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有責配偶者

有責配偶者からの離婚請求

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
この記事の監修
弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

今の配偶者とは別れて浮気相手と再婚したいと考えられている方は、案外少なくないのかもしれません。しかしその場合、配偶者とすんなり離婚することが果たしてできるのかという不安があるかと思います。

法律用語では、浮気をしている側の配偶者のことを「有責配偶者」と呼びます。何だかあまり良い印象を受けない言葉ですが、有責配偶者が離婚したいときにはどのようなことをする必要があるのでしょうか?このページで解説していきます。

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有責配偶者からの離婚請求はできるのか

有責配偶者とは、“夫婦関係が破綻する原因を作った側”の配偶者のことです。不貞行為やDV(家庭内暴力)は夫婦関係を破綻させる行為(≒離婚原因)の典型です。

どちらに非があるとしても、離婚を請求すること自体は可能です。もっとも、夫婦のどちらかが離婚に反対し続けた場合、あくまで離婚を求める側は離婚訴訟を提起する他ありません。

離婚訴訟で離婚を認める判決が下されるためには、離婚原因の有無が問題となりますが、有責配偶者が自分で作り出した離婚原因を以て離婚を請求することは原則として許されません。これがいわゆる“信義則上の制限”と呼ばれるものです。

これを認めてしまうと、もう一方の配偶者は夫婦関係を勝手に壊されたうえに意思に反して離婚させられる等、まさに踏んだり蹴ったりの状態となってしまい、あまりに気の毒だからです。

有責配偶者からの離婚請求が認められる条件

有責配偶者は離婚をしたくても絶対にできないのかというと、そうとは限りません。もちろんハードルは低くありませんが、裁判実務では、以下の3つの要素に鑑みて、例外的に離婚を認める場合があります。

  • 別居期間が夫婦の年齢や同居期間と比べてかなりの長期間であること。
  • 未成熟の子供がいないこと(成人していても学生だったり障害があって働けなかったりする場合は、成熟しているとはみなされないことが多いようです)。
  • 離婚をすることで、もう一方の配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれないこと。

有責配偶者は慰謝料の支払いが必要になる

有責配偶者に該当する場合、離婚を請求した側がどちらであっても、慰謝料支払いの問題が生じます。慰謝料は、不法行為等によって相手方が受けた精神的・肉体的な苦しみを償う目的で支払うお金ですが、この場合は「夫婦関係を破綻させるような行為そのもの」と、「夫婦関係を破綻に至らしめられたこと」の、二つの側面で精神的苦痛が生じうるところとされます。

相手方が「慰謝料は請求しない」とのスタンスにない限り、慰謝料支払いの問題は不可避的に生じます。

また、慰謝料を支払いさえすれば、有責配偶者であっても離婚請求が認められるというわけではありません。有責配偶者とされたなら、慰謝料は支払って当然、離婚できるかどうかは別問題で、そのハードルは高いものと覚悟する必要があります。

有責配偶者からの離婚請求の流れ

離婚の方法には、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4つがあります。このうち最も多いのが、話し合いによって離婚を決める協議離婚で、離婚した夫婦の約9割はこの方法を選択しています。

有責配偶者も、他方の配偶者に離婚を求めること自体は可能です。協議離婚も調停離婚も、話し合いで解決するものであり、夫婦双方が合意すれば、離婚原因の有無にかかわらず離婚は成立します。

当事者間の協議ではまとまらない場合でも、調停では家庭裁判所の調停委員会が話し合いに介在するため、相手方が離婚に応じるとの意向に変化することはありうるところです。もっとも、調停委員会はあくまで中立であるため、常に良い方向に働くとは限りませんし、調停でも解決できない場合、あとは訴訟をするかどうかになります。

すなわち、話し合いで解決できない場合の最終手段が裁判離婚であり、その見通しが暗い状況では、話し合いで解決できるかどうかが極めて重要です。

有責配偶者からの離婚請求の場合、信義則の問題が生じることから、別居がかなりの長期に及んでいる等の事情がなければ、離婚請求が認容される可能性は極めて低いといわざるを得ず、離婚の手続きの段階が進むにつれて見通しは暗くなっていくものです。

有責配偶者からの離婚請求は弁護士へご相談ください

有責配偶者の側から裁判で離婚を認めてもらうためのハードルは極めて高く、一般的なケースよりも長期の別居期間等が要求されます。早期に離婚を成立させるためには、相手方の合意を得ることが不可欠です。そのためには慰謝料や解決金を支払う覚悟はもちろん、これを最大限生かすような硬軟織り交ぜたタフな交渉力が要求されます。

慰謝料や解決金は一旦提示してしまうと、その金額がミニマムのようにとらえられかねませんし、提示するタイミングも重要です。話し合いの段階で決着をつけるべき事案であればあるほど、自己判断でこじらせてしまう前に専門家のサポートを受けることが肝要です。

したがって、ご自身が浮気をした場合のように、有責配偶者に該当するかもしれないと思った方は、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

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別居した場合の婚姻費用について

別居した後も夫婦である以上、収入の多い方は少ない方に生活費を支払わなければなりません。これを婚姻費用といいます。夫婦には相互扶助義務がありますし、子がいる場合その生活費(≒養育費)も生じるからです。

婚姻費用は通常、双方の収入と子の有無や人数、年齢、どちらが監護しているか等の事情を総合して算出されますが、有責配偶者であることは、婚姻費用の算定にも影響しうるところです。

どのような場合に影響するのかについて、以下に説明していきます。

無責配偶者から請求されたら

有責配偶者に対し、他方の配偶者が婚姻費用を請求する場合、婚姻費用の額は原則どおり、双方の収入や子供の有無、人数、年齢、監護状態等をもとに算出します。不貞等の有責配偶者の行為は、慰謝料の問題であって、婚姻費用の増額事由にはなりません。

なお、婚姻費用を請求された場合、双方の収入等から婚姻費用の金額が0円と算定される場合は別として、これを拒否し続けることは困難です。婚姻費用の分担請求は、調停→審判と手続きを踏むことで、強制執行が可能な状態となります。

さらに、理由もなく婚姻費用の支払いを怠り続けたこと自体が、慰謝料請求の理由とされる場合もありますので、その判断は慎重に行う必要があります。

有責配偶者からの請求は可能か

有責配偶者が他方の配偶者に婚姻費用を請求する場合も、基本的には夫婦の生活保持義務に基づき、双方の収入や子の人数等を基礎として算定することになります。このうち、子の養育費に相当する部分は、有責性の有無にかかわらず支払われるべきものとされますが、有責配偶者自身の生活費に相当する部分については否定的な傾向にあります。

いくら夫婦間には生活保持義務があるといっても、別居等の原因を自分で作りながら、自分の生活費を相手方に要求するのは、権利の濫用と判断されうるためです。

もっとも、明確な証拠がなく有責行為があったとはっきり認定できないケースや、他の事情も別居に影響していると認定されるケース等、権利濫用とまでは認定されない場合もあります。よって、常に“有責配偶者自身の生活費は支払う必要なし”と判断されるわけではない点は、注意が必要です。

双方に有責性がある場合

夫婦双方に有責性がある場合は、どちらの責任がより大きいかを比較して、その程度に応じて婚姻費用の調整を行います。

ただし、婚姻費用は一方の配偶者にとっては別居期間中の重要な生活費であるため、なるべく早急に算定する必要があります。とはいえ、婚姻費用を決める調停や審判で有責性を判断することは、本来の目的とは異なります。そのため、婚姻費用を決める調停や審判では大まかに有責性を判断して、それをもとに婚姻費用を定めます。その後、離婚調停や裁判で有責性について正確に評価して、もし婚姻費用に過不足があるとわかった場合は、代わりに財産分与で調整することになります。

子供がいる場合、有責性は影響するか

有責配偶者が他方の配偶者に婚姻費用を請求する場合でも、子供の養育費に相当する部分の請求は認められるのが通常です。親が別居することに関して子供に責任はないので、子供が不利益を被るべきではないと考えられているためです。

また、離婚の場面では慰謝料や財産分与等についても取り決めをすることがありますが、子供がいる場合、親権はもちろんのこと、養育費、面会交流についても話し合うことになるでしょう。

一方の当事者による不貞のような事情は、基本的に、これら子供に関する離婚条件にはほとんど影響しません。これに対しDV事案では、子供に対する虐待の有無や、面前でのDV等が、親権や面会交流の判断に大きく影響します。

有責配偶者からの離婚請求が認められた判例

<東京高判平成14年6月26日 家裁月報55巻5号150頁>

家族構成:夫(51歳)、妻(50歳)、長男(社会人)、二男(大学卒業済)
同居期間:約22年
別居期間:約6年

不貞行為をした夫から妻に対する離婚請求が認められた事案ですが、このような事案で、別居期間6年というのはとても短い部類に属します。

それでも夫の離婚請求が認められたのは、裁判所が、別居期間の他、夫が有責配偶者であると認められるものの、妻の不倫疑惑が夫婦関係の悪化を促進させる要因となっていたことや、2人の子はいずれも成人・大学も卒業していること、妻は学校教師として相当の収入を得ていること、夫が自宅建物を妻に分与し、かつ同建物について残っているローンも完済するまで支払い続けるという意向を表明していること等の事情を考慮したためです。

<大阪高判平成19年5月15日、判タ1251号312頁>

家族構成:夫(46歳)、妻(46歳)、長男(18歳)、二男(16歳)
同居期間:約8年(うち家庭内別居約2年)
別居期間:約13年

有責配偶者である夫が、二男出生直後から不貞を開始し、別居後は不貞相手と同棲し続けたうえ、妻に離婚を請求したという事案です。控訴審も指摘するように、別居期間としては、婚姻後の同居期間に比して長期に及んでいた事案でしたが、原審は未成年の子の存在や、妻の経済状況、慰謝料や財産分与に対する夫の主張等から、妻は極めて苛酷な状況に陥るとして、夫の請求を棄却しました。

これに対し控訴審は、子はいずれも高校生であり、経済的な面を別とすれば離婚によって大きな影響を受ける可能性は低いと判示したうえで、経済面としても、夫の過去の婚姻費用の支払い状況や養育費として1人当たり月5万円を提案していることに加え、控訴審の一部和解で、夫が150万円の慰謝料と、毎月払いの養育費の他に、次男の大学進学費用150万円の支払いを確約して債務名義を作成したこと等、様々な事情を考慮し、「現時点においては,破綻の経緯やその後の事情等を十分考えに入れたとしても…本件離婚請求を信義誠実の原則に反するものとして棄却すべき理由はない」として、夫の離婚請求を認容しました。

有責配偶者が別居をする場合は弁護士にご相談ください

有責配偶者から離婚訴訟に踏み切る場合、通常よりもはるかに長期の別居期間が要求されます。

しかし、離婚をしたいからといって強引に別居に踏み切るのは、あまり得策ではありません。勝手に別居をすると、有責行為を働いたうえに配偶者を見捨てたとして、裁判官の心証が悪くなり、さらに不利な立場になってしまう可能性があるからです。そのため、別居について相手方の合意を得て、婚姻費用についてもきちんと取り決めをするべきだといえます。

とはいえ、長期間に渡って婚姻費用を支払い続けるのは、かなりの負担になってしまうかと思います。弁護士であれば、夫婦の個別の状況を整理したうえで、婚姻費用を安くしてもらえるよう交渉するといったサポートをすることもできるので、ぜひ一度ご相談ください。

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有責配偶者からの離婚請求についてのQ&A

Q:

有責配偶者に時効はありますか?

A:

普段よく耳にする“時効”とは、すでに発生している権利等について、これを行使しないまま一定期間が経過した際に、当該権利の消滅等を規定するものです。

これに対し、離婚訴訟は夫婦関係という現在の法律関係を、裁判所に変更(離婚)してもらうことを求める訴えであって、既発生の権利ではありません。当該不貞行為等そのものにより生じた慰謝料請求権(不法行為に基づく損害賠償請求権)は時効の問題が生じますが、離婚を求める理由として、過去の不貞や暴力等を主張することに「時効」の概念はありません。

とはいえ、過去に不貞行為があったとして、その後何十年も平穏に夫婦関係が続いていた場合のように、すでにその不貞行為は他方の配偶者も許していて解決済み、との心証を裁判所が抱くことはありうるでしょう。過去の行為だから主張できなくなるというのではなく、その後の状況により、その事実だけでは離婚の原因として足りないと判断される場合がある、ということです。

Q:

有責配偶者からの離婚請求が認められる別居期間はどれくらいですか?

A:

有責配偶者からの離婚請求を認めてもらうには3つの条件を満たす必要があり、そのうちのひとつが「長期間の別居」であることはすでに説明したとおりです。それでは、実際に何年間別居をしていれば「長期間」と認められるのでしょうか?

実は、具体的な別居期間について法律上の決まりがあるわけではありません。離婚訴訟では、別居期間を単に夫婦の年齢や同居期間と対比するだけでなく、時の経過が双方に与えた影響についても考慮されます。

とはいえ、大体の目安が知りたいところかと思いますが、実務では別居期間が7年~10年程度に及んでいれば長期間であると認められることが多いようです。ただし、個別の状況によってはこの限りでないので、そのことは念頭に置いておきましょう。

Q:

有責配偶者ですが、妻から請求された婚姻費用が高すぎます。金額は通常どのように決めますか?

さらに詳しく
婚姻費用計算ツール
Q:

専業主婦で子供がいますが、有責です。婚姻費用の請求はできますか?

A:

有責配偶者であっても、婚姻費用を請求すること自体は可能です。この質問のケースでは請求する側が有責配偶者なので、上述のとおり、自身の生活費分については認められないか減額される可能性はありますが、子供の養育費分については認められるでしょう。

有責配偶者からの離婚請求を自分一人で成功させるのは難しいので、弁護士に相談しましょう

有責配偶者が離婚をするには、基本的に相手方に受け入れてもらうしかありません。離婚訴訟で認容判決をもらうためのハードルは高く、長期の別居とその間の婚姻費用の支払い等を覚悟しなければなりません。

自分が有責配偶者にあたる場合は、まずは弁護士に相談しましょう。不利な状況にあるからといって、なにもかも相手方の言いなりになっていれば解決するというものではありません。むしろ、自己判断の結果、状況をさらに不利にしたうえで、離婚そのものすら膠着状態に陥ってしまう場合すらあるでしょう。

弁護士は、相手方が有責行為の証拠を持っているのか、その証拠は本当に有効なのか、相手方にも有責性はないのか、離婚にあたりお互いの譲れない点は何なのかといったことを見極めたうえで、戦略的に交渉を進めます。

不利な状況にあるからこそ、その不利益を最小限に抑え、早期の離婚成立の可能性を少しでも上げる必要があると思います。そのためには、まずは相談することが重要です。

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