事実婚の年金分割 | 条件や手続き方法

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
この記事の監修
弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

事実婚とは、結婚していないものの、実質的に夫婦と同視できる状況にある男女の関係をいいます。この点、年金分割は、基本的に結婚している男女を想定しているため、事実婚の場合に年金分割をすることができるのだろうかと疑問に思われる方もいるかと思います。
そこで、本記事では、下記のケースにおける年金分割について、解説していきます。

・事実婚を解消したケース
・事実婚から法律婚に移行した後に離婚したケース

事実婚の関係にあり、年金分割についてお悩みがある方は、ぜひご一読ください。

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事実婚の年金分割は可能か

年金分割とは、厚生年金保険料の納付実績が配偶者と比べて少ない夫(妻)の請求によって、他方配偶者の納付実績をある程度の割合に基づいて分割し、夫(妻)の納付実績に付与する制度です。
年金分割には、合意分割と3号分割の2種類があり、合意分割は全婚姻期間を、3号分割は婚姻期間のうち第3号被保険者であった期間を分割の対象とします。

この点、事実婚の場合、その年数や時期といった期間を証明することが難しいため、年金分割をすることは難しいように思われますが、「第3号被保険者であった期間」については客観的に証明できるため、年金分割の対象とすることができます。したがって、事実婚の場合にも、3号分割と合意分割のどちらかを選択して請求できるように思えますが、合意分割を請求すると、3号分割についても請求があったものとして扱われるため、実際には3号分割のみできることになります。

なお、3号分割をするにあたっては、合意分割で必要とされる、「合意分割をすること」とその「按分割合」についての合意は必要ありません。詳しくは下記の各記事をご覧ください。

さらに詳しく
3号分割とは

事実婚の場合に年金分割が認められる条件

事実婚の場合に年金分割が認められる条件は、次のとおりです。

  • 事実婚をしていた期間内に、一方が他方の(※)第3号被保険者であった期間があること
  • 第3号被保険者であった一方がその資格を喪失していること
  • 事実婚を解消したと認められること

(※)第3号被保険者とは、厚生年金加入者である配偶者に扶養されている、20歳以上60歳未満の国民年金加入者をいいます。

事実婚の関係にあった一方が他方の扶養に入り、第3号被保険者となると、第3号被保険者になってからその資格を喪失するまでの期間は、事実婚をしていたことが客観的に証明できるため、その期間については、年金分割をすることが認められることになります。

年金分割の請求期限

事実婚では、第3号被保険者の資格を喪失し、事実婚が解消されたと認められる日の翌日から2年過ぎると、年金分割を請求できなくなります。
また、年金分割をする側の当事者が亡くなった場合は、1ヶ月以内に請求を行わなければならなくなります。

事実婚をしていた場合に年金分割するときの手続方法

事実婚の期間、すなわち第3号被保険者であった期間を証明できる、住民票等の書類が必要です。その他の必要書類等、3号分割についての詳しい説明は下記の記事をご覧ください。

さらに詳しく
3号分割の手続き方法

事実婚を解消する際の様々なお悩みや年金分割に関する疑問は弁護士へご相談ください

法律婚と異なり、法的な保護を受けられないこともある事実婚が破綻した場合でも、年金分割はもちろん、財産分与や養育費等も請求することができます。しかし、年金分割や財産分与を請求しても、「本当に夫婦関係だったと言えるのか」といった反論がなされることもあり、法律婚を解消した場合と比べて、解決すべき問題が多くなる傾向にあります。事実婚の解消をお考えの方は、パートナーに切り出す前に、あらかじめ弁護士に相談しておき、年金分割をはじめとする、事実婚を解消する際の取り決めについて考えをまとめておき、事実上の夫婦関係にあったことを証明できる資料をできる限り準備すると良いでしょう。

法律婚へ移行した場合の考え方

事実婚から法律婚へ移行すると、事実婚は解消されることになりますが、このことを理由に年金分割を請求することはできません。なぜなら、事実婚の代わりに法律婚という新たな関係が構築されており、協力して厚生年金保険料を納めていく関係に変化はないからです。したがって、事実婚の期間と法律婚の期間は連続するものとして扱われるので、年金分割は、離婚して法律婚が解消された時に請求できることになります。

ただし、事実婚の場合に年金分割を請求できるのは、第3号被保険者であった期間のみに限られているので、年金分割を請求できる期間は、「事実婚の期間中に第3号被保険者であった期間+法律婚の全期間」ということになります。

重婚的内縁関係の場合でも年金分割は可能か?

重婚的内縁関係にある男女は、通常の事実婚とも扱いが異なり、一般的に法律上の夫婦としては認められず、法的な保護も受けられないことが多いです。しかし、法律婚に優先して保護されることもあります。

もっとも、ケースバイケースであるため、自己判断は危険です。
詳しい説明は、下記の記事をご覧ください。

さらに詳しく
重婚的内縁について

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事実婚(内縁関係)と年金分割のQ&A

Q:

内縁の妻は遺族年金を受け取れますか?

A:

原則として、遺族年金は法律上の配偶者に支給される年金であるため、内縁の妻は受け取ることができません。ただし、①死亡時に生計維持関係が認められ、②客観的にも内縁関係であると認定されることで、内縁の妻が遺族年金を受け取ることが可能となります。そのためには、健康保険被保険者証の写しや住民票、結婚式を挙げたことを証明する書類等を提出して、籍は入れていないけれども、事実上婚姻関係にあることを説明しなくてはなりません。

特に、住民票上で同一世帯になっていることが判る場合は、内縁関係でも遺族年金を受給できる可能性が高くなる(反対に、同居していない、別世帯等の記載であると、内縁関係にあることの説明は非常に困難になるでしょう)ので、遺族年金を受け取るためには、住民票だけでも同一世帯にしておくと良いでしょう。

もっとも、内縁の夫に戸籍上の妻がいる場合には、こうした書類を揃えたとしても、遺族厚生年金を受け取れる可能性は非常に低いでしょう。戸籍上の妻と内縁の夫との夫婦関係が完全に破綻していて、離婚届が出されないまま長期間に渡って内縁の妻と同居している場合などに、遺族年金の受給が認められた例はありますが、極めて例外的なケースであると考えた方が良いでしょう。

Q:

離婚した後も事実婚の関係にある場合は年金分割の請求はできますか?

A:

できます。
離婚する際には必ず離婚届を提出し、関係が一旦解消されるため、たとえ事実婚の関係にある期間中であっても、法律婚の期間分の年金分割を請求することができます。もっとも、離婚後も事実婚を続ける以上、年金分割の話を持ち出すことに躊躇いを覚えるのか、実際に年金分割を請求する方は少ないようです。

しかし、注意しなくてはいけないのは、年金分割の請求において、「法律婚の期間と事実婚の期間は別個のものとして扱われる」ということであり、年金分割の請求期限である2年は、法律婚の期間分については、離婚時から進むことになります。すなわち、離婚時に年金分割をすることなく事実婚に移行し、その後事実婚を解消した場合、離婚日から2年以内であれば、法律婚の期間分を含めて年金分割を請求できますが、離婚日から2年を経過している場合には、事実婚の期間分の年金分割しか請求できません。

Q:

別居している妻を扶養から外し、事実婚の妻を扶養に入れることはできますか?

A:

法律婚と重婚的内縁関係では、法律婚が優先されるため、基本的に、戸籍上の妻を扶養から外して事実婚の妻を扶養に入れることはできません。ただし、別居が長年に及んでおり、戸籍上の妻と長期間没交渉であるといった事情があり、法律婚が既に形骸化しているといえる場合には、別居している妻の代わりに、事実婚の妻を扶養に入れることができる可能性があります。もっとも、遺族年金と同様、極めて例外的なケースと言わざるを得ないでしょう。

法律上、保護を受けることができる「事実婚」まずは弁護士へご相談ください

事実婚の場合も法律婚と同様に、権利を持ち、義務を負う場合があります。例えば、共有財産を協力のうえ築いたとして、財産分与が認められますし、貞操義務を負うため、配偶者以外と肉体関係を持った場合には、慰謝料を請求されることもあります。もちろん、年金分割を受ける権利も、する義務も互いに有しています。

このように、様々な権利義務を有することになる事実婚を解消する際には、トラブルを未然に防ぐためにも、弁護士に相談することをお勧めします。年金という複雑な制度に基づく年金分割のサポートはもちろん、事実婚の解消に関連して生じる多様な問題の解決のお手伝いもさせていただきますので、ぜひ相談することをご検討ください。

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