有責配偶者からの離婚請求は認められるのか

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
この記事の監修
弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

民法上の離婚事由に当たる行為を行い、婚姻関係を破綻させる原因を作った配偶者のことを、有責配偶者といいます。自ら婚姻関係を破綻させる原因を作っておきながら離婚したいと望むことについて、あなたはどう思いますか?有責配偶者から離婚請求をされた側としては、「認められるべきではない」「離婚に応じるにしてもそれ相応の慰謝料を支払ってほしい」といったことを考えるのではないでしょうか。

有責配偶者からの離婚請求は果たして認められるのか、有責性があることは、慰謝料や婚姻費用、養育費といったお金の問題に影響するのか、本ページで解説していきます。

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有責配偶者からの離婚請求は原則的に認められていない

有責配偶者が自分で作り出した離婚原因をもって離婚を請求することは、原則として許されません。これがいわゆる“信義則上の制限”と呼ばれるものです。

これを認めてしまうと、もう一方の配偶者は夫婦関係を勝手に壊されたうえに意思に反して離婚させられる等、まさに踏んだり蹴ったりの状態となってしまい、あまりに気の毒だからです。

有責配偶者からの離婚請求が認められる条件

有責配偶者からの離婚請求は認められないのが原則ですが、裁判実務では、以下の3つの要素に鑑みて、例外的に離婚請求を認める場合があります。

  • 別居期間が夫婦の年齢や同居期間と比べてかなりの長期間であること。
  • 未成熟の子供がいないこと(成人していても学生だったり障害があって働けなかったりする場合は、成熟しているとはみなされないことが多いようです)。。
  • 離婚をすることで、もう一方の配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれないこと。

有責配偶者は慰謝料の支払いが必要になる場合が多い

有責配偶者に該当する場合、相手方が「慰謝料は請求しない」とのスタンスにない限り、慰謝料支払いの問題は不可避的に生じるでしょう。

また、慰謝料を支払いさえすれば、有責配偶者であっても離婚請求が認められるというわけではありません。有責配偶者とされたなら、慰謝料は支払って当然、離婚できるかどうかは別問題で、そのハードルは高いものと覚悟する必要があります。

なお、慰謝料額の一般的な相場は、離婚までは至らない場合は50万~100万円、離婚に至った場合には100万~300万円程度です。ただし、個別の事情によって、相場以上の金額になることもあれば、相場よりも低い金額になることもあります。

別居した場合の婚姻費用について

別居した後も夫婦である以上、収入の多い方は少ない方に生活費を支払わなければなりません。

婚姻費用は通常、双方の収入と子供の有無や人数、年齢、夫婦のどちらが監護しているか等の事情を総合的に考慮して算出されますが、有責配偶者であることは、婚姻費用の算定にも影響し得ます。

どのような場合に影響するのかについて、以下で説明していきます。

有責配偶者からの請求は認められるのか

別居等の原因を作っておきながら、自分の生活費を相手方に要求するのは、権利の濫用と判断される可能性が高く、婚姻費用の請求は認められにくい傾向にあります。

ただし、子供の養育費に相当する部分は、有責性の有無にかかわらず支払われるべきものとされます。

もっとも、明確な証拠がなく、有責行為があったことをはっきり認定できないケースや、他の事情も別居に影響していると認定されるケース等、権利濫用とまではされない場合もあります。よって、常に“有責配偶者自身の生活費を支払う必要はない”と判断されるわけではない点には、注意が必要です。

双方に有責性がある場合

夫婦双方に有責性がある場合は、どちらの責任がより大きいかを比較して、その程度に応じて婚姻費用の調整を行います。

ただし、婚姻費用は一方の配偶者にとっては別居期間中の重要な生活費であるため、なるべく早急に算定する必要があります。とはいえ、婚姻費用を決める調停や審判で有責性を判断することは、本来の目的とは異なります。そのため、婚姻費用を決める調停や審判では大まかに有責性を判断して、それをもとに婚姻費用を定めます。その後、離婚調停や離婚裁判で有責性について正確に評価して、もし婚姻費用に過不足があるとわかった場合は、財産分与で調整することになります。

養育費に有責性は影響するか

有責配偶者が他方の配偶者に婚姻費用を請求する場合でも、子供の養育費に相当する部分の請求は認められるのが通常です。親が別居することに関して子供に責任はないので、子供が不利益を被るべきではないと考えられているためです。

また、未成年の子供がいる場合、離婚の場面では、親権者を定めなければならず、併せて離婚後の子供の養育費についても取り決めていくことになるでしょう。

この場合も、一方に有責性があることは、基本的に、養育費の請求や金額の算定には影響しません。

有責配偶者からの離婚請求が認められた裁判例

東京高等裁判所 平成14年6月26日判決

家族構成:夫(51歳)、妻(50歳)、長男(社会人)、二男(大学卒業済)
同居期間:約22年
別居期間:約6年

不貞行為をした夫から妻に対する離婚請求が認められた事案ですが、このような事案で、別居期間6年というのはとても短い部類に属します。

それでも夫の離婚請求が認められたのは、裁判所が、別居期間の他、夫が有責配偶者であると認められるものの、妻の不倫疑惑が夫婦関係の悪化を促進させる要因となっていたことや、2人の子はいずれも成人し大学も卒業していること、妻は学校教師として相当の収入を得ていること、夫が自宅建物を妻に分与し、かつ同建物について残っているローンも完済するまで支払い続けるという意向を表明していること等の事情を考慮したためです。

大阪高等裁判所 平成19年5月15日判決

家族構成:夫(46歳)、妻(46歳)、長男(18歳)、二男(16歳)
同居期間:約8年(うち家庭内別居約2年)
別居期間:約13年

有責配偶者である夫が、二男出生直後から不貞を開始し、別居後は不貞相手と同棲し続けたうえ、妻に離婚を請求したという事案です。本判決(控訴審)も指摘するように、別居期間としては、婚姻後の同居期間に比して長期に及んでいた事案でしたが、原審は未成年の子の存在や、妻の経済状況、慰謝料や財産分与に対する夫の主張等から、離婚することにより妻は極めて苛酷な状況に陥るとして、夫の請求を棄却しました。

これに対し控訴審は、子はいずれも高校生であり、経済的な面を別とすれば離婚によって大きな影響を受ける可能性は低いと判示しました。そのうえで、経済面としても、夫の過去の婚姻費用の支払い状況や養育費として1人当たり月5万円を提案していることに加え、控訴審の一部和解で、夫が150万円の慰謝料と、毎月の養育費の他に、次男の大学進学費用150万円の支払いを確約して債務名義を作成したこと等、様々な事情を考慮し、「現時点においては,破綻の経緯やその後の事情等を十分考えに入れたとしても…本件離婚請求を信義誠実の原則に反するものとして棄却すべき理由はない」として、夫の離婚請求を認容しました。

有責配偶者からの離婚請求が認められなかった裁判例

東京高等裁判所 平成19年2月27日判決

家族構成:夫(54歳)、妻(54歳)、長男(成人)
同居期間:約14年
別居期間:約9年

不貞行為をした夫が妻に対し、離婚を求めたという事案です。夫婦の間には、1級の身体障害者である子がいました。 裁判所は、子について、日常生活全般にわたり介護が必要な状況にあることから、成年に達して大学も卒業しているものの、実質的には未成熟の子と同視することができるとしました。

また、妻の介助なしで子が日々の生活を送ることができるとは考えられず、子を放置して妻が相当時間就業することが可能であるとは考えにくいとしました。さらに、54歳という年齢からしても、限られた時間の中で安定した職業を見つけることは困難であろうという考えを示しました。

加えて、妻は、夫が賃借している建物に居住しており、離婚した場合、妻が現住居からの退去を余儀なくされる可能性も否定し難く、離婚により、妻が経済的に困窮することは十分に予想されるところであるとしました。

以上のような状況を総合的に考慮し、裁判所は、離婚は子の今後の介護・福祉等に一層の困難を生じさせ、離婚により妻が精神的・経済的に極めて過酷な状況に置かれるものというべきであると判断しました。そして、離婚請求を認容することは著しく社会正義に反し、夫の離婚請求は、信義誠実の原則に照らし認容することができないものであるとして、請求を棄却しました。

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有責配偶者からの離婚請求についてのQ&A

Q:

有責性に時効はありますか?

A:

過去の不貞行為や暴力等の有責性を主張することに、「時効」の概念はありません。

とはいえ、過去に不貞行為があったとして、その後何十年も平穏に夫婦関係が続いていた場合のように、すでにその不貞行為は他方の配偶者が許していて解決済み、との心証を裁判所が抱くことはあり得るでしょう。これは、過去の行為だから主張できなくなるというのではなく、その後の状況により、その事実だけでは離婚の原因として足りないと判断される場合がある、ということです。

Q:

有責配偶者からの離婚請求が認められる別居期間はどれくらいですか?

A:

具体的な別居期間について、法律上の決まりがあるわけではありません。離婚訴訟では、別居期間を単に夫婦の年齢や同居期間と対比するだけでなく、時の経過が双方に与えた影響についても考慮します。

実務では、別居期間が7年~10年程度に及んでいれば長期間であると認められることが多いようです。ただし、個別の状況によってはこの限りでないので、そのことは念頭に置いておきましょう。

お悩みの方は弁護士にご相談ください

「相手が離婚原因となる行為をしたにもかかわらず、離婚を切り出すなんて許せない」このように思う方は多いのではないでしょうか?有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。しかし、一定の条件を満たした場合や個別の事情によっては、例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められることがあります。離婚を望まないのであれば、応じる必要はありませんが、有責配偶者からの請求であっても離婚が成立する可能性はゼロではないことを念頭に置いておきましょう。

有責配偶者からの離婚請求についてお悩みの際は、まずは弁護士にご相談ください。弁護士は、ご依頼者様が何を望まれているのかをしっかりと伺ったうえで、状況に即してどのように対応していけば良いのか、適切にアドバイスいたします。また、代理人となって相手との交渉を引き受けることや、有責配偶者に対する慰謝料請求のサポートを行うことも可能です。

たとえ離婚することになったとしても、弁護士の力を借りれば、不利な条件で離婚を成立させてしまう事態を防げます。有責配偶者に対しては慰謝料を請求できる可能性もありますので、有責配偶者から離婚請求をされてお困りの方は、弁護士に相談・依頼し、納得のいく解決を目指しましょう。

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