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コラム

セックスレスを理由に離婚するには

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
この記事の監修
弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

愛知県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフを擁し()、拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。

離婚しようと考える理由は、ご夫婦によって様々あるかと思います。なかには、セックスレスを理由に挙げる方もいらっしゃるでしょう。セックスレスであってもお互いがそれで問題ないと考えているのであれば良いのですが、性交渉に対する価値観にズレが生じ、どちらかが不満を抱くと、離婚に至る場合もあります。

それでは、セックスレスを理由に、離婚することはできるのでしょうか。本記事で詳しく解説します。

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セックスレスを理由に離婚に至る場合とは

セックスレスのご夫婦がすべて離婚に至るかというと、そうとは限りません。では、セックスレスで離婚に至るケースとは、どのようなケースがあるのでしょうか。次項より、いくつかの例を挙げて確認してみましょう。

夫側からの拒否によるセックスレス

妻側が性交渉を望んでも、夫側から拒否されてセックスレスになり、不満を抱いた妻が離婚を決意するというケースはあります。

夫が性交渉を拒否する理由には、妻を女性として見られなくなったから、性欲がないから、不貞行為をしているから等が考えられます。

妻側からの拒否によるセックスレス

一方で、夫側が性交渉を望むのに対し、妻側から拒否されてセックスレスになり、夫が不満を抱いて離婚に至るご夫婦もいらっしゃいます。

妻が性交渉を拒否するのには、夫が拒否する理由と同様のことが当てはまりますが、例えば妊娠を機に性交渉に対して身体的・精神的負担を感じ、拒否するというのは、妻側に特有な理由といえます。

産後のセックスレス

妻が子供を出産した後、セックスレスになり、離婚に至るケースもあります。妻側としては、育児による疲労や寝不足で性交渉をする体力や気力がないから、夫側としては、出産に立ち会ったことで妻を女性として見られなくなってしまったからというような理由で、セックスレスになることがあります。そして、セックスレスになっていることに不満を感じた一方が、離婚したいと思うケースもあるのです。

セックスレスで子供を作れない

自身が子供を望んでいるものの、セックスレスになっている場合には、子作りができないため、離婚したいと思われることでしょう。特に妻側が子供を望んでいる場合、年齢を重ねるごとに妊娠しにくくなるため、離婚の意思は一層強まることが予想されます。

セックスレスを理由に離婚することはできるのか

協議離婚や調停離婚という方法を利用する場合、当事者間で合意していれば離婚は成立するため、理由を問わず離婚できます。

しかし、裁判離婚の場合には、法定離婚事由(民法770条)がなければ裁判所に離婚を認めてもらえません。

セックスレスは、法定離婚事由のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性があります。その判断には、セックスレスになった原因・経緯等、個々の夫婦の事情が考慮されます。

では、離婚裁判において、具体的にどのような場合に、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるとして、裁判所に離婚を認めてもらえる可能性があるのでしょうか。次項より確認していきます。

離婚が認められやすいケース

「配偶者を異性として見られなくなったから」等、正当な理由なく相手から性交渉を拒否され、セックスレスになっている場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるとして、裁判所に離婚を認めてもらえる可能性があります。

ただし、性交渉を拒否した回数が数回だけと少なかったり、セックスレスの期間が短かったりする場合には、婚姻関係が破綻しているとまではいえないとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるとは判断されないケースもあります。

なお、相手が不貞行為をしていてセックスレスになっている場合には、不貞行為自体が他の法定離婚事由に当たるため、不貞行為を理由として離婚することができます。

離婚が認められにくいケース

一方、「病気や怪我により性交渉ができないから」等、相手が性交渉を拒否することに正当な理由がある場合には、裁判所に「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると判断される可能性は低いです。

また、共働きの夫婦等で、生活時間のずれから夫婦の時間を確保することが難しく、セックスレスになっている場合も、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると判断される可能性は低いでしょう。

セックスレスとみなされるのはどこから?

「セックスレス」とはどのような状態を指すのか、確認してみましょう。

この点、1994年に日本性科学会による定義付けがなされています。本学会では、特殊な事情が認められないにもかかわらず、合意のうえ行う性交渉またはセクシャル・コンタクトが1ヶ月以上なく、このようなことが長期にわたると予想される状態のことをセックスレスと定義しています。

したがって、先の「離婚が認められにくいケース」で例示した「病気や怪我により性交渉ができないから」等、相手が性交渉を拒否することに正当な理由がある場合は、特殊な事情が認められ、そもそもセックスレスであるとはみなされないでしょう。

立証するためには

セックスレスを理由に離婚するため、裁判を行うことになった場合、裁判所に離婚を認めてもらうには、セックスレスであるということを立証する必要があります。セックスレスを立証するための証拠になり得るものとしては、「セックスレスについて記載されている日記」「相手から性交渉を拒否されたことがわかるメモやメール」「相手がセックスレスについて謝罪している手紙」「セックスレスについての夫婦間の会話を録音したもの」等があります。

しかしながら、セックスレスは夫婦間のとてもプライベートな事柄であるため、第三者からみてセックスレスであるとわかるよう立証するのは、非常に難しいといえます。

セックスレスを理由に離婚する場合は慰謝料を請求できるのか

セックスレスを理由に離婚する場合、ケースによっては、受けた精神的苦痛に対して慰謝料を請求できることがあります。例えば、自身は性交渉を望んでいるにもかかわらず、正当な理由なく相手から性交渉を拒否されてセックスレスになっており、このことが原因で離婚に至った場合には、慰謝料を請求できます。

つまり、離婚の原因となったセックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たり、その原因を作って婚姻関係を破綻させた有責性が相手にある場合には、慰謝料を請求できるということです。

慰謝料が高額になる可能性があるケース

離婚の慰謝料の請求が裁判で認められた場合、金額は100万~300万円程度となることが多いですが、個別の事情によっては、この相場よりも高額になる可能性があります。

セックスレスを理由に離婚するケースでは、例えば、「セックスレスの期間が長い(一般的には3年以上)」「婚姻期間が長い」「結婚後、一度も性交渉をしていない」といった事情がある場合には、高額な慰謝料が認められやすい傾向にあります。

離婚方法

主な離婚方法には、協議離婚・調停離婚・裁判離婚があります。また、少ない事例ですが、離婚自体に争いはなくても、細かい条件等で意見がまとまらず、調停不成立の場合、裁判所の判断で審判がなされて離婚が成立すること(審判離婚)もあります。

これらの離婚方法についての詳しい内容は、下記の各記事をご覧ください。

配偶者との話し合いが難しい場合は弁護士に相談してみませんか?

セックスレスを理由に離婚したい場合、裁判を行うことになったら、セックスレスになった原因・経緯といった個別の事情によっては、離婚が認められないこともあります。そのため、離婚理由の如何に関わらず離婚することができる、当事者間での話し合いによる離婚(協議離婚)の成立を望む方は多いのではないでしょうか。

しかしながら、当事者間での話し合いになると、お互い感情的になってしまう等、協議が難航することもあるかと思います。そのようなときは、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。弁護士を介入させ、法律知識に基づいた第三者の意見を交えることで、当事者間ではなかなか進まなかった話し合いがスムーズにまとまる可能性が高まります。また、調停や裁判になったとしても、ご依頼者様の状況に応じた適切な主張・立証を、弁護士が代わりに行うことができます。

配偶者との話し合いが滞ってしまいお困りの場合や、そもそも話し合うこと自体が難しい場合には、まず弁護士に相談することをご検討いただければ幸いです。

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セックスレスを主な理由とする離婚が成立した裁判例

ここで、セックスレスを主な理由とする離婚請求が認められた裁判例を2つご紹介します。

〈福岡高等裁判所 平成5年3月18日判決〉

事案の概要

夫(被告)は、結婚当初から夫婦生活を嫌い、長男をもうけたものの、その後約1年半の間、全く性交渉を拒否するようになり、セックスレスの状況にありました。その反面、夫自身はポルノビデオを見て自慰行為をしていること等を理由に、妻(原告)が、婚姻を継続し難い重大な事由に該当すると主張し、離婚等を請求したという事案です。

裁判所の判断

原審では、夫婦関係を継続し難い重大な事由があるものといえると判断し、妻の離婚請求を認めました。

この原判決は不当であるとして夫は控訴しましたが、棄却されました。控訴審では、性交渉は入籍後約5ヶ月内に2、3回程度と極端に少なく、平成2年2月以降は全く性交渉がない状態であるのに、夫(控訴人)自身はポルノビデオを見て自慰行為をしており、性生活に関する夫の態度は、正常な夫婦の性生活からすると異常というほかないこと等から、婚姻生活は既に破綻しているものといわざるを得ず、婚姻を継続し難い重大な事由があると認め、原判決は相当であると判断しています。

〈東京地方裁判所 平成15年2月18日判決〉

事案の概要

妻(被告)が、長女の出産(平成7年)後、性交渉を拒否し続け、セックスレスとなっていたこと、平成8年頃から、家事育児をほとんどしなくなったことにより、平成11年頃から別居状態となり、夫(原告)が離婚等を請求したという事案です。

裁判所の判断

裁判所は、3年以上の別居状態が続いていることから、婚姻関係は破綻しているものと認め、婚姻関係が破綻に至った原因は、妻が性交渉を拒否し、家事育児をほとんどしなかったことにあるとして、夫の離婚請求を認めました。

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離婚とセックスレスに関するQ&A

Q:

新婚でもセックスレスを理由に離婚することはできますか?

A:

協議離婚や調停離婚では、双方の合意があれば、どのような理由であれ離婚が成立するので、新婚でもセックスレスを理由にした離婚は可能です。

ですが、裁判離婚の場合、離婚するためには裁判所に法定離婚事由を認めてもらわなければなりません。セックスレスという離婚理由が法定離婚事由に該当すると判断してもらえるかどうかは、ケースバイケースです。新婚でも、正当な理由がないにもかかわらず相手から性交渉を拒否されており、結婚後一度も性交渉していないといったケースでは、法定離婚事由に該当すると判断され、離婚を認めてもらえる可能性があるといえます。

Q:

セックスレスを理由に離婚する場合、親権問題に影響しますか?

A:

裁判所が親権者を決める場合、子供への愛情や経済的な安定性、これまでの監護状況等、様々な事情を総合考慮したうえで、子供の利益を重視して夫婦のどちらが親権を獲得するのが適切かを判断します。親子の問題と夫婦の問題は別に考えられるため、セックスレスを理由に離婚することになったとしても、そのことが親権問題に影響することは、基本的にはありません。

なお、借金によって家計が破綻し、離婚に至っている場合や、DVが原因で離婚し、子供に対しても暴力が振るわれていた場合等、個別の事情によっては、子供の成長に悪影響をもたらすと判断され、離婚に至った理由から親権獲得が不利になることはあります。

Q:

配偶者が単身赴任のため別居状態になり、セックスレスです。離婚できますか?

A:

裁判において、ご質問のケースでは裁判所に離婚を認めてもらうのは難しいでしょう。単身赴任は、仕事の都合上やむを得ない事情であるため、単身赴任により別居状態となり、セックスレスになってしまったとしても、正当な理由または特別の事情があるとされ、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると判断される可能性は低いです。

別居期間が相当長期であった場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性があり、裁判所に離婚を認めてもらえることがあります。しかしながら、単身赴任は、ここでいう別居期間には原則含まれません。したがって、たとえ単身赴任による別居状態を離婚理由にしたとしても、離婚を認めてもらうのは難しいといえます。

Q:

婚姻時に子供を希望していたのにセックスレスになった場合、離婚することはできますか?

A:

セックスレスになっている原因が相手からの性交渉の拒否であり、拒否に正当理由がない場合には、裁判において、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして離婚を認めてもらえ、離婚できる可能性があります。

また、ご質問者は子供を望まれていたとのことですので、正当な理由がないのに相手が性交渉を拒否していた場合、夫婦の協力義務違反であると判断され、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するという考え方がなされる可能性もあります。

セックスレスを理由に離婚したい場合は離婚問題に詳しい弁護士にご相談ください

セックスレスを理由に離婚裁判を行うことになった場合、裁判所に離婚を認めてもらえるかどうかは個別の事情によって異なり、ただ単にセックスレスだからというだけでは認めてもらうのは難しいでしょう。また、裁判では、離婚請求はもちろん、慰謝料請求を認めてもらうためにも、セックスレスの証拠が必要になります。しかし、セックスレスは夫婦間のとてもプライベートな事柄であるため、立証すること自体が困難であるという問題もはらんでいます。

セックスレスを理由に離婚したいと悩んでいても、周囲に相談しづらく、一人で抱え込んでいる方もいらっしゃるかと思います。しかしながら、セックスレスを理由に離婚するというのは、決してめずらしいことではありません。弁護士であれば、法律知識に基づき、ご相談者様の状況に応じて適切にアドバイスすることが可能です。また、相手との交渉や裁判における主張・立証を代わりに行うこともできますので、よりスムーズに離婚を成立させ、適切な慰謝料を受け取れる可能性が高まります。

セックスレスを理由に離婚したいと考えているものの、ご不安やお悩みを抱えていらっしゃる方は、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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