定年離婚とは?離婚原因や「年金分割」などについて解説

- この記事の監修
- 弁護士 谷川 聖治
- 弁護士法人ALG&Associates 執行役員
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定年を迎えるタイミングで、離婚するご夫婦もいます。それまでの結婚生活を通して相手に不満が溜まっていて、定年を機に離婚を決意する方もいれば、定年退職した後、配偶者と共に過ごす時間が増えたことに耐えられず、離婚したいと思う方もいるでしょう。このように、「定年」が、離婚するきっかけとなる場合があります。
また、定年離婚するご夫婦は、高齢である方々が多いことが予想されます。離婚して老後の暮らしはどうなるのか、不安な場合もあるでしょう。定年離婚は、離婚後の生活を見据えて事前によく考えたうえで決断すること、そして、決意が固まったら、離婚に向けてしっかりと準備しておくことが大切です。
離婚のきっかけはご夫婦によって様々ですが、今回は「定年離婚」にスポットを当てて解説していきます。
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定年離婚とは
定年離婚とは、配偶者またはご自身の定年を機に離婚することをいいますが、定年離婚について調べていると、「熟年離婚」の言葉をよく目にするでしょう。熟年離婚は、長年(一般的には20年以上)の結婚生活を終わらせて離婚する際に用いられます。そして、「(配偶者またはご自身が)定年になったから」という理由で熟年離婚する人もいるため、「熟年離婚」の一つとして「定年離婚」が紹介されている場合があるのです。
熟年離婚についての詳しい内容は、下記のページをご覧ください。
定年離婚の原因や理由
定年離婚の原因・理由は、ご夫婦によって様々考えられます。具体例を、以下で確認していきましょう。
長年の価値観のズレや性格の不一致
価値観のズレや性格の不一致は、多く挙げられる離婚理由です。これらは、結婚当初は気にならなかったとしても、長年の結婚生活を送るうちに、だんだんと気になってしまうことがあります。特に定年退職後は、夫婦で一緒にいる時間が増えるため、気になりやすくなってしまうでしょう。こうして蓄積されたストレスが限界に達し、離婚を決意する方がいます。
性格の不一致による離婚の詳しい内容は、下記のページで解説しています。ぜひご覧ください。
家に居場所がない
定年退職後は生活スタイルが変わり、家で過ごす時間が増えるでしょう。しかしながら、特に相手が専業主婦(主夫)であった場合、家事等はすべて相手がこなして、自分はやることがないという方もいるかと思います。家事を手伝おうとしても、相手には相手のペースやこだわりがあり、「邪魔だ」と言われてしまうこともあるでしょう。その結果、家にいても安らげず、居場所がないと感じてしまい、離婚に至るケースもあります。
長時間一緒に過ごすことが苦痛になる
定年を迎え、勤めていた会社を辞めたら、それまで会社に行っていた時間は家で過ごすことになります。そのため、夫婦で一緒にいる時間は必然的に増えていきます。
仕事の間、別々に過ごす時間があることでできていた気分転換が図れなくなったり、今まで気付かなかった相手の嫌な部分が見えたり等したら、長時間相手と一緒に過ごすことが苦痛になってしまう場合もあるでしょう。こうして、別れてひとりになりたいと離婚を望む方もいます。
子供の自立
定年になる頃には、子供はすでに自立し、子供自身で生計を立てている場合が多いでしょう。相手に不満を抱いていたものの、子供の成長を考えて離婚をためらっていた方にとっては、定年を迎えて子供が自立したことは、離婚に踏み切るきっかけになり得ます。
介護がつらい
高齢になればなるほど、配偶者や配偶者の両親の介護に対する不安が募っていくかと思います。定年を機に介護が現実味を帯びてきて、想像するとつらくなってしまうことが、離婚理由となる場合もあります。
介護を理由とした離婚について、詳しい内容は下記のページをご覧ください。
夫婦間での会話が少ない
結婚した当初は会話が弾んでいても、時が経つにつれて会話が減っていくご夫婦もいます。沈黙が苦にならない、とお互いに思えていたら良いのですが、夫婦間での会話が少ないことに、一方が寂しさを覚え、不満に感じていたら、「このまま夫婦生活を続けていても仕方がない」と考え、離婚に至る場合もあるでしょう。
浮気や不倫
一般的な離婚理由として何をイメージするか聞かれたら、「浮気」や「不倫」と答える方は多いでしょう。定年離婚の場合も、相手の浮気や不倫が原因で離婚するケースは多くあります。なかでも、長年、相手の浮気や不倫を我慢してきた方にとっては、定年退職後、相手と一緒にいる時間が増えることには、相当な精神的苦痛を感じるでしょう。定年を機に離婚を決意してしまうのも、無理はありません。
DV
相手からDVを受けていることも、定年離婚の原因・理由の一例に挙げられます。定年退職により、相手から離れる時間が減ってしまったら、DV被害者が抱く恐怖心は計り知れません。離婚を望むのはやむを得ないでしょう。
また、肉体は傷つけられていなくても、いわゆるモラハラによって心を傷つけられている方もいます。モラハラは、れっきとしたDVの一種です。DVやモラハラを理由に離婚する場合について、詳しい内容は下記の各ページをご覧ください。
定年離婚の流れ
定年離婚の流れは、通常の離婚のケースと同様です。まずは当事者間で話し合う「協議」から始め、協議による解決が難しい場合には家庭裁判所の「調停」手続を利用し、それでも解決できない場合には「裁判」を行う、というのが通常の流れです。
それぞれの離婚方法について、詳しい内容は下記のページをご覧ください。
定年離婚に向けて考えておくべきこと
定年離婚が頭をよぎっても、焦りは禁物です。離婚したことを後悔する事態とならないよう、離婚に踏み切る前に、定年離婚に向けて考えておくべきことがあります。
経済面
離婚し、その後生活を送っていくうえで欠かせないものは、何と言ってもお金です。離婚するときは、どのようなお金を請求できるのか、受け取れる金額、反対に支払わなければならない金額はどれくらいになる可能性があるのか、事前に把握して適切な内容・金額で取り決めておくことが大切です。
お金に関する離婚条件には、次のようなものがあります。
財産分与
婚姻中に夫婦の協力によって築いた財産を分けることを、財産分与といいます。離婚時には、原則として2分の1ずつの割合で、対象の財産を分け合うことができます。定年退職して得た退職金も、婚姻中に積み上げた分は、財産分与の対象となります。
財産分与の概要や、退職金の財産分与については、下記の各ページで解説しています。ぜひご覧ください。
慰謝料
離婚に至った原因が相手にある場合、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛を賠償してもらうお金として、慰謝料を請求できます。定年離婚の場合、婚姻期間は長いケースが多いことが予想されますが、裁判所が慰謝料の金額を決める際、婚姻期間は長ければ長いほど高額になる傾向にあります。
離婚慰謝料についての詳しい内容は、下記のページをご覧ください。
年金分割
夫婦のどちらか一方、または双方が厚生年金保険(かつての共済年金を含む)に加入していた場合、婚姻中に納付した保険料の記録は離婚時に分割することができ、これを年金分割といいます。定年離婚したいと考えているものの、老後の生活が不安な方は、年金分割制度を利用し、後にご自身が受け取る年金額を増やすことを検討してみると良いでしょう。
年金分割についての詳しい内容は、下記のページをご覧ください。
住宅
離婚後の生活では、お金のほか、住む場所も必要です。婚姻中に夫婦で住んでいた家が財産分与の対象となる場合、どちらか一方が離婚後も住み続けるのか、それとも売却し、現金化して分け合うのか等、家の財産分与方法を決めることになります。定年離婚の場合は少ないかもしれませんが、離婚時に家のローンが残っている場合、財産分与には注意が必要です。
家の財産分与について詳しく知りたい方は、下記のページをご覧ください。
老後の生活へのリスク
定年離婚は、高齢での離婚となるケースが多いことが予想されます。離婚後、子供のもとに住むのが難しく、老後の生活をひとりで送っていくことには、経済面はもちろん、健康面でのリスクも考えられます。
年齢を重ねるにつれ、体力が衰えてしまうのは仕方のないことです。老後、支え合えるパートナーがいないというのは、寂しく感じるかもしれません。また、最悪の場合、助けてくれる人がいなくて命を落とす危険性もあります。このような老後の生活へのリスクも考えたうえで、定年離婚すべきかどうか決断した方が良いでしょう。
離婚前に準備すべきこと
定年離婚に向けて考えておくべきことが整理でき、離婚の決意が固まった場合には、続けて離婚の準備を始めましょう。
なお、下記のページでは、熟年離婚を決意したときに行っておくべき準備について解説しています。定年離婚は熟年離婚の一種ですので、こちらもぜひ参考にしてください。
離婚後の住まいをどうするか
離婚したら、通常は、元妻(夫)と住まいは別になるでしょうから、新たな住まいについて考えておかなければなりません。賃貸物件を借りる場合には、離婚後、希望に適う物件がなかなか見つからずに慌ててしまわないよう、前もって物件を探し、新生活に向けた準備をしておくことをおすすめします。
また、婚姻中に夫婦で住んでいた家がある場合は、その家に住み続けるという選択肢もあります。ただし、財産分与の対象となる場合は、家をどのように分け合うのかで争いが生じることがあるため、家を受け取る代わりに代償金を支払う等、財産分与の方法についても検討しておきましょう。
どれだけお金が必要になるか想定する
離婚後の生活にかかる費用を、相手(元配偶者)に請求することはできません。そのため、離婚してからひとりで生活していくのにどれだけお金が必要になるか、きちんと想定しておきましょう。そのうえで、財産分与や慰謝料、年金分割等、お金に関する離婚条件について、少しでも生活費を賄うためにはどのような内容・金額で取り決めたら良いのか、考えておくことが重要です。
目標や生きがいを見つけておく
離婚したときは、「やっと離れることができた」と解放感を得られるかもしれませんが、それまで共に暮らしてきた相手がいなくなり、ひとりで日々の生活を送っていくうちに、孤独感に襲われる方もいます。特に定年離婚の場合は、仕事や子育ては一段落しているケースが多いでしょうから、何を生きがいにしたら良いのか、悩むこともあるかと思います。離婚後の新たな人生を前向きに、生き生きと歩んでいけるよう、資格取得や趣味等、離婚後の目標や生きがいを見つけておくことをおすすめします。
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メールで相談する定年離婚に関するQ&A
- Q:
定年後に退職金が支払われる場合、離婚時の財産分与として退職金は折半できるのでしょうか?
- A:
基本的には離婚時の財産分与として折半できるケースが多いです。退職金は、支給される蓋然性が高い場合には、財産分与の対象となります。退職金は労働の事後的対価であると考えられることから、同居期間中の配偶者の寄与が認められるためです。なお、退職金が財産分与の対象となる場合、その対象部分は労働期間のうち婚姻後の同居期間の部分が対象となります。そして、その部分の退職金を基本的には折半することとなります。
退職金の財産分与について、詳しくは下記のページをご覧ください。
- Q:
相手の定年前に、年金事務所において「年金分割のための情報通知書」を請求することはできますか?
- A:
「年金分割のための情報通知書」は、相手が定年を迎えたかどうかにかかわらず、いつでも請求できます。また、夫婦そろって請求する必要はなく、どちらか一方のみが請求することも可能です。ただし、離婚した日の翌日から2年経ってしまうと、そもそも年金分割の請求自体ができなくなってしまうため、ご注意ください。
年金分割について詳しく知りたい方は、下記のページをご覧ください。
- Q:
長年専業主婦(主夫)だった場合、定年離婚する際に年金分割をした方が良いですか?
- A:
年金分割を行っておいた方が良いと思います。離婚時の年金分割は、将来支給される年金そのものを折半するものではありませんが、厚生年金のうち年金額算定の基礎となる対象期間の標準報酬総額の一部を、多い方から少ない方に分割することができます。つまり、年金分割を受けることによって、その分だけ将来支給される年金額が増える結果となります。
配偶者が厚生年金に加入しており、長年専業主婦(主夫)だった場合には、年金分割のなかでも3号分割という、夫婦間の合意や裁判手続は要さずに2分の1ずつ分割できる制度を利用できるため、なおさら年金分割を行うべきです。
専業主婦(主夫)の方が熟年離婚するケースや、3号分割について、それぞれの詳しい内容は下記の各ページをご覧ください。
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定年を迎え、これから夫婦で過ごす時間を大切にしていこうと思う方もいれば、この先の人生を共に歩んでいくことは耐えられないと思う方もいます。「定年」は、あらゆるご夫婦にとって、今後の夫婦生活を見つめ直す節目となるでしょう。その結果、離婚に至るご夫婦もいます。
定年離婚の場合は、高齢での離婚となるケースが多いことが予想されるため、老後の生活についても考えたうえで、離婚は慎重に進めていくことが大切です。経済面等を踏まえてもやはり離婚したい、と決断したときには、経験豊富な弁護士にご相談ください。数多くの離婚問題を解決してきた弁護士なら、ご相談者様の状況に即し、どのように離婚を進めていった方が良いのか、どのような内容の離婚条件を取り決めたら良いのかといったことを適切にアドバイスし、離婚成立に向けてサポートすることができます。「離婚しなければよかった…」と後悔してしまう事態を防ぐためにも、定年離婚に関するお悩みは、経験豊富な弁護士にお任せください。
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