離婚して母子家庭となった時の支援制度や手当について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員

共働き世帯が増えたとはいえ、現状、子供の親権を獲得するのは、母親であるケースが多い傾向にあります。離婚してシングルマザーとなった方にとって、大きな悩みの種となるのが、経済的問題なのではないでしょうか?

離婚する際、財産分与や慰謝料といったお金を受け取れたとしても、それだけでご自身とお子様の生活費を賄えるとは限りません。特に、結婚している間は専業主婦であったという方の場合、離婚したことで働く必要が生じても、就職先を探すのに苦労することも考えられます。

このように、離婚して母子家庭となり、生活に困っている方にとって、経済的な負担を少しでも軽くするために知っておいてほしいことがあります。それが、国や各地方自治体が設けている、ひとり親家庭を支援する制度の利用です。ひとり親家庭に対する公的な支援制度にはどのようなものがあるのか、確認していきましょう。

(※各制度の解説内容は、2020年2月27日時点のものです。)

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母子家庭(ひとり親家庭)を支援する様々な制度

母子家庭を含めたひとり親家庭に対し、手当や助成金等を支給して支援する制度は様々あります。また、ひとり親家庭に限らず、子供を持つ家庭に向けた支援制度もあります。そのうちのいくつかを、次項よりご紹介します。

なお、制度の存否や内容等は、地域によって異なる場合があるので、詳細はお住まいの地域にお問い合わせください。

児童手当

児童手当は、家庭の生活の安定や、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的に支給されるものです。この制度では、ひとり親家庭に限らず、支給対象の子供を持つすべての家庭を支援しています。

支給対象

支給対象となる児童は、日本国内に住所を有する、15歳になった日から最初の3月31日まで(=中学校修了まで)の児童です。

受給資格者

支給対象の児童を養育している者が支給を受けます。父母で養育している場合には、生計を維持する程度が高い者(基本的には所得の高い方)が受給資格者となります。

支給額

支給額(月額)は、以下のとおりです。

3歳未満 一律1万5000円
3歳~小学校修了まで 1万円(※第3子以降は1万5000円)
中学生 一律1万円
受給資格者の所得が所得制限の限度額以上の場合 特例給付として一律5000円

所得制限

支給額の説明において、「所得制限」という言葉が出てきましたが、受給資格者の扶養親族等の人数に応じて、以下の表のように、所得制限の限度額が設定されています。

例として、妻と児童2人を扶養しているケースで見てみましょう。この場合、扶養親族数は3人ですから、下表で確認すると、所得制限の限度額は736万円(収入額の目安は960万円)となります。

扶養親族等の人数 所得制限の限度額 収入額の目安
0人 622万円 833万3000円
1人 660万円 875万6000円
2人 698万円 917万円8000円
3人 736万円 960万円
4人 774万円 1002万1000円
5人 812万円 1042万1000円

なお、扶養親族等の人数は、前年の12月31日時点における、税法上の扶養親族等の人数を意味しています。扶養親族等の人数が6人以上の場合、所得制限の限度額には、1人につき38万円(扶養親族等が老人控除対象配偶者または老人扶養親族のときは44万円)が加算されます。

児童扶養手当

「児童手当」と混同してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、児童扶養手当は、ひとり親家庭が受けられる手当です。支給対象が、18歳になった日から最初の3月31日まで(※一定以上の障害がある場合には20歳未満まで)の児童となっており、支給される期間が長い点も児童手当とは異なります。

生活保護制度

ひとり親家庭に限らず、資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する者に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行う、生活保護という制度があります。この制度は、憲法25条に規定されている「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、自立を助長することを目的としています。

・支給要件
生活保護は、基本的に以下の4つを活用したうえで、世帯収入が厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費よりも低い場合に支給されます。

・資産
預貯金や、生活に利用していない土地・家屋等の資産がある場合には、それらを売却等して生活費に充てます。

・能力
働く能力がある場合には、その能力に応じて働く必要があります。

・他の公的支援制度
他に利用できる公的支援制度がある場合には、まずはそれらを利用します。

・扶養義務者の扶養
扶養義務者がいて援助してくれる場合には、援助を受けます。

・支給額
最低生活費から世帯収入を差し引いた金額が、支給額となります。ただし、最低生活費は、地域や世帯の構成等によって異なります。詳しくは、お住まいの地域を所管する福祉事務所にお問い合わせください。

ひとり親家庭等医療費助成制度

ひとり親家庭等の親や子供を対象に、医療保険の自己負担分の一部を助成する、ひとり親家庭等医療費助成制度を設けている地域もあります。詳しい内容は、以下のページをご覧ください。

母子父子寡婦福祉資金貸付金制度

母子父子寡婦福祉資金貸付金制度とは、ひとり親家庭の親や寡婦の方の経済的自立、これらの者が扶養している児童の福祉の増進を図るために、必要な資金を貸し付けるという制度です。

支給対象

貸付金の種類によって異なりますが、主な支給対象は以下のとおりです。

  • 20歳未満の児童を扶養している母子家庭の母・父子家庭の父
  • 寡婦(配偶者のない女子で、かつて配偶者のない女子として20歳未満の児童を扶養していたことのある者)
  • 母子家庭の母・父子家庭の父に扶養されている児童
  • 寡婦に扶養されている児童
  • 父母のない児童
  • 母子・父子福祉団体

貸付金の種類

貸付金には、以下の12種類があります。

  • ①事業開始資金
  • ②事業継続資金
  • ③修学資金
  • ④技能習得資金
  • ⑤修業資金
  • ⑥就職支度資金
  • ⑦医療介護資金
  • ⑧生活資金
  • ⑨住宅資金
  • ⑩転宅資金
  • ⑪就学支度資金
  • ⑫結婚資金

貸付条件

貸付限度額や貸付期間、償還期間(資金を借り入れてから返済するまでの期間)、据置期間(利息分のみの返済期間)、利率といった貸付条件は、貸付金の種類によって異なります。

遺族年金

離婚後、元配偶者が死亡したとき、元配偶者の子供は遺族年金を受けられる場合があります。ただし、元配偶者と生計維持関係にあったことが必要になります。

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障害のある子供がいる場合に受けられる手当

お子様に障害があった場合、ひとり親家庭の方にとって、経済的な負担はより重くのしかかるのではないでしょうか?

地域によっては、障害のある子供がいる家庭を支援する制度を独自で設けていることもありますが、今回は国の支援制度に着目し、「特別児童扶養手当」と「障害児福祉手当」について解説していきます。

特別児童扶養手当

特別児童扶養手当は、精神または身体に障害を有する児童について、これらの児童の福祉の増進を図ることを目的として支給される手当です。

支給要件

精神または身体に、政令で定める程度以上の障害を有する20歳未満の児童を、家庭で監護・養育している父母等が受給資格者となります。ただし、児童と父母等の住所が日本国内にない場合等には、支給を受けることができません。

なお、受給資格者もしくはその配偶者、または扶養義務者の前年の所得が一定額以上ある場合、手当を支給されないという所得制限があります。

支給額

支給額(月額)は、以下のとおりです。

1級(重度障害児) 5万2200円
2級(中度障害児) 3万4770円

障害児福祉手当

障害児福祉手当とは、精神または身体に重度の障害を有する児童が負う、精神的・物理的な特別の負担を軽減する一助として支給される手当のことで、重度障害児の福祉の向上を図ることを目的としています。

支給要件

受給資格者となるのは、精神または身体に重度の障害を有するため、日常生活において常に介護を必要とする状態にある、在宅の20歳未満の者です。ただし、障害児入所施設等に入所している場合等には、支給されません。

なお、特別児童扶養手当と同様、受給資格者もしくはその配偶者、または扶養義務者には所得制限があります。

支給額

支給額は、「月額1万4790円」となります。

母子家庭(ひとり親家庭)への住宅手当

ひとり親家庭を支援する独自の制度として、住宅手当を支給している地方自治体があります。

例えば、千葉県浦安市では、一定の条件を満たした場合、月額の家賃1万円を超えた部分に対し、月額1万5000円を限度に「ひとり親家庭住宅手当」を支給しています。

離婚した後の資格取得を支援する制度

離婚後、ひとりで子育てするにあたり、より多くの収入を得られるよう、資格取得に励む方もいらっしゃいます。このように、ひとり親家庭の親の経済的な自立を後押しするべく、就業支援の制度を設けている地域があります。

例として、「自立支援教育訓練給付金」と「高等職業訓練促進給付金」を挙げ、次項より説明していきます。なお、いずれも実施しているかどうかは地域によって異なりますので、ご注意ください。

自立支援教育訓練給付金

自立支援教育訓練給付金は、自ら教育訓練を受けて適職に就くためにスキルアップしようという、ひとり親家庭の親の主体的な能力開発の取組みを支援するものです。

対象となる教育訓練を受講して修了した場合に、その経費の60%が支給されます。下限は「1万2001円」で、上限は「就学年数×20万円(※最大80万円)」となっています。

支給の対象者は、20歳未満の児童を扶養しているひとり親家庭の親で、以下の要件をすべて満たした者です。

  • 児童扶養手当の支給を受けている、または同等の所得水準にある
  • 就業経験、技能、資格の取得状況や労働市場の状況等から判断し、教育訓練を受けることが、適職に就くために必要であると認められるものである

ただし、地域によっては、支給内容や支給の対象者が異なる場合があります。
また、支給されるには、受講前にお住まいの地域から講座の指定を受ける必要がありますので、事前にお住まいの地域にご確認ください。

高等職業訓練促進給付金

看護師や介護福祉士等の国家資格取得に臨むひとり親家庭の親を支援するものとして、高等職業訓練促進給付金があります。

看護師や介護福祉士等の国家資格取得にあたり、1年以上養成機関で修業する場合に、修業期間中の生活費の負担軽減のために支給されます。支給額は、「月額7万500円(市区町村民税非課税世帯の場合は月額10万円)」、養成機関における課程修了までの最後の12ヶ月間については、「月額11万500円(市区町村民税非課税世帯の場合は月額14万円)」です。支給期間は、修業期間の全期間であり、最大4年となっています。

また、修了後には、入学時にかかった負担軽減のため、高等職業訓練修了支援給付金も支給されます。支給額は、「一律2万5000円(市区町村民税非課税世帯の場合は5万円)」です。

支給されるのは、20歳未満の児童を扶養しているひとり親家庭の親で、以下の要件をすべて満たした者となります。

  • 児童扶養手当の支給を受けている、または同等の所得水準にある
  • 養成機関において1年以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得が見込まれる
  • 仕事または育児と、修業の両立が困難である

ただし、地域によっては、支給内容や支給の対象者、支給対象となる資格は異なる場合があります。詳細は、お住まいの地域にお問い合わせください。

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母子家庭(ひとり親家庭)が受けられる減免・割引制度

ひとり親家庭の経済的な負担を軽減するため、地域によっては、以下のような減免(減額または免除)・割引制度を実施していることがあります。

  • 電車やバスの割引制度
    (例:児童扶養手当を受給している方やその世帯の方が、JR線の通勤定期乗車券を購入する際に、3割引になる)
  • 粗大ごみ等処理手数料の減免制度
  • 上下水道料金の減免制度
  • 保育料の減免制度

また、税金等の負担に関しては、寡婦控除や、国民健康保険・国民年金の減免制度があります。これらの制度を利用して支出を減らすことは、ひとり親家庭にとって重要なのではないでしょうか?次項より解説していきます。

所得税、住民税が安くなる寡婦控除

寡婦控除とは、死別や離婚等により夫と別れて再婚していない女性が、ある条件に該当した場合に、一定の所得控除を受けられるという制度です。所得税や住民税の計算のもととなる所得金額を減らすことができるため、これらの税金が安くなります。

納税者自身が一般の寡婦である場合、所得税は27万円、住民税は26万円が、所得から控除されます。また、特別の寡婦に該当する場合、所得から控除される金額は、所得税は35万円、住民税は30万円となります。

*一般の寡婦…以下のいずれかに該当する人。

  • 夫と死別もしくは離婚した後結婚していない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人、または同一生計の子供がいる人
    ※子供は、総所得金額等が38万円以下(令和2年分以後は48万円以下)で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族となっていない者に限られます。
  • 夫と死別した後結婚していない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

*特別の寡婦…一般の寡婦のうち、以下の要件をすべて満たした人。

  • 夫と死別もしくは離婚した後結婚していない人、または夫の生死が明らかでない一定の人
  • 扶養親族である子がいる人
  • 合計所得金額が500万円以下の人

国民健康保険、国民年金の減免制度

国民健康保険については、国が定めている軽減制度があります。

世帯主と国民健康保険に加入している家族の総所得が基準額以下の場合に、保険料のうち均等割額と平等割額を、2割・5割・7割のいずれかの割合で軽減するというもので、確定申告をしていれば、申請の必要はありません。また、地方自治体ごとに減免制度を設けているケースもあり、この場合、利用するためには申請が必要になります。

国民年金についても、経済的な事情で保険料を納めることが難しい方のために、保険料の免除制度や保険料納付の猶予制度があります。

離婚と母子家庭に関するQ&A

Q:

養育費を一括で支払ってもらった場合、児童扶養手当は受給できませんか?

A:

年収と養育費、必要経費の額によっては、児童扶養手当は受給できません。

児童扶養手当には所得制限があります。手当を受けようとする人や、その配偶者、生計同一の扶養義務者(父母・祖父母・子・兄弟など)の前年(1月から9月に請求する人については前々年)の所得が一定以上であるときは、手当は支給されません。

ここでいう“所得”とは、年収に養育費の8割に相当する額を加え、必要経費等を控除した額を指すとイメージしていただければ結構です。この所得の金額が、各市区町村の所得制限を超えた場合には、児童扶養手当を受給できないことになります。

したがって、厳密には「養育費が一括で支払われる=児童扶養手当は受給できない」という関係は成り立ちません。

もっとも、通常、複数年分の養育費が一括支払いされるとなれば、それなりに高額になると思われます。そうすると、所得制限にかかる可能性が高くなるため、翌年の児童扶養手当は受け取れないことが多いと思われます。

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