離婚するとき車は財産分与の対象?分ける方法や手続きのポイント

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
離婚の際、車はどのように分与すれば良いのでしょうか。
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して作り上げた共有財産を、それぞれの貢献度(原則として各50%)に応じて分配することをいいます。本記事では、離婚時に車を財産分与するにあたって重要な知識をお伝えします。
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離婚する際、車は財産分与の対象になる?
婚姻期間中に購入した車は“夫婦の共有財産”とみなされるため、財産分与の対象となります。
財産分与とは、離婚した相手に対して財産の分与を請求することをいい、以下の3つの要素が含まれているとされています。
- ① 夫婦が婚姻中に築いた財産の清算(生産的財産分与)
- ② 離婚後の経済的に弱い側への扶養料(扶養的財産分与)
- ③ 浮気等、離婚相手が原因で離婚に至った場合の慰謝料(慰謝料的財産分与)
そして、財産分与の対象財産は、共有財産と実質的共有財産のみです。共有財産とは、「夫婦が婚姻中に共同で築き上げた財産」を指し、離婚時には貢献度に応じて分配されるものと考えられています。そのため、結婚後に購入した車は、たとえ名義が夫または妻であっても関係なしに、夫婦の共有財産として財産分与の対象となります。
ただし、相続で取得した遺産や、婚姻前から有していた預金、家族等から貰ったお祝い金など、「夫婦の共有財産とはみなされない」と判断され、例外的に財産分与の対象にならないケース(特有財産と呼ばれます。)もありますので注意が必要です。
車が財産分与の対象とならないケース
車が財産分与の対象とならないケースには、以下のような場合が挙げられます。
<財産分与にならないケース>
- 婚姻前から所有していた車
- 一方が親などから相続した車
- 一方が親族や知人などから譲り受けた車
- 婚姻前からの預貯金で購入した車
- 別居後に一方が購入した車 など
これらは夫婦の共有財産ではなく、夫婦の一方のみに付随する財産である“特有財産”に該当します。また、共有財産は夫婦の協力によって形成されますが、これは同居を前提としています。つまり、別居を開始した時点で「夫婦の協力関係は終了した」とみなされるため、別居後に購入したものは財産分与の対象外となります。
ただし、特有財産に該当する車でも、維持するために車検代や修理代などを夫婦で分担していた場合には、夫婦の共有財産とみなされ、財産分与の対象とされることもあります。
離婚時に車を財産分与する3つの方法
車の財産分与の方法としては、次のようなものがあります。
- ① 売却して現金化する
- ② どちらかが乗り続けて代償金を渡す
- ③ どちらかが乗り続けて車の評価額に相当する財産を贈与する
①売却して現金化する
車を売却して現金に換え、売却代金を折半する方法です。この方法は、きっちり折半できるため、後述の手元に車を残す方法と比べて問題が起こることが少ないといえます。
なお、車は経年劣化するものなので、財産分与の際には、購入額ではなくそのときの車の評価額を基に計算されます。
②車をどちらかが乗り続ける
車をどちらかが譲り受け、評価額の半額を代償金として渡す方法です。
例えば、評価額が400万円の車を夫が使用することになった場合、2分の1である200万円を妻に支払うことになります。
このとき問題となるのが車の査定方法ですが、①オートガイド自動車価格月報(通称レッドブック)、あるいは②中古車買取店による査定のいずれかにより求められることが多いです。
③車の評価額相当の財産を渡す
車をどちらかが譲り受け、対価として車の評価額相当の財産を渡すことで、結果的に折半する方法です。
例えば、評価額が400万円の車を夫が使用することになった場合、妻に150万円の美術品、250万円の預貯金を分与すれば、結果として財産を折半したことになります。
このときにも、前項の場合と同様に車の査定方法が問題となりますが、オートガイド自動車価格月報や中古車買取店による査定のいずれかにより求められることが多いでしょう。
車のローンが残っている場合の財産分与はどうなる?
所持している車にローンが残っている場合は、車の価値を確認して分配します。
具体的には、車の査定額をまず確認し、査定額とローン残債を比較した際にプラスとなるかマイナスとなるかを確認します。
「アンダーローン(プラスとなる場合)」「オーバーローン(マイナスとなる場合)」によって財産分与の処理方法が異なり、いずれの場合も通常の財産分与より複雑になります。
では、次項で詳しくみていきましょう。
査定額がローンの残債を上回る場合(アンダーローン)
車の査定額がローンの残額よりも高い、いわゆる“アンダーローン状態”の場合には、車の査定額から残額を差し引いた金額が財産分与の対象となります。
たとえば、査定額が100万円でローン残債が50万円の車をどちらか一方が乗り続けるケースで考えてみましょう。この場合の車の価値は、「査定額100万円-ローン残債50万円=50万円」となります。この50万円が財産分与の対象となるため、50万円を夫婦で分け合います。財産分与の割合は、基本的に50%ですので、50万円を夫婦で分け合うと「夫25万円・妻25万円」となります。
査定額がローンの残債を下回る場合(オーバーローン)
一方で、車の査定額がローンの残額よりも低い、いわゆる“オーバーローン状態”の場合は、「車に価値はない」と考えられ、財産分与の対象としないのが一般的です。
しかし、残っているローンの処理をどうするのかについて考えなければなりません。
この場合に考えられるのは、以下2つの処理方法です。
- ① 残ったローンの残債を夫婦で返済する
- ② 離婚後に車を乗る方が残ったローンを負担する
どのように処理するのかは、夫婦で話し合い、決定することになります。
車を財産分与するときのポイント
車の査定額・ローン残高を確認する
車を財産分与するときは、まず車の査定額・ローン残高の確認を行う必要があります。夫婦で所持している車の価値が分からなければ、適切な財産分与が行えないからです。
なお、主な査定方法には、以下が挙げられます。
<主な査定方法>
- 実際に車を査定に出す
- レッドブック(オートガイド自動車価格月報)を参考にする
- 中古車査定サイトを参考にする
車を売却せずに受け取る場合は、車を受け取った側が本来売却すれば得られた財産分与を代償金として車を受け取らない側に支払います。このとき、車の査定額が低く評価されれば、相手に支払う金額が減り、高く評価されれば増えるため、車の査定方法や査定額は夫婦間で争われやすいです。
車の名義変更をする
財産分与により車の持ち主が変わる場合には、使用者の名義変更が必要です。また、基本的にローンの契約者は車の名義人と同一であるため、併せてローンの契約者変更も行う必要があります。ただし、ローンの契約者変更には審査が伴いますので、確実に変更できるわけではない点に注意しましょう。
名義変更は、任意保険や自動車税にも大きく関わります。
自動車税は、4月1日時点で登録されている所有者の元に納税通知書が送られるため、名義変更をしていないと、自動車税の納付が行えなくなります。その他にも、「車検を受けられない」「遅延金が発生する」などのデメリットが多数あるため、きちんと手続きしておきましょう。
離婚協議書を作成する
車の財産分与を含む離婚条件の取り決めが終了したら、離婚協議書を作成しましょう。
話し合いで決めた内容をきちんと記録しておくことで、「言った言わない」の水掛け論となりトラブル化してしまう事態を回避できます。
また、車の名義変更や処分手続きには、ある程度時間がかかります。
そのため、なるべく早い段階で話し合いに決着をつけて車に関する手続きを進めておくか、離婚協議書に「〇年〇月〇日までに手続きをする」などと記しておくとよいでしょう。
離婚協議書の作成について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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弁護士に相談する
車の財産分与時には、車の評価額を巡り揉めるケースが多いため、弁護士への相談を検討する必要があります。車を財産分与するうえで、まず車の価値を確認する必要がありますが、査定方法や査定先によって金額に誤差が生じるのが実情です。
車を受け取る側は、車の評価額が低ければ低いほど相手に支払う額が減るため、車を渡す側よりも有利になります。反対に評価額が高いと、車を渡す側に支払われる額が増えるため、車を受け取る側よりも有利になります。
このように、車の評価額次第で「利益を得られる人」が変わるため、夫婦の話し合いで折り合いがつかない場合には、弁護士へのご相談をおすすめします。
離婚時の車の財産分与に関するQ&A
- Q:
車の購入資金を一方の親が出している場合は財産分与の対象になる?
- A:
車の購入資金を一方の親が支払っている場合は特有財産となるため、財産分与の対象にはなりません。
あくまで財産分与の対象となるのは、「夫婦が共同で築き上げた財産」に限られます。一方の親が購入した車は、夫婦が共同で築き上げたのではなく、一方の親が支払い得た財産であるため、財産分与とみなされません。ただし、このようなケースで得た車でも、車を維持するために夫婦が車検代や修理代などを分担していた場合には、夫婦の共有財産とみなされ、財産分与の対象となる可能性があります。
いずれにしても、車の財産分与については、話に折り合いがつかず揉めてしまうケースが多いため、専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。
- Q:
別居した後に購入した車は財産分与の対象になる?
- A:
別居後に購入した車は、基本的に財産分与の対象となりません。
財産分与は、夫婦が協力して築き上げた財産が対象で、そこには「同居」が前提条件としてつきます。そのため、別居した時点で夫婦の協力体制は終了したと考えられ、別居後に購入したものは特有財産とみなされるのです。ただし、別居後に購入した車でも、車の維持に必要な費用(車検代や修理代など)を夫婦双方が負担していた場合には、共有財産とみなされる可能性があります。しかし、別居後に夫婦関係が修復されなければこのようなケースにはなりにくいと考えられるため、現実的には少ないでしょう。
車など離婚時の財産分与については弁護士にご相談ください
今回は、車の財産分与について、どのような場合に対象となるのか、どのように分与すれば良いのかといったことを説明しました。
しかし、いくら適切な評価方法による査定額に基づいて財産分与を請求したとしても、相手方配偶者が請求を呑まなければ、財産分与を行うことはできません。協議離婚や調停離婚では、財産分与についての合意がなされることが必須です。また、裁判離婚や審判離婚では、合意は必ずしも必須ではありませんが、自身の請求をしっかりと主張し、認めてもらえるよう努める必要があります。
相手方配偶者に要求を呑ませ、裁判官に自身の請求を認めてもらうためにも、法的知識に基づいた、冷静で客観的な主張・立証ができる弁護士への依頼をお勧めします。交渉のプロであり論理的な主張をすることができる弁護士に、交渉や裁判所での手続を任せれば、自身に有利な離婚を実現できる可能性が高まります。
ぜひ弁護士に依頼し、煩わしい離婚関連の手続をお任せください。弁護士は、ご依頼者様の心に寄り添いサポートする存在ですから、お気軽にご相談いただけます。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)