とは何なのかを一から調べ、ご自身だけで対応していくことには相当な労力を要するでしょう。

そこで、まずは弁護士への相談をお勧めします。ハーグ条約をきちんと理解し、適切に対応するには、専門知識が不可欠です。ハーグ条約に関する問題でお困りの方は、弁護士にぜひご相談ください。

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子の返還請求を行う場合

相手国へ子供を連れ去られ、子の返還請求を行う場合、具体的にどのように返還の手続を進めていくことになるのでしょうか。次項より確認していきます。

ハーグ条約による子の返還手続の流れ

ハーグ条約に基づく子の返還手続の主な流れは、日本から外国に子供を連れ去られた場合を例にすると、下記のとおりになります。

ただし、締約国によって、手続や支援内容が異なることがあります。詳しくは、ハーグ国際私法会議のホームページで提供されている、各締約国のカントリープロファイル(一部の国を除いた、各締約国のハーグ条約に基づく裁判手続に関する情報等の概要が掲載されています)に記載されています。

1.もといた国の中央当局(日本の場合:外務大臣)に対し、外国返還援助申請を行う。

2.申請を受領した中央当局(外務大臣)は、子供が現に所在している締約国(連れ去られた先の国)の中央当局に申請を移送する。

3.移送先の中央当局は、子の返還手続に必要な調査や、子供が任意に返還されるよう適切な措置をとる。
例:子の所在の特定、ADR(裁判外紛争解決手続)機関による当事者間での協議のあっせん等

4.連れ去られた先の国(相手国)の司法当局または行政当局に対し、子の返還申立てを行う。
子の返還命令を発令して返還に向けた手続を行うのは、中央当局ではなく、司法当局または行政当局です。
なお、外国返還援助申請を行わず、子の返還申立てのみを行うことも可能です。

5.連れ去られた先の国(相手国)の司法当局または行政当局によって、子供をもといた国に返還するよう命じられる。
司法当局または行政当局は、返還拒否事由のいずれかがあると認められた場合を除いて、原則、子供をもといた国に返還する命令を発令します。

6.返還命令に基づき、子供の返還がなされる。

返還請求の要件

子の返還の申立てに対し、返還を命じてもらうには、そもそも返還事由をすべて満たしている必要があります。日本のハーグ条約実施法(27条)では、下記の4つが子の返還事由として規定されています。

  • ①子が16歳に達していないこと
  • ②子が日本国内に所在していること
  • ③常居所地国(もといた国)の法令によれば、当該連れ去りまたは留置が申立人の有する子についての監護の権利を侵害するものであること
  • ④当該連れ去りの時または当該留置の開始の時に、常居所地国が条約締約国であったこと

外務省による支援について

相手国へ連れ去られた子供を返還するにあたり、ご自身の国の中央当局から様々な支援を受けることができます。

日本の場合、中央当局は外務大臣であり、その実務は外務省領事局ハーグ条約室という機関が担っています。外務省では、外国返還援助申請の受付をはじめ、子供の居所等の特定、外務省の費用負担によるADR(裁判外紛争解決手続)機関の紹介、日弁連による弁護士紹介制度や法テラスによる法律扶助の案内、裁判資料の和訳等、ハーグ条約に基づく子の返還手続に関する支援を行っています。

子供の返還を拒否したい場合

ここで、自国へ子供を連れ帰った側の立場として解説していくこととします。例えば、相手のDVから逃れるために自国へ子供を連れて帰った場合には、相手から子の返還請求がなされたとしても、子供を返したくないと思われることでしょう。次項より、子供の返還の拒否について確認していきます。

返還拒否事由

連れ去られた先の国(相手国)の司法当局または行政当局は、子の返還申立てに、子の返還拒否事由のいずれかがあると認めるときには、子の返還を命じる義務は負わないとされています。

日本のハーグ条約実施法(28条)では、子の返還拒否事由は下記のように定められています。裁判所の判断により子の返還拒否事由があると認められた場合には、子供を返還せずに済むことになります。

①子の返還の申立てが、当該連れ去りの時または当該留置の開始の時から1年を経過した後にされたものであり、かつ、子が新たな環境に適応していること

②申立人が、当該連れ去りの時または当該留置の開始の時に、子に対して現実に監護の権利を行使していなかったこと

③申立人が、当該連れ去りの前もしくは当該留置の開始の前にこれに同意し、または当該連れ去りの後もしくは当該留置の開始の後にこれを承諾したこと

④常居所地国(もといた国)に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすこと、その他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること
※返還拒否事由④の有無を判断するにあたっては、次の事情その他の一切の事情を考慮するものとされています。

  • 常居所地国において、子が申立人から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(暴力等)を受けるおそれの有無
  • 相手方及び子が常居所地国に入国した場合に、相手方(連れ去った側)が申立人(連れ去られた側)から、子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無
  • 申立人または相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情の有無

⑤子の年齢及び発達の程度に照らして、子の意見を考慮することが適当である場合において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいること

⑥常居所地国に子を返還することが、日本国における人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められないものであること

DVや虐待を理由に子供を連れて帰った場合

ご自身が相手からDVを受けていたり、子供が相手から虐待されていたりしたために、自国へ子供を連れて帰った場合には、子の返還拒否事由のうち、「常居所地国(もといた国)に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすこと、その他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること」に該当するとして、返還の拒否が認められ、相手国へ子供を返還せずに済む可能性があります。

ただし、返還拒否事由があると判断されるためには、DVや虐待が行われていたことを立証する証拠が必要になります。

ハーグ条約に関するQ&A

Q:

日本でハーグ条約が締結される前に、子供の連れ去りがあった場合はどうなりますか?

A:

日本において条約が発効する前の子供の連れ去りについて、ハーグ条約は適用されません。

Q:

ハーグ条約が適用される子供の年齢は何歳までですか?また、未成年の子すべてにハーグ条約が適用されるのですか?

A:

ハーグ条約4条には、「この条約は、子が16歳に達した場合には、適用しない」旨の明文があります。そのため、未成年の子であっても、16歳以上であればハーグ条約の適用は受けないことになります。

Q:

配偶者に無断で子供を居住国から日本に連れて帰ることは、犯罪になりますか?

A:

犯罪になるかどうかは、もといた国(居住国)の法律によります。日本では、互いに親権を有する親の間であれば、他方配偶者の同意を得ずに子供を連れて別居したとしても、必ずしも誘拐とはなりません。ですが、国によっては、たとえ親権を有していても誘拐等の犯罪に該当するとされていることもあります。ときに国際手配されることもあります。

ハーグ条約に関する様々なご相談は、離婚問題の経験豊富な弁護士にお任せください

子供の返還(または子供の返還拒否)に向けて、ご自身のみですべての対応を行おうとしても、困難を強いられることが予想されます。また、適切な主張や立証ができなかった場合、子の返還請求が認められない(または子供の返還拒否が認められない)事態となってしまうことも否定できません。

国境を越えた子の連れ去りというトラブルに適切に対処し、子供の返還(または子供の返還拒否)を実現するためには、弁護士の協力を得ることをお勧めします。ハーグ条約に関する不明点やお悩みがある方は、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士にご相談ください。

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