診断書をDVの証拠にするには何を書いてもらうべきか

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
この記事の監修
弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

離婚について配偶者の合意を得ることができず、離婚裁判に至ってしまった場合、裁判所の判断によって離婚が成立するかどうかが決まります。配偶者からDVを受けていたことが離婚の原因・理由であるならば、その内容や態様にもよりますが、民法上の離婚事由に該当するとして、離婚を認めてもらえる可能性は高いです。

しかし、配偶者がDVについて否認するおそれがあるため、裁判所に離婚を認めてもらうには、DVを受けていたことを立証する証拠が重要になります。離婚裁判において、DVの証拠になり得るものは様々ありますが、本記事では、特に「診断書」に焦点を当て、DVの証拠について解説していきます。

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この記事の目次

DVを受けたら何科で診断書をもらえるか

何科で診断書をもらえるのか

診断書は、DVを受けて傷病を負ってしまった場合、受診した病院に対して請求手続を行うことで作成してもらうことができます。

傷病の状態や病院によって、受診する科や名称は異なることがありますが、あざ・切り傷・火傷・骨折・鼓膜の損傷といった怪我を負った場合は、整形外科・形成外科・皮膚科・耳鼻咽喉科等を、PTSDやうつ病といった精神疾患にかかった場合は、心療内科や精神科等を受診することになります。また、DVのうち性的暴力を受け、望まぬ妊娠をしてしまったり、性感染症にかかってしまったりするケースもあります。その場合には、産婦人科を受診することになります。

診断書をもらえるのはDVを受けてから何日以内?

DVを受けてから何日以内に病院を受診しないと診断書を作成してもらえない、というような期限はありません。

しかし、DVを受けた日から診断書に記載されている初診日までの期間が空きすぎると、DVと傷病との因果関係を疑われてしまう可能性があります。また、DVを受けてから日が経つにつれ、傷病が治癒し、傷病を負ったこと自体がわからなくなることもあるでしょう。

したがって、傷病を負ったら早期に病院を受診し、診断書を作成してもらうようにしましょう。

診断書の記載内容

診断書には、傷病の詳細がわかるよう、「傷病名」「初診日」「傷病の程度」「治療期間」といった内容を記載してもらいましょう。

なお、診断書は、あくまで傷病を負ったことを証明するものであり、DVを受けていたことを立証できるものではありません。というのも、医師は、傷病について診断できても、原因がDVかどうかまでは断定できず、“DVによって傷病を負った”と診断書に記載してもらうことは難しいのが通常であるためです。しかし、“患者からの申告では、DVによって傷病を負った”というように、患者からの申告内容として記載してもらえる場合はあるため、医師には、「傷病の原因がDVであったという、傷病を負った経緯」も伝えておきましょう。

診断書の提出先

離婚調停を申し立てるとき

離婚調停を申し立てる際は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または双方の合意で定めた家庭裁判所に対し、申立書や戸籍謄本等の必要書類を提出します。診断書等のDVの証拠は、離婚調停の申立時の必要書類ではありませんが、併せて提出しておいた方が良いでしょう。「DVによって離婚に至ったのだ」ということを、調停委員に納得してもらいやすくなり、離婚調停を有利に進めることができる可能性が高まるためです。

離婚調停についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

警察に行くとき

DVを受けたため警察に行き、被害届を提出して受理されると、警察に相談記録が残ります。この警察への相談記録は、離婚裁判においてDVの証拠になり得ますし、子供がいる場合、裁判所が親権者を判断するうえで有利に働くこともあります。

なお、DVによる被害届の提出先は、交番や警察署の生活安全課です。内部規則上、警察官は被害届を受理しなければならないとされていますが、場合によっては不受理にされることもあります。被害届をきちんと受理してもらうためにも、被害届を提出する際は、診断書等のDVの証拠も持って行った方が良いでしょう。

診断書があると離婚のときに有利になること

離婚する際、診断書等のDVの証拠があると、有利になることがあります。例として、「慰謝料の請求」と「子供の親権の獲得」を挙げ、次項より確認していきます。

慰謝料の請求

配偶者からのDVによって離婚に至っている場合、受けた精神的苦痛に対し、慰謝料を請求することができます。

そして、慰謝料請求の裁判を行うことになったとき、裁判所に請求を認めてもらいやすくするためには、診断書等のDVの証拠の存在がとても重要です。また、DVによって負った傷病の程度が重い場合、診断書があることで傷病の程度を立証することができ、慰謝料金額が高額になる可能性があります。

子供の親権の獲得

離婚する際に未成年の子供がいる場合には、子供の親権について決める必要があります。

裁判に至った場合、裁判所は、離婚の原因・理由と子供の親権は別に考えて判断するため、DV加害者のような有責配偶者が親権を獲得するケースもあります。

しかし、子供の前でDVをしていた(面前DV)等の事情がある場合には、DVが子供の養育に悪影響を与えていたと判断され、DV被害者の方が親権の獲得に有利になるでしょう。この場合、診断書をはじめとしたDVの証拠が重要になります。

診断書は弁護士にも確認してもらいましょう

診断書は医師が作成するため、傷病を負ったことを証明する客観的な証拠としてとても重要です。したがって、他のDVの証拠と併せて提出すれば、DVを受けていたことを裁判所に認めてもらえる可能性が高まります。

そして、診断書を作成してもらう際は、傷病の詳細がわかるよう、傷病名だけではなく、傷病の程度や治療期間といった内容も、細かく記載してもらうようにしましょう。

診断書の記載内容に不安がある場合には、弁護士に確認していただければと思います。

診断書以外にDVの証拠になり得るもの

DVの証拠

診断書のほか、「怪我の写真」「音声・動画」「DVを受けたことが記載してある日記」「警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録」といったものも、DVの証拠になり得ます。

怪我の写真

身体への暴行により怪我を負った場合には、傷の状態を映し出した「写真」を撮ってください。写真は、暴行による傷の様子が客観的に観察しやすい証拠なので、DVがあったことを裁判所に認定してもらうために有効な証拠になり得ます。

なお、怪我の写真は、ご自身が受けた怪我であるとわかるよう、受傷した部位を撮った写真だけではなく、ご自身の顔を撮影範囲に含めた写真も用意した方が良いです。

音声・動画

暴行されている様子や暴言を吐かれている様子等、DVを受けている現場の「音声や動画」を記録したデータは、DVの証拠になり得ます。

また、相手が具体的な暴行や暴言について謝罪したり、内容を認めている発言をしたりした際の音声・動画を記録したものも、DVの証拠になり得ます。

DVを受けたことが記載してある日記

DVを受けた日付や場所、内容等、DVを受けたとわかる記載のある「日記」は、DVを立証する証拠の一つとして役立ちます。ただし、ご自身で書く日記はどうしても客観性に欠けてしまうため、日記だけでは弱く、他の客観的証拠と併せて立証していくことになるでしょう。

警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録

DV被害について、警察や配偶者暴力相談支援センター等に相談した場合、相談したことやその内容が記録として残ります。この「相談記録」は、DVを立証する証拠になり得ます。また、この相談の事実は、保護命令の申立てにも必要とされています。

記録にどこまで記載してもらえるかは各相談機関によって異なりますが、DV被害で悩まれていたり、保護命令の申立てをお考えになられていたりするならば、警察や配偶者暴力相談支援センター等の相談機関に行くことをおすすめします。

モラハラ(精神的DV)を受けている場合

モラハラをはじめとした精神的DVは、他者からみると被害がわかりにくいものです。このようなDVを受けている場合、例えば、侮辱・批判をされている内容の「手紙やメール」がDVの証拠になり得ます。詳しくはこちらの記事をご確認ください。

経済的DVを受けている場合

生活費を入れてもらえない、生活費を渡されても金額が明らかに足りないといった経済的DVを受けている場合、「預貯金通帳や家計簿」が証拠になり得るものとして挙げられます。経済的DVの証拠については、下記の記事も参考にしてください。

さらに詳しく
経済的DVの証拠

DVの証拠がない場合は離婚できないのか

DVの証拠がない場合、離婚ができないというわけではありません。離婚方法のうち協議や調停においては、お互いが合意できれば離婚は成立するため、DVの証拠がなかったとしても、離婚できる可能性はあります。

他方で、裁判では、裁判所が離婚(法定離婚事由の有無)について判断を下します。そのため、離婚を成立させるには、裁判所に、DVがあったことを認定してもらい、DVが法定離婚事由に当たるとして離婚を認めてもらう必要があります。DVの証拠がない場合、DVを理由に離婚を認めてもらうことは難しいといえます。

もっとも、離婚の成否については、別居期間が相当期間に及んでいることや本人尋問の内容といった、他の事実・証拠から婚姻関係が破綻していると評価され、法定離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると判断されるケースもありますので、個別の事情によっては離婚を認めてもらえることがあります。

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DVの証拠に関するQ&A

Q:

DVの証拠として提出する診断書に有効期限はありますか?

A:

診断書に有効期限はありません。診断書は、病院を受診した当時、どのような傷病を負い、傷病の程度がどのくらいであるかを証明するものであり、有効・無効という観念がないためです。

Q:

精神科の診断書は、離婚のときに精神的DVの証拠になりますか?

さらに詳しく
モラハラの証拠
Q:

DV加害者の弁護士から診断書の提出を求められたのですが、コピーしたものでも良いですか?

A:

DV加害者の弁護士に対して提出する診断書は、コピーしたものでも問題ありません。むしろ、離婚調停や離婚裁判に至ってしまい、診断書をDVの証拠の一つとして提出する場合に備えて、診断書の原本は残しておいた方が良いでしょう。

Q:

DVの証拠を集めるために録音・録画していた場合、何か罪になりますか?

A:

当事者間のやりとりの録音・録画ですので、犯罪にはなりません。

また、相手の同意なく隠れて録音・録画することを心配なされる方もいらっしゃるかと思いますが、相手の同意のない録音・録画(秘密録音・秘密録画)であっても、犯罪になることはありません。

Q:

接近禁止命令(保護命令)が出たことはDVの証拠になりますか?

Q:

傷害事件等で前科がある場合は離婚するときにDVの証拠として有利になりますか?

A:

相手から受けたDVが傷害事件となった場合を除き、過去にその他の傷害事件等の前科があること自体は、DVの証拠にはなりません。前科がある人すべてがDVを行うわけではないため、相手が暴力を振るう傾向にあるとして、DVを受けていたという主張を補強するのに役立つ可能性があるといった程度でしょう。

DV加害者と離婚するときは経験豊富な弁護士に相談しましょう

配偶者からDVを受けていたことで、離婚を決意する方は多くいらっしゃるでしょう。離婚について配偶者の同意を得ることができなかった場合、離婚裁判に至ってしまうことがあります。離婚裁判において、裁判所に離婚を認めてもらうためには、DVを受けていたことを立証する証拠が重要になります。特に「診断書」は、医師が作成するものであるため、客観的証拠としてとても有効です。

しかし、DV被害者の方におかれましては、離婚を決意するまでに、身体的にも精神的にもすでに負担がかかっていることでしょう。そのうえ、後に離婚裁判に至ってしまった場合に備えて診断書等のDVの証拠を集め、有利に離婚を進めていくには、困難を強いられることが予想されます。

そこで、弁護士であれば、診断書の記載内容を確認したり、DVの証拠についてアドバイスしたりすることができます。さらに、DV加害者である配偶者とのやりとりや、必要な手続を代わりに行うこともできます。

DV加害者と離婚したいと考えているものの、診断書の記載内容やDVの証拠、DV加害者とのやりとりに不安がある場合には、ぜひ弁護士に、なかでも離婚問題について経験豊富な弁護士に、相談・依頼することをご検討ください。

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