調停委員と離婚調停の際どう接したらよいか

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
この記事の監修
弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

離婚問題について、当事者間での話し合いでは解決が難しい場合には、離婚調停という裁判所の手続を利用するのが一般的な流れです。離婚調停とは、家庭裁判所の調停委員会を介して行う話し合いのことで、調停で実際に話す相手となるのは、調停委員と呼ばれる人たちです。

調停委員は、夫婦の話し合いを仲裁する立場であり、双方の意見を聞きながら、解決案を策定していきます。一方に正当性があると感じたら、その意見に寄せた調整案を提示し、もう一方の説得を試みることもあるでしょう。そこで、「調停委員を味方につける」ということが、重要なポイントとして挙げられます。

それでは、調停委員とはどのような人なのでしょうか?そして、調停委員と話すときに気をつけるべきことはあるのでしょうか?離婚調停をご自身にとって有利に進められるよう、本ページで、調停委員についての理解を深めていきましょう。

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調停委員とは

調停委員とは、裁判官(または調停官)とともに調停委員会を構成するメンバーのことで、最高裁判所によって任命されます。離婚調停にあたる調停委員は、正式には「家事調停委員」といいます。裁判官は、基本的に、調停が成立・不成立になるときや、裁判官の意見が必要なとき等にのみ同席し、毎回の調停に現れるわけではありません。したがって、離婚調停では、ほとんどが調停委員を相手に話すことになります。

調停委員の任命基準は、民事調停委員及び家事調停委員規則1条に定められており、下記の要件のいずれかに該当する者で、原則、40歳以上70歳未満の者から選ばれます。

  • 弁護士資格を有する者
  • 民事または家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者
    (例:医師、司法書士、税理士等)
  • 社会生活の上で豊富な知識経験を有する者
    (例:大学教員、医師、裁判所職員出身者等。特に、専門知識が必要となる調停手続(システム開発紛争に関する調停や建築調停では、大学教授や一級建築士が調停委員として関与することがあります。もっとも、このような専門知識を有する調停委員の確保は非常に困難なため、東京、大阪等の大規模庁に限られます。)

また、最高裁判所から、「民事調停委員及び家事調停委員の任免等について」(平成16年7月22日民二第288号)との通達が出されていますが、その中の選考基準でも、「公正を旨とする者であること」「豊富な社会常識と広い視野を有し、柔軟な思考力と的確な判断力を有すること」といった抽象的な基準に留まっています。

なお、離婚調停においては、調停委員は男女1名ずつとなるケースが多いようです。

調停委員には法律の知識がない一般人が選ばれる場合も

上述したとおり、調停委員の任命基準は、「弁護士資格を有する者」以外、とても抽象的な内容になっています。必ずしも法律に精通している者が調停委員に選ばれるというわけではなく、法律の知識がない一般人が選ばれる場合もあります。

裁判官はいつも調停に同席するわけではないため、調停委員が裁判官に適切に相談しなければ、法律の知識がない調停委員の勝手な方針で調停案が提示されることも否定できません。調停委員が言うことは正しいとは限らないので、納得できないのであれば、意見すべきです。

本当は腑に落ちていないのに合意してしまい、合意内容をまとめた調停調書が作成されてしまったら、基本的に後からその内容を変更することはできません。調停調書は、強制執行を可能にする強い効力を持つ債務名義になります。安易に合意してしまわないよう、ご注意ください。調停調書についての詳しい内容は、下記のページをご覧ください。

調停委員と話すときのポイント

離婚調停における相手方との関係で有利な立場に立つためには、ご自身の意見に正当性があることを調停委員に伝えられるかどうかが重要になってきます。次項より、調停委員と話すときのポイントをいくつかご紹介します。

なお、離婚調停に臨むにあたっては、調停委員から聞かれそうなことをある程度予想して回答を考えておくといった、事前準備を行うに越したことはありません。

礼儀正しく冷静に対応する

調停委員と話すときは、話す内容だけではなく、話す態度にも気を配った方が良いといえます。調停委員に与える印象は、調停を有利に進められるかどうかに影響することがあります。

マナーを守れておらず、感情的になって話してしまっては、言っていることに正当性があるのか、疑念を持たれてしまうかもしれません。より調停委員からの理解を得られやすくなるよう、時間を守る、裁判所という場にふさわしい清潔な服装にする、落ち着いて話す等、礼儀正しく冷静に対応することを心がけましょう。

分かりやすく主張を伝える

離婚調停では、ただ単に思っていることをそのまますべて話せば良いというものではありません。相手への不満ばかりを述べる等、感情のままに長々と話してしまっては、本当に主張したいことが埋もれてしまい、理解してもらえなくなってしまうおそれがあります。不要なことは語らず、端的に、分かりやすく主張を伝えることも、調停委員と話すときのポイントとして押さえておきましょう。

正当な主張であることを証拠で裏付ける

ご自身の主張に正当性があると判断してもらうには、主張を裏付ける証拠が重要になります。離婚調停において、証拠の提出は絶対に必要なことではありませんが、口頭のみで意見するよりも、証拠を用いて立証した方が、主張に説得力が増します。また、相手方が事実とは異なる内容を主張してきたときに、反論する材料としても有用です。

調停委員に一人で対応できるか不安……弁護士に相談・依頼するメリット

離婚調停は、弁護士に依頼せずにご自身だけで行うこともできます。当事者間の合意がなければ調停は成立しないので、納得できないのであれば同意しなければ良いだけです。しかし、調停不成立となって離婚裁判に発展した場合、離婚調停での経緯や提出資料が影響することがあります。そのため、離婚調停をご自身にとって有利に進められるに越したことはありません。

調停委員に対し、一人で対応できるか不安がある場合には、弁護士に相談・依頼するというのも一つの手です。法律的な観点から、どのような主張・立証をすれば良いのか、ご自身の状況に沿った適切なアドバイスを受けることで、離婚調停をご自身に有利に進められる可能性があります。また、法律の専門家である弁護士にサポートしてもらえれば、一人で対応するよりも、精神的な負担は軽くなることでしょう。

とはいえ、弁護士に相談・依頼するのには費用がかかります。ご事情を鑑みたうえで、「どうしても譲れない離婚条件がある」「DV等が原因で裁判所に赴くこと自体が怖い」「調停委員と話すことに不安がある」このようなお悩みを抱えている方は、弁護士に相談・依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。

調停委員に不満がある場合

調停委員といえども人間ですから、担当になった調停委員とどうしても合わないと感じることもあるかと思います。調停委員に不満がある場合、どう対処したら良いのでしょうか?次項より確認していきます。

調停委員の変更は難しい

まず思いつく対処法として、「調停委員の変更」を挙げる方は多いことでしょう。ですが、現行法上、調停委員の変更を認める規定はありません。調停委員を変更してほしいと希望すること自体は可能ですが、変更するか否かを判断するのは家庭裁判所です。基本的に、調停委員と当事者が親族関係にあるといった特段の事情がない限り、当事者の希望で調停委員を変更することは認められないというのが実情のようです。

調停委員の変更は難しいといえますが、不満を感じたまま離婚調停を続ける必要はありません。調停を取り下げるか、同意せずに調停を不成立にするといった手段をとることもできます。

調停委員の公平性、態度や発言に問題がある場合

調停の進め方や調停委員からの提案内容に不満があるといった理由では、調停委員の変更を認めてもらうのは難しいでしょう。当事者の意見は対立することが通常であり、一方の当事者からみたら不利に進められていると感じても、他方の当事者としては何の不満もないという場合もあります。このような場合に、安易に調停委員を変更してしまっては、一向に調停が進まなくなってしまうおそれがあるからです。

しかし、差別的な発言をされたり、侮辱されたり等、調停委員の公平性、態度や発言に問題がある場合には、調停委員の変更が認められる可能性があります。まずは、家庭裁判所の担当書記官に相談してみましょう。書記官から裁判官に報告がなされ、調停委員を変更してもらえるケースもあります。

家庭裁判所の書記官に相談しても状況が変わらないときは

家庭裁判所の書記官に相談しても、調停委員を変更してもらえず、状況が変わらないときには、家庭裁判所の総務課に苦情を申し出るという方法もあります。申し出る際には、担当者だけで判断して無視されてしまわず、より上級の役職者にも伝わるよう、口頭で済ませるのではなく、書面で提出することをおすすめします。

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調停委員に関するQ&A

Q:

調停委員が相手に非開示情報を言ってしまった場合、どのように対応すれば良いですか?

A:

まず、「故意に非開示情報を言ったのか」を確認することが必要です。調停委員には守秘義務があり、故意により、正当な理由がなく、職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を洩らしたときには、家事事件手続法に定められた罰則により処罰されることがあります(家事事件手続法292条)。

また、非開示情報を伝えてしまったことが故意か過失かにかかわりなく、裁判所法82条により、裁判所の事務取扱方法に対して不服を申し立てることが、対応方法として考えられます。

さらに、民事調停委員及び家事調停委員規則6条に基づき、不適切な調停委員を解任するよう求めることも考えられます。(ただし、解任の権限はあくまで最高裁判所にあります。調停の当事者が、調停委員の解任を強制することはできません。)

なお、非開示情報の開示により損害を被ったときは、国を相手として国家賠償請求訴訟を提起することも想定されますが、費用対効果が見合わないことが多いです。

Q:

離婚調停が不成立となり、裁判を行うことになった場合、調停委員の心証や記録は判決に影響しますか?

A:

調停委員は、判決の作成にかかわるわけではありません。裁判はあくまで裁判官が手続を行います。そのため、調停委員の心証が裁判官に引き継がれることは原則としてありません。例外として、調停を担当した裁判官が、引き続き裁判を担当することがあります。このような場合は、調停委員の心証が、事実上引き継がれてしまうことがあります。

また、調停の記録と裁判の記録は別ですので、調停の記録がそのまま判決に影響するわけではありません。しかし、裁判に提出された調停の記録は、当然、証拠として判決に影響を与えることになります。家事事件の場合、調停・裁判を通じて、家庭裁判所調査官の作成する調査報告書の影響力が特に大きいです。

したがって、調停手続中から、裁判になることを見越して対応しておくことが望ましいです。

調停委員とのやりとりは、経験豊富な弁護士にお任せください

離婚調停は、調停委員とやりとりしながら進めていきます。配偶者と直接話す必要がないという面では、気持ちとして楽かもしれませんが、「調停委員ってどんな人なんだろう?」「うまく受け答えができるだろうか…」と、今度は調停委員に対する心配事が生じる方も多いことでしょう。

普段なかなか接する機会がないであろう調停委員とのやりとりですので、不安に思うのは当然のことです。そのようなときは、弁護士にお任せください。特に離婚問題の経験豊富な弁護士なら、法律の知識はもちろん、これまで培った経験に基づき、離婚調停をご依頼者様にとって有利に進めることを目指し、サポートすることができます。調停委員に対して適切な対応ができず、不満が残ったまま離婚調停を終わらせてしまうという事態を防ぐためにも、調停委員とのやりとりに不安がある場合は、まずは弁護士にご相談ください。

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