離婚調停で親権を決めるポイント

- この記事の監修
- 弁護士 谷川 聖治
- 弁護士法人ALG&Associates 執行役員
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未成年の子供を持つ夫婦は、離婚する際、必ず親権について決めなければなりません。そのため、離婚すること自体は双方の意見が合致していたとしても、親権で揉めてしまっていたら、離婚は成立しません。
当事者間の話し合いでは解決するのが困難な場合、次なる手段は「離婚調停」です。離婚調停は、家庭裁判所の調停委員会が間に入り、話し合いを行うという手続です。
離婚調停を成立させるには、双方の合意が必要ですが、ご自身が親権者としてふさわしいと調停委員に判断されれば、相手方を説得してもらえる可能性があります。つまり、離婚調停で親権を獲得するには、調停委員を味方につけ、有利に進められるかどうかが重要になってくるということです。
離婚調停で親権を獲得したい場合に知っておくべきことについて、本ページで確認していきましょう。
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離婚調停で親権者を決めるには
離婚に伴い親権を巡って争いが生じ、当事者間の話し合い(協議)による解決が難しい場合には、家庭裁判所に申し立て、離婚調停を行うことになります。申立てが受理された後、第1回調停期日、第2回調停期日、というように順次期日が設けられ、基本的に双方が合意できれば調停による離婚が成立します。
この流れのなかで親権者を決めていくのですが、親権が争点になっている場合、期日と期日の間に家庭裁判所調査官による調査が行われることが多くあります。
離婚調停の流れについての詳しい内容は、下記のページで解説しています。ぜひご覧ください。
離婚調停の申立方法
離婚調停を申し立てる際には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者間の合意で定める家庭裁判所に対し、申立書(およびその写し1通)と必要な添付書類を提出します。申立書には、離婚条件について記載する欄もあるので、親権を獲得したいと思っている方は、親権者に関する記載欄に希望する内容をきちんと記しましょう。
家庭裁判所調査官による調査
親権や面会交流が争点になっている場合、多くのケースで、離婚調停中に家庭裁判所調査官による調査が行われます。家庭裁判所調査官は、家庭裁判所の職員で、心理学・社会学・教育学等の専門家です。裁判官からの命令を受け、紛争の原因や背景等について調査し、解決方法を検討して裁判官に報告する職務を担っています。
親権問題は子供に与える影響が大きいため、子供を取り巻く環境を鑑みたうえで判断しようと、裁判所としても調査する必要が生じるのです。離婚調停で親権を獲得したいのであれば、調査官調査への対応は非常に重要になります。
家庭裁判所調査官は何をするのか
それでは、家庭裁判所調査官はどのような調査を行うのでしょうか?具体的には、「子供との面談」「当事者夫婦(子供の両親)との面談」「家庭訪問」「子供が通っている保育園・幼稚園・学校等への訪問」といったことを行い、子供が現在置かれている生活環境や、子供を今後育てていくうえでの環境整備等について調べていきます。
そして、家庭裁判所調査官は、調査を行った後、夫婦のどちらが親権者として適格であるか、子供にとって最も良いと思われる解決方法は何かを検討し、裁判官に報告します。
調査官が重視するポイント
現在の養育状況
調査官が重視するポイントの一つに、「現在の養育状況」があります。基本的に、子供の生活環境が大きく変わることなく、なるべく離婚後も同様の環境で子供が生活できることが好ましいと考えるためです。この考え方(継続性の原則)は、家庭裁判所が親権者を判断する際にも重視するポイントになります。
これまでの養育状況
調査官は、「これまでの養育状況」も重視します。具体的には、夫婦のどちらが主となって子供の食事を作っていたのか、子供をお風呂に入れていたのか、子供を寝かしつけていたのか、保育園等への送り迎えをしていたのか等を確認し、これまで子供を主に養育してきた者を調べます。そして、親権者にふさわしいのはどちらであるのかを考えていきます。
離婚調停で親権獲得の可能性を高めるためにも弁護士にご相談ください
家庭裁判所調査官による調査は、離婚調停で親権を獲得するうえで、とても重要になります。調査報告の内容によって、離婚調停で話し合いの仲介役となる調停委員会に与える心証は大きく左右されることがあります。そのため、ご自身が親権者として適格であると判断してもらい、調停を有利に進めるには、事前の対策・準備を入念に行い、調査官調査に臨んだ方が良いといえます。
そうはいっても、どのような対策・準備を行えば良いのか、悩むケースは多いかと思います。また、調査を受けることに対して不安がある方もいらっしゃるでしょう。家庭裁判所調査官による調査について悩みや不安を抱えているときは、まずは弁護士にご相談ください。弁護士のサポートを受けることで、精神的な負担を軽減できますし、ひとりだけで対応するよりも、親権獲得の可能性を高めることに繋がるでしょう。
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メールで相談する離婚調停で親権者を判断するポイント
離婚調停で実際に話す相手は、調停委員です。つまり、調停委員が夫婦のどちらを親権者としてふさわしいと考えるのか、その判断によって調停が有利に進むかどうかは変わります。調停委員が親権者を判断する際のポイントを、次項目よりいくつかご紹介していきます。
親の健康状態
子供を育てていく者は、心身ともに健康であるべきと考えられています。病気がちであったり、精神的に不安定であったりする場合、親権者としての適格性に欠けると判断されるおそれがあります。
離婚後の経済状況
子供が成長するにつれ、進学費用等でお金がかかっていきます。そのため、離婚後の経済状況についても、親権者を判断する際には重視されます。
ただし、収入が低いからといって必ずしも親権者として不適格であると判断されるわけではありません。専業主婦(主夫)で収入がなかったとしても、親権を得ることで相手から支払われる養育費や、公的支援制度を利用して受け取るお金、親族からの援助等によって賄えることもあるためです。
離婚後の養育状況
離婚後の養育状況も、重視されるポイントの一つとして挙げられます。具体的には、子供と接する時間を十分にとれるか、住環境や教育環境が整っているか等が考慮されます。
普段は仕事で子供の面倒がなかなか見られない方もいるかと思いますが、親族の協力を得られるかどうか、という点も判断材料となるので、不在の間は両親が代わりに面倒を見てくれる等の環境があれば、不利にならずに済む可能性があります。
子供の年齢、意思
子供の年齢が幼ければ幼いほど、親権獲得争いは母親に有利に判断される傾向にあります。
また、子供の年齢によっては、子供の意見を聴取し、その意思が重視されることがあります。基本的に、15歳以上の場合は子供の意思が重視されます。なお、15歳未満であっても、10歳前後なら意思能力があるとして、子供の意見を尊重した判断がなされるケースもあります。
親権を獲得するためには
離婚調停で親権を獲得するためには、家庭裁判所調査官による調査に適切に対応し、調停委員を味方につけ、親権者としてふさわしいのは自分であるとする主張に説得力を持たせることが重要です。
とはいえ、これら全てをおひとりだけで進めていくことには、困難を強いられるでしょう。本当に伝えたいことが伝えられず、離婚調停を親権獲得に向けて有利に進めることができなかった、という事態は避けてほしいものです。後悔することのないよう、離婚調停で親権を得たいと考えている方は、専門家である弁護士への相談・依頼をおすすめします。
離婚調停で親権が決まらなかったときは
双方の合意に至らなければ、調停は不成立となります。こうして離婚調停で親権が決まらなかったときは、離婚裁判を行い、裁判所の判断に委ねるのが通常の流れです。離婚裁判では、双方の合意を要さずに判決が下されるため、最終的な解決を図れます。
親権を獲得できなかったら
離婚調停を行ったものの、親権を獲得できずに終局してしまった場合、親権者となるのではなく、別の方法で子供との関わりを持つ、という選択肢も考えられます。
例えば、面会交流について取り決めれば、定期的に子供と交流する機会を設けることが可能です。また、通常は、親権者が監護権を有しますが、例外的に、親権と監護権を別々に定めることができる場合があります。たとえ相手が親権者となったとしても、監護権を得られれば、子供と一緒に暮らして世話をしていくことができます。
面会交流と監護権について、それぞれの詳しい内容は、下記の各ページをご覧ください。
親権と離婚調停に関する裁判例
離婚調停が成立しない場合、家庭裁判所の判断で、裁判への移行前に「調停に代わる審判」が行われることがあります。離婚調停を行った後、調停に代わる審判がなされ、親権者が定められた裁判例を2つご紹介します。
浦和家庭裁判所 平成元年6月19日審判
事案の概要
申立人(妻)と相手方(夫)は、婚姻した後、2人の子供をもうけました。相手方は、婚姻当初から数人の女性と不貞行為をしたほか、申立人に暴力を振るうなどし、申立人ら家族のもとから他に転居し別居するに至りました。
そこで、申立人は、相手方との婚姻関係は回復困難な程度に破綻したとして、離婚することと、2人の子供の親権者となることを求めて調停を申し立てたという事案です。
裁判所の判断
裁判所は、事実として、両者の婚姻関係はすでに完全に破綻し、回復困難な状況にあること、未成年である2人の子供は、いずれも現在申立人と生活を共にし、申立人が監護養育して安定した生活を送っていることを認めました。また、相手方は、月に24万5000円程度の収入を得て生活しているものの、日本には親族等の身寄りは全くなく、今後の日本での生活については必ずしも安定しているとはいえず、未成年の子供たちを監護養育することは極めて困難な状況にあるとしました。
このような認定事実に子供たちの年齢等をあわせて考慮し、未成年の子供たちの福祉のためには申立人を親権者と定めるのが相当であると判断し、調停委員会を組織する各家事調停委員の意見を聴いたうえで、調停に代わる審判をしました。
大阪家庭裁判所 昭和50年3月17日審判
事案の概要
申立人(夫)は、相手方(妻)が子供を置いて家出し、異性関係もあることを理由に、離婚し、子供の親権者となることを求めて調停を申し立てました。
6回にわたる調停期日を経ましたが、双方間において離婚についての異存はないものの、双方が親権者となることを強く希望して対立し、調停の成立が困難な状況にありました。
裁判所の判断
裁判所は、相手方が子供を置いて家出した後、申立人が男手一つで当時1歳未満であった子供を養育することができず、子供が相手方の両親に引き取られたこと、その後、申立人の両親に引き取られたり、相手方の両親に引き取られたり等して監護者が転々とした後、今日では、相手方両親の養育を受けているものであることを、事実として認めました。そして、申立人と相手方双方とも、子供の親権者となっても、自身で養育する能力はなく、それぞれの両親に養育を託さざるを得ない状況であるとしました。
これらの認定事実から検討し、調停に代わる審判をするのが相当と考え、子供の親権者の指定について、相手方との比較においては、申立人の方に親権者としての適格性があるとしました。
しかしながら、いずれを親権者に指定しても、親権者において監護することは困難であり、それぞれの両親に監護を託さざるを得ない状況であるため、双方の両親の監護能力を検討しなければならないとの見解を示しました。そして、現在の監護状況をさらに変更することは子供の福祉上耐え難いこと等から、相手方両親の下での監護養育を継続せしめる措置こそ妥当であるとして、子供の親権者を相手方と定めるのが相当であると判断しました。
親権と離婚調停に関するQ&A
- Q:
離婚調停で親権を決める場合は母親が有利になりますか?
- A:
現代社会ではまだ、子供の監護養育をしているのは主に母親です。そのため、いざ離婚となった場合、どちらの親が子供を監護養育すべきかとなると、通常母親である、と言われています。そのような実態を踏まえて、現在の調停手続においても、親権決定の際、母親の方が有利になることは否めません。特に離婚調停時、子供の年齢が低い場合、母親による監護養育の必要性がより高まるとして、母親が有利になる傾向が強くなります。
- Q:
相手方が子供を連れ去ったのが離婚調停中だった場合、親権はどうなりますか?
- A:
子供を連れ去った場合、親権帰属の判断に影響が出る可能性が高いです。
特に、連れ去りが極めて違法性の高い行為である場合、そのような行為によって生まれた状況を追認するようなことは許されません。かかる事情の存在は、親権帰属にも影響します。
ただ、その親権帰属判断の基準はあくまでも、「子の福祉」が実現できるかどうかです。そのため、連れ去りの程度にもよりますが、連れ去った方には親権が帰属しない、とは言い切れません。
子の連れ去りについて、詳しくは下記のページをご覧ください。
- Q:
離婚調停中の親権は父親と母親のどちらになりますか?
- A:
離婚調停中は、未だ離婚をしていませんので、原則として共同親権のままです。仮に一方の親が事実上子供を監護養育していたとしても、それは変わりません。
別居後離婚前、両親の合意等により、父親または母親の一方に、子供の監護権(親権の一要素)が帰属することはあります。しかし、財産管理権としての親権自体は、特別な合意がない限り、共同親権のままです。
なお、一旦お子様の監護権が一方の親に帰属した場合、他方の親が、その監護権を侵害することはできません。監護権を持たない親は、監護対象である子供に接触する際、一方の親の監護権を侵害しないよう、注意する必要があります。
- Q:
もし、離婚調停中に夫婦のどちらかが死亡してしまった場合、親権は自動的にもう一方が得ることになりますか?
- A:
離婚調停中は、未だ共同親権のままであるため、一方の親が亡くなれば、自動的に他方の親が親権者になります。
離婚調停中は、家族が分裂し家庭が混乱している状況ですが、一方の親、特に子供を監護養育していた方の親が亡くなることにより、子供の生活不安定等、更なる混乱を招くおそれがあります。このような状況下では、残った他方の親の度量が試されることになります。
なお、一方の親の死亡により、同人の相続が開始されることにも注意が必要です。法定相続によれば、被相続人である一方の親の財産が、離婚調停で争っていたはずの他方の親および子に帰属するからです。
- Q:
離婚調停で決めた親権者を変更することはできますか?
- A:
原則として一度決めた親権者の変更はできませんが、例外として「子の利益のために必要」な場合は、裁判所の審判により変更可能です(民法819条6項)。ただ、あくまでも例外であるため、親権者による子に対する虐待により、子の生命・身体に対する危険が大きい場合等、明らかに変更の必要がある場合に限られます。
離婚調停後の親権の変更については、下記のページをご覧ください。
離婚調停で親権を獲得したい方は、弁護士に依頼してみませんか?
離婚調停で親権を獲得できるかは、調停委員に、ご自身が親権者として適格であると判断してもらえるかどうかにかかっています。
これまでの養育状況や、離婚後、子供を育てていく環境等を示し、親権者にふさわしいと主張する理由を伝えていきましょう。また、家庭裁判所調査官による調査においても、調査官から裁判官に対しご自身に有利な内容で報告がなされるよう、事前準備等を万全にして臨みましょう。
弁護士に相談・依頼をすれば、どのように主張・立証していけば良いのか、どのように調査官調査に対応すれば良いのか等について、個別の状況に応じた適切なアドバイスやサポートを受けることができます。また、裁判所の手続を代わりに行ってもらえたり、離婚調停に代理人として同席してもらえたりすることも可能です。
離婚調停で親権を獲得したい方は、弁護士に依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。弁護士に依頼する際には、離婚問題について経験豊富な弁護士を選ぶことをおすすめします。数多くの事案を解決してきた実績を通して身につけたスキルを駆使し、親権獲得に向けて尽力いたします。
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